地球の底力

2007年7月第2週

今週の野菜セット

左上から時計回り

このところ、一日おきに天気が変わり、夏の暑さと梅雨寒が交互にやって来るせいか、人も動物も体調を崩し気味。こんなときには植物もストレスを受けやすいのでしょうね。高温には強くても、多湿に弱いズッキーニがまず弱りはじめ、メニューから姿を消してしまいました。

一見、元気にしている野菜たちも、わたしたちの目には見えないところで苦労しているのかもしれません。せいぜい卵の殻や牡蠣殻といった、カルシウムが豊富な資材を撒いたり、葉面散布でストレスをやわらげてやるぐらいのことしかできませんが、ま、炎暑になればなったで、人も動植物も今度は体力を消耗することになるのです。今しばらく、梅雨空を楽しむぐらいの気持ちでいたほうがいいのかもしれませんね。

この時期をいちばん享受しているのが雑草ではないか、と思うほど、畑でも庭先でも草がよく育ちます。抜いても抜いても、次から次と新しい芽が出てくるし、抜いたはずの草も、雨が降ればまた頭を持ち上げてくるぐらい・・・。農家の草対策がいちばんたいへんな時期でもあります。

益子の山中では、子供たちの通学路を確保するため、ひと月おきに部落総出で道路の草刈りをするのですが、先月刈ったところがもう子供の腰のあたりまで伸びていて、子供たちはやむなく車道を歩かされています。交通量が少ないとはいえ危険ですから、草刈りは毎月にしたほうがいいのではないか。いや、もうすぐ夏休みなんだからいいだろう。夏休みだって子供は出歩くのだから、やっぱり危ない、などなど・・・。大人が寄るとそんな話で持ちきりです。

子供が歩いているところでさえそうなのですから、休耕田や空き地となると、もう大人の背丈ほどにもなっています。織物を習うため、福島県の山村に引っ越した会員の方からのお手紙にも、ここらは人口減と高齢化で耕作放棄地が目立ちます、とあり、それが藪というより山にもどりつつある姿を見て、人間が手を加えなければ、大地というのはかんたんに元通りになる。苦労して開墾した人たちには申しわけないけど、その復元力に感動というか、安心したというのですね。

さらに手紙は続いて、都心のどこか、たとえば大手町あたりの一角を、一キロ四方ぐらいでいいから立ち入り禁止地区にして、崩壊と再生の課程をこの目で見てみたい、とありました。なかなか魅力的なプロジェクトです。

益子にも耕作を放棄された田畑が点在しています。現にわたしが住んでいるところだって、元は麦畑で、地主が高齢化。それに麦など作っていてもお金にならないというので、家を建てることができたわけで、それも日当たりのいい南斜面だったから・・・。

休耕田となると、人が住むにも適していないので、そのままにされているケースが多く、そこは藪になり、それが林へと姿を変えつつあります。田畑に人手が入らなくなると、草がぼうぼうになり、まずそこに根を下ろすのがカヤ。ススキといったほうがわかりやすいでしょうか。ススキが群生すると、それが野鳥の巣になり、やがて野鳥の糞から雑木が芽を出します。先駆植物と呼ばれるニワトコやカバ類、ポプラの仲間であるヤマナラシなどの林ができて、それは十年もすれば自然と枯れて朽ち果て、肥やしになります。次にナラやクヌギといった照葉樹が出現。数十年でそれらが消えると、いよいよ生態系の頂点に立つブナが根を下ろし、千年も二千年も生き続けるというのが森の誕生課程です。

大手町であろうと、銀座であろうと、まずアスファルトの隙間から雑草が顔を出し、根っこがそこにヒビを入れる。そこにススキが参入してくると、アスファルトもコンクリートもあっという間にバラバラにされてしまうでしょう。ススキが生い茂るようになれば、あとは上記の課程を経て、ビルなどは樹木の根に持ち上げられて崩壊し、百年後にはブナ林になっているという寸法。野生動物も、どこからともなく帰ってくるかもしれません。

人力のむなしさにがっかりする反面、人の罪も愚かしさも植物がきれいさっぱり洗い流してくれるのだという、安心感のほうがそれに勝る気がします。昨今「地球にやさしい」などという、気持ちのわるいキャッチフレーズをよく耳にしますが、あれはほんとに他人事みたいで腹の立つ言葉です。地球を救えキャンペーンなどというのも同様で、地球のほうは大丈夫。人がいなくなれば、放っておいてもきれいになるのですから、自分の心配でもしてたほうがいいんじゃない?

汚染がひどくなれば、浄化のために地球は火と水を使います。風水害が多発する一方、火山活動も盛んになる・・・。困るのは人のほうで、地球ではなかったのですね。でも、人がいなくなる必要はないのかもしれません。人が欲望を捨て去れば、世界中に広がりつつある欲望のグローバル化さえ消滅すれば、それだけでも地球はずいぶんきれいになると思うのですが、どうでしょう。

今週の野菜とレシピ

今週は青山さんのカボチャが入る予定でしたが、まだちょっと若いようなので、インゲンに変更させていただきました。

モロヘイアはおひたし、てんぷらでいただきますが、今回はちょっと変わった利用法を・・・。モロヘイアの葉を干して、からからにしたものをミルかすり鉢でできるだけ細かい粉末にしておきます。それを口内炎や歯茎の腫れなどに使うと、ひと晩で腫れが引くというのです。これは近所の人から聞いた話で、わたしも今、モロヘイアを干しているのですが、この天気ですからなかなか乾燥してくれません。でも秋口、夏の疲れが出てくるころには、口内炎などになりやすいので、今から用意しているところ。

指先につけた粉末を患部につけるだけですから、大量には必要ないと思います。茎の下のほうについている、かたそうな葉をザルに広げておいてはどうでしょう。やわらかいところは、もったいないので食べてしまってくださいね。モロヘイアのおひたし、醤油だけでなく、胡麻油もいっしょにかけると、味がグーンとよくなります。

来週はオクラが出てきます。お天気がよければ、とうもろこしも入るかもしれませんので、お楽しみに・・・。