亥年の新年

2007年1月第1週

今週の野菜セット

左上から時計回り

あけましておめでとうございます。

新年早々、初出勤の今日は雨。さいわい、正月三が日は晴天に恵まれ、暮れの餅つきもおだやかな日和に恵まれましたが、その直後に台風並みの低気圧に見舞われました。この季節外れの熱帯性低気圧。それに巻きこまれるように亡くなる人も多かったとみえ、友人の大叔母、わたしの父が申し合わせでもしたように、次々と息を引き取りました。

今回の低気圧も大型なので、身体の弱っている老人がさらわれるかもしれませんが、父同様、眠るように穏やかな死を迎えられると思います。合掌。

新年の話題にはふさわしくなかったかもしれませんが、年末年始はそれやこれやで忙殺され、年が明けたことにも気がつかないような状況でした。ばたばたしていたので、心労で体重が減っているかもしれない、と体重計に乗った母が、逆に増えている、と笑いながら出てきたのを皮切りに、みんな体重を量ってみたら増えていたので大笑い。動かないで飲み食いばかりしていたら、体重が増えるのは当然ですが、長寿をまっとうできた人の葬式って、湿っぽいところがないのがいいですね。

今年は亥年。そのイノシシが今年もまた、裏山を徘徊しています。といっても、人が寝静まったころにドングリを食べに来るだけなので、危険を感じることはありません。日中はほとんど、人を避けるように隠れ家にひそんで眠っているのですが、一度だけ、犬の散歩中に遭遇しそうになったことがあります。あわてて身を隠した母親について行けなかったのか、うり坊たちがブヒブヒ鳴いているのが聞こえました。ちょっと斜面に身をのり出せば、姿を見ることもできたのですが、警戒した母親が飛び出してきたらそれこそ危険ですから、愛らしいうり坊の姿を想像するにとどめた次第。

「猪突猛進」などといわれますが、それは「窮鼠猫を噛む」同様、追いつめられて行き場を失ったイノシシが取る行動で、本来はおだやかで控えめ。人に対しては用心深く、臆病といってもいいくらいです。

それが食糧不足になると、里に出てきて田畑を荒らす。現に毎年さつま芋を作ってくれている高橋さんのところでは、柵のない畑の芋が全滅しました。さつま芋というのはちょっと厄介なところがありまして、イノシシに芋がやられれば蔓が切れてしまうのですが、その蔓が切れたところから発根するので、三日もすれば元通り、畑は青々とした蔓に覆われてしまうのです。だから、実際に掘ってみるまで被害がわからない。わかったときにはもう、手の打ちようがないという代物です。

シシ脅しの空砲は夏の終わりから秋が深まるまで、毎晩鳴り続けていましたが、毎夜のこととなるとイノシシにもそれがただの脅しだと悟られてしまいます。かといって寝ずの番をするわけにもゆかず、年々被害は大きくなる一方。役場から依頼された「害獣処理班」の腕章をつけたハンターを、鳥獣保護地域でもよく見かけますが、運悪く捕獲されるのは、成獣になったかならないかの若者ばかりだといいます。

それよりも杉林にされたまま放置され、倒木だらけになっているところに広葉樹を植林したほうが、遠回りなようですが効果的で、山に豊富などんぐりがあれば、本来気弱なイノシシが人里に出てくることはないはずです。益子の山の半分ちかくに杉や檜が植林され、しかも手入れがされないまま荒廃していることを考えれば、治水や災害防止といった面でもそのほうが望ましいわけですが、それを妨げているのが農林省という変な役所の助成金。

これは戦後まもなく、住宅用の建材をまかなうために作られたものですが、それが建材になるころには外国産に押されて二束三文。だから手入れもされず、間引きがないから根も張れず、ちょっとの風でもばたばた倒れて見るも無惨な山林になっているのですが、それでもなお、雑木林を潰して杉や檜を植林すれば、反あたりいくらといった形でお金が出るという仕組みは変わらないのです。

農家もイノシシも、そんな政策の被害者という点ではおなじ立場。この両者が議事堂前に集結。農家が訴え、イノシシが正門に向かって猛進する、というのがわたしの初夢ならぬ初妄想ですが、両者とも無言のまま座りこんでいたほうが、逆に迫力があるかもしれません。

今週の野菜とレシピ

年明け一番の野菜セットです。この一年もどうかよろしくお願いします。

まずは小松菜春菊ほうれん草と冬の定番みたいな青もので、正月の間にふやけた身体を引き締めたいと思います。

七草粥とまではゆきませんが、わが家では餅に飽きたころ、庭先に張りつくように生えているタンポポやハコベを摘んできて、細かくきざんで白粥に入れますが、そのとき春菊を加えると味と香りがぐーんとアップ。ときに中華風の粥に、薬味がわりに春菊を入れることもあります。卵でとじて、春菊おじやにしてもおいしいですよ。

大根はいろんな煮方がありますが、いちばん身体があたたまるのが土鍋に昆布を敷き、水を張ってことこと煮ふくめたふろふき大根。これを柚子味噌で味わうのが最高です。柚子が手に入らないときは、味噌を味醂、または酒と砂糖で溶き、七味唐辛子か粉山椒を少量加えても可。いずれにしても身体がぽかぽかして、汗もかくので風邪気味のときはとくにおすすめ。

大根の端っこ、皮の部分もきざんで蜂蜜漬けにしておくと、咳止めになり、風邪特有の喉の痛みが軽減されます。大根おろしの絞り汁だと、砂糖や蜂蜜を加えても辛みが勝ってしまうのですが、ゆっくりと抽出された水分はまろやかで、小さな子供でも飲める味です。半日もすれば大根がしわしわになってくるので、咳が出てから作ってもOK。ただし日持ちがわるく、味も変わりやすいので、残りはかならず冷蔵してください。

このとき大根を薄切りにしておくと、汁を取った後、醤油と酢をまぶすと即席のハリハリ漬けになるというおまけつき。大根には捨てるところがないんですね。

野菜たっぷりセットの方には干しタケノコが入っています。スルメの足のように見えるのがそれ。ひと晩水に浸けてもどしてから、煮物にしてください。油揚げといっしょに煮てもよし、豚肉と煮て、仕上げに山椒をふってもよく、旬のタケノコとはまたちがった味わいが楽しめます。