イノシシ問題

2007年8月第4週

今週の野菜セット

左上から時計回り

先週は「暑い」というのもイヤになるほど暑い一週間でしたが、週末の雷雨で冷気がもたらされ、ほっと息をつくことができました。夕立のたびに、この夏空のどこにこんな冷たさが潜んでいるんだろう、って不思議になるのですが、真冬の陽光があたたかいように、真夏の暑さには氷のような芯があるのかもしれません。

秋の虫の羽音まで聞こえるようになりましたが、いくらお盆過ぎでも、このまま秋に突入、なんてことはありませんよね。また、暑さがぶり返しそう。ほんとうに息がつけるのは、この残暑を乗り越えてからになりそうですが、夏の寿命というのは意外と短いもの。もうすこしの辛抱ですから、がんばらなくっちゃね。

お盆中、こちらは人でごった返していましたが、都会はすっきり。人も車も少なかったのではないでしょうか。こちらはようやく、ふだんの田舎暮らしにもどったところです。

でも、静かなはずの田舎の夜が、お盆の客が引いたあたりからにぎやかになってきました。毎夜、まるで花火のようにシシ脅しの銃声が響きわたるからです。例年なら、イノシシの食害が問題になるのは秋以降。夏の間はそれほどでもなかったのですが、今年は夏に入る前から農作物の被害が出はじめているそうです。

食糧の豊富な夏から秋にかけて、イノシシは山の中で行動しているものなのですが、それが早くから出てくるようになったということは、食糧不足。でも、益子の山の中に開発の手が入ったという話は聞かないので、イノシシの頭数が増えているのではないか、というのが大方の意見です。これも温暖化のなせる業なのでしょうか。

もともとこの地域はイノシシが生息するには寒すぎたのですが、十年ぐらい前からあちこちで目撃されるようになり、ここ数年は山に面した耕作地の被害が深刻になってきています。さつま芋を作っている高橋さんのところでは、去年、大半がイノシシの食害に遇ったので、畑に柵をめぐらせたのですが、今度は田圃のほうに被害が出ているのだとか。さつま芋はなんとか出荷できそうだけど、米がダメ。田圃にまで柵は作れないしねえ、と弱り顔でした。

わが家もおなじ山に面していますが、今のところ被害はなく、秋も終わりに近づいたころ、家の裏手にどんぐりを食べに来る程度ですが、近隣にも被害は出ています。こういうのってむずかしいですよねえ。人間に生きる権利があるように、鳥獣にもおなじ権利がある。鳥獣が増えるとすぐに害獣扱いされますが、地球上でいちばん数を増やしている動物といったら、人間。その人間が立てる対策は、どうしても人間中心になってしまいますからね。

そこをどこまで譲歩できるか。ここでも割を食っているのが農家で、原因を作っている産業のほうは知らん顔というのが理不尽ですが、政府も自治体も税収の多い産業界には及び腰。せめて柵を作る費用ぐらい、負担してほしいといったところで聞き入れてはもらえないでしょうから、農家は忍の一字で、人間としてひとまわり大きくなるか、さもなければハンターを雇い入れるしかないのです。

兵庫県では、自治体が中心となってクマ対策・イノシシ対策に取り組んでいます。他県では山を下りてきたクマの大半が射殺され、イノシシもおなじ扱いを受けていますが、あちらでは動物の行動を熟知した専門家の協力を得て、殺さずに農業や人家を守る手段を講じています。日本は国土が狭い割に山地が多いせいか、先進国の中では例外的に野生動物が多く生息しています。これを誇りとしてプラスに転ずるか、マイナスとして処分するか。兵庫県の英断が、早く全国的なものになってくれるといいんですけどね。

今週の野菜とレシピ

トマトがメニューから姿を消してしまいました。夏野菜の王様的存在ですが、高温多湿が苦手で、雨にも弱いという厄介な植物です。ま、日本にトマトが入ってきて、せいぜい百年ぐらいしか経っていませんからね。食味を重視した品種改良も、トマトを弱くしている一因になっているようです。

それとは対照的に強靱なのが茄子。高温多湿にも旱魃にも強く、冷夏にもそれなりに実をつけてくれる上、収穫期間も五ヶ月に及びます。昔から「親の小言と茄子の花には、千にひとつの無駄もない」といわれるように、茄子はきゅうりやトマトのように花落ちがありません。親の小言はともかくとして、ほんとうの王者はこちらのほうかもしれませんね。

そのうえ、茄子は煮ても焼いても揚げても美味。茄子紺の皮の部分はとくに抗酸化性が強く、治癒能力を高めてくれるので、なるべく剥かずに調理してください。

ゴーヤは、この苦みがダメという人と、この苦みがもの足りない。もっと苦くなくちゃゴーヤじゃない、という人に分かれるようで、扱いのむずかしい野菜です。そして、沖縄料理といえばゴーヤ・チャンプルーばかりが有名ですが、一般家庭に常備されているのが甘酢漬け。沖縄焼きそばにかならずついてくるそれを作ってみたら、とても簡単でしたので、みなさんもお試しください。

ゴーヤは中の種を取って薄切りにしますが、これはスライサーを使うと便利です。そこで苦みがダメという人はさっと湯通し。軽く塩もみして水にさらしても、苦みはかなり抜けます。逆に苦みがなけりゃ、という人はそのまま甘酢に漬けるだけ。甘酢はただ、酢に砂糖を混ぜるだけですから、砂糖の量はお好みで・・・。すぐに食べられますが、冷蔵庫で長期保存もできますから、油っぽい料理のつけ合わせにご利用ください。

モロヘイアは香りのない野菜ですが、揚げるとお茶のような香りが出てきます。また、かき揚げなどにすると、特有のとろみがなくなるので、あのヌルヌルがイヤという人でも大丈夫。この残暑を乗り切るためにも、ゴーヤやモロヘイアといったミネラルの多い野菜を、しっかり食べておいてくださいね。