発酵液の作り方と利用法

2007年2月第3週

今週の野菜セット

左上から時計回り

先週半ばに春一番が吹き荒れて、とうとう春になってしまいました。もう、春めいた、などと暢気なことはいってられない。ほんものの春です。

こりゃあ、えらいことになるわなあ、と農家も暗い顔。例年なら、春の兆しに小躍りするところなんですけどね。今年は虫がすごいだろうな、とか、旱魃の心配だとか・・・。雨が降ったら降ったで集中豪雨になって、畑の表土が流される。とにかくろくなことはない、というのが大方の予想です。

こういう年には例年よりも入念な土作りが必要で、窒素分は極力おさえなければなりません。その分、炭素率の高い堆肥をたっぷり与え、地力を高めておくのだそうです。地力を高めるということは、地中の微生物軍団を増強するということですから、発酵液作りにも余念がありません。農家はそれぞれ独自の発酵液を持っていて、情報交換したり、他家のものとブレンドしたり、さまざまな工夫をしながら使っています。

この発酵液は農地に直接散布したり、収穫期の植物に葉面散布するためのものですが、家庭内でも役立つことが多いのです。生ゴミやトイレの消臭、下水管の詰まりなど、これからあたたかくなるにつれ、頭を悩ますようになる問題を、微生物があっさり解決してくれるからですね。

農家の発酵液は植物由来のものが多く、そこにさまざまな菌を加えるのですが、素人が真似をするのはけっこう大変。材料が手に入りにくいというのもあります。そこでわたしが常時作っている「えひめAI-2」という発酵液の作り方をご紹介。お手軽に発酵液を利用してください。

1リットルの牛乳パックで作る場合
プレーンヨーグルト50グラム
白砂糖か三温糖50グラム
ドライイースト4グラム
納豆1~2粒
水道水900ミリリットル

これらを牛乳パックに入れ、よくかき混ぜるのですが、納豆は食べた後の容器のぬめりを水でとかしても可。それを35度でおよそ1週間発酵させます。わたしはヨーグルトメーカーを使っているので、牛乳パックを使用しますが、ペットボトルでも作れます。2リットルのペットボトルなら、材料を倍量にして・・・。ただし発酵中、泡が立ちますから、蓋はゆるめにしておいてくださいね。

1週間後、パン生地のような香りのいい発酵液ができあがります。この上澄み部分はアトマイザーに移して、あっちこっちにシュッシュとかけてまわる。生ゴミや猫のトイレだけでなく、犬の毛布や車のシートの消臭にも使っていますが、化学薬品ではないので人畜無害。犬も猫もいやがりません。また、お風呂に入れるとお肌がツルピカ。1回の入浴に上澄み液50ccぐらい使いますが、残り湯で洗濯をすれば洗剤が半分ですむので経済的でもあります。風呂釜もきれいになりますしね。

底に残ったどろどろ部分は、流しやトイレに流します。毎日少しずつこれを流していると、シンクのゴミ受けやその周辺のぬめりが消え、下水管もきれいになります。うちのトイレは浄化槽なので、定期的にくみ取りが必要なのですが、これを使い出してからその必要もなくなりました。雨が続くときなど、下水口からいやな臭いが上がってくることがあるでしょう。あれも、この液を少量、排水溝に流すだけで解消されますし、生ゴミを捨てるたびにバケツ内にスプレーしていると、そのうち菌が常住するようになり、なにもしなくても臭いがしなくなります。

微生物は縁の下の力持ち。ただ、35度で1週間という発酵期間がちょっと負担になるかもしれませんが、冬ならコタツの中、夏になれば炎天下に直接置くという手もあります。わたしはこのためにヨーグルトメーカーを買いましたが、毎週1リットルずつ作って、1リットルぐらい使い切る。その用途の多様さを考えれば、けっして高い買い物ではなかったと思います。

もちろん農業用にも使っています。1000倍ぐらいに薄めて、生け花やプランターの水やりにも・・・。犬猫の飲み水にも入れています。うちの犬、老齢で目やにが多くなっていたのですが、数ヶ月できれいになったので、涙目に悩まされている母親にも勧めたら、はじめはイヤな顔をしていましたが、日本酒みたいな香りがする、といってようやく飲みはじめたところです。

まちがった衛生観念で抗菌、滅菌に精を出していると、やがて菌に逆襲されることになります。菌というのは生きものですから進化します。化学薬品を多用するということは、それを促すことにほかならず、ただの大腸菌がO-157という猛毒に変化したのもその一例。最近では、自ら進化させてしまったインフルエンザに世界中が震撼していますが、これなどワクチン原因説がささやかれているぐらいです。

だからわたしなど、石鹸で手を洗うのが、逆にとてもこわいのです。石鹸を使えば、わたしの守護霊とでもいうべき常住菌が一時的に姿を消してしまいますから、無防備な状態におかれることになる。入浴したときもそうですから、化粧水に発酵液を混ぜておいて、自分を常に保護者同伴にしておくよう努めています。これをわたしは人体のホームレス化と呼んでいるんですけどね。

ホームレスの人たちは少々のことではお腹をこわさない。風邪もひきにくい。それはかれらが入浴する機会が少ないからで、かれらの体臭というのはじつは微生物が増殖、発酵している香りだったのです。かれらは都会の狩猟民族にほかならず、落伍者とする見方にはくみしませんが、そっくりそのまま真似るというわけにもゆかないので、いいとこ取りだけさせてもらって、発酵液を利用しているというしだい。みなさんもわたしといっしょにホームレス、やってみませんか?

今週の野菜とレシピ

いよいよ春大根の登場です。まだ小ぶりとはいえ、今年は例年より生育がよく、半月ぐらい早い出荷になりました。

今どきの大根は煮物にするより、短冊にスライスしてサラダがおすすめ。鰹節をたっぷりかけて、二杯酢でどうぞ。

春菊は胡麻和えがおいしいのですが、そこにも酢を少量加えてると食卓での売れ行きがちがいます。うちでは春菊が1束のときはただの胡麻和え、2束あるときは胡麻酢和えと決まっているぐらい。酢の物はきらい、という向きもこれは食べてくれるようです。

からし菜は熱湯をかけると特有の辛みが出ますが、そのまま湯がくとあぶら菜風。一夜漬けにするとき、にんじんや大根も細かく切って加えると、彩りがよくなります。

来週は田舎の春の味、田ゼリが入りますのでお楽しみに...。