温暖化の進行と農業

2007年4月第3週

今週の野菜セット

左上から時計回り

先週も春の嵐が吹き荒れました。突風で柱がねじ曲がってしまったビニールハウスもあるようで、わが家では物置小屋のトタン屋根が一部、飛ばされ、飼料袋があちこちに散乱。バケツや如雨露がしょっちゅう行方不明になっています。

さいわいバケツも如雨露も、近くの雑木林の中で見つかるのですが、今年の春は荒れ模様。生あたたかい風が吹きつけるかと思えば、いきなり冷たくなって、大粒の雹が落ちてきたりしますから、畑のほうも気が抜けません。とくに今年は遅霜の心配も大で、農家は頭が痛そうです。

二十数年前に益子GEFがスタートしたときも、いろいろ問題はありましたが、当時はむしろ技術不足による失敗のほうが多く、天候による被害は今ほどではなかったと思います。もちろん、昔から春の嵐はありましたし、遅霜もありました。突然の夕立、台風と、農家も作物も翻弄されていましたが、年々おかしくなってくるね、というのがみんなの口癖。

それがここへきて、だれもそんなことを口にしなくなったのは、素人にもそれがわかるようになったからか。それとも農家の技術が向上し、プロ意識も強くなって、天候に罪をなすりつけるようなことをしなくなったからか。そこのところはわかりませんけど、強い雨に種が流されれば蒔きなおし、風で倒れたものはさっさとかたづけ、また新しい作物に取りかかる。なにもいわなくなった分、仕事を増やして、しかもその労をいとわない。そんな寡黙な農家の姿が最近、まぶしく感じられます。

しかし、温暖化の影響は生態系にまで影響をおよび、それまで日本にはいなかった虫が猛威をふるうようになています。その代表例がヨトウムシとミナミアザミウマ。いずれも東南アジアから輸入野菜といっしょに上陸したものですが、従来種を駆逐して繁殖。ミナミアザミウマはそれまで家庭菜園でも簡単に栽培できた茄子を、もっとも無農薬栽培の困難な野菜にしてしまったほどです。その茄子の種を今、好子さんが蒔いていますが、苗を仕立てるこの作業が腕の見せ所なのだとか。ミナミアザミウマが怖くて茄子が作れるか、と豪語する彼女。ミナミアザミウマに効く農薬なんてないからね、今年効いても来年には効かなくなる。このまま温暖化が進行していったら現行農法の畑は全滅。そのうちに有機栽培でしか野菜は作れなくなるかもしれないよ、と不適な笑みを浮かべているのです。

心強いでしょう。これが農家が愚痴をこぼさなくなった、ほんとうの理由だったのかもしれません。有機栽培じゃメシは食えない、といわれていた時代とは隔世の感がありますね。有機栽培があたりまえになって、益子GEFが無用の存在になったところで、それはそれでいいじゃないか。いや、そのほうがいいんだろうね。すくなくとも、わたしたちが引退する頃にはそうなっていてもらわないと、といって大笑いしたのでした。

大笑いはしたものの、根本的な問題が解決されたわけではなく、帰り道、だんだん気が重くなってきました。

40年後には海洋生物がほとんどいなくなる、という友人が手にしていたデータを思い出したからで、海が死に瀕しているときに、はたして陸上だけが栄えていられるのか。魚類ばかりか、海藻や植物プランクトンまで生息が危ぶまれているときに、畑の野菜だけが青々しているなんてことがありうるだろうか。

そもそも海が病んでいるのは、陸上の荒廃が反映されているからにほかならず、40年後、ほんとうに海洋生物が絶滅するのだったら、それ以前に陸地から生きものが姿を消してしまっているはずです。物質文明のなれの果て。運よく人間だけが生き残れたとしても、人間しかいなくなった地球なんて、想像しただけでぞっとしますよね。

そんな文明の真っ直中にいて、その恩恵にさずかりながら、食べものだけは天然・自然がいいなんて、虫がよすぎはしないだろうか。自分の生活からどんなゴミを出しているか、はたまた自分の身体からどんな排泄物をだしているか、それがどれだけの野生生物を死に追いやっているか・・・・。そんなことを考えながら、排気ガスを出しまくる車を走らせていたのした。

今週の野菜とレシピ

好子さんのキャベツが登場。小ぶりですが、これは天候のせいではなく、そういう品種だからで、あまり大きいキャベツだともてあまされるかもしれない、という配慮から・・・。やわらかい春キャベツです。生のまま召しあがってみてください。

青山さんのアスパラガスも持ち直してきたようです。が、まだ全セットをまかなえる量は収穫できないので、足りないところは山ウドで補わせていただきました。

絹さやもようやく出てきて、野菜セットが春らしくなりました。少量ずつしかお分けできないのが残念ですが、炒めもの、卵とじにお使いください。

淡い色合いの山東菜は香りも淡く、クセがありません。さっと湯がいて、油揚げといっしょに芥子醤油和えが美味。湯通しして細切りにした油揚げを、まず芥子醤油でしっかり味をつけてから、水気をよく切った山東菜を加えるとおいしく仕上がります。

来週はいよいよタケノコが登場します。大きめの鍋を用意しておいてくださいね。