焚き火のできない焚き火の季節

2007年10月第4週

今週の野菜セット

左上から時計回り

うららかな小春日和が続いています。

ついこの間まで猛々しく茂っていた夏草が、大量の実をつけたまま枯れ色に染まっています。それはそれでうつくしい光景ではあるのですが、その実をそのまま地面に落とされたのでは次の夏がたいへん。早々にかき集めて、火をつけてまわります。半乾きの草はすぐには燃えあがらず、あちこちに白い煙をたなびかせるのですが、これが畑に流れてゆけば虫除けになり、風にあおられて舞い上がれば樹木の毛虫を払ってくれます。

のみならず、香りがとてもいいんです。大地のお香、とわたしは呼んでいますが、ぱちぱちと草の実のはぜる音とともに、煙があたりを浄化するみたい。山羊がいたころ、このお香がはじまると家から出てきて、わざわざ風下に入ってみずから煙に包まれたものですが、これをやると山羊の毛艶が見違えるようによくなったものです。

わたしも目をしょぼつかせながら、煙の洗礼を受けてみたのですが、使用前、使用後の区別が山羊ほど顕著でないのでがっかり。見違えるようにうつくしくなってみたかったんですけどね。ま、そんな厚かましい願いはともかくとして、畑の虫が一掃されるのみならず、残った灰は肥料になる。いいことづくめのこの習慣が、市町村の条例でだんだんやりづらくなってきました。

都会ではかなり以前から焚き火は禁止されていたようで、たまに友人が子供を連れて遊びに来ると、一日中焚き火に興じていたりしたものです。焚き火ができないなんて、かわいそうよねえ、などと他人事みたいにいっていたのが、とうとうわが身にもふりかかってきたというわけ。

子供は水遊びと火遊びが好きですが、じつは大人も大好きなんです。夏になるとやたら戸外に出てバーベキューをやりたがるのも、じつは火に触れてみたいから・・・。火も水も、それがほどよい量であれば、日頃のストレスを解消するセラピー効果があるからです。そんなものを禁止するから、人間関係がおかしくなる。常軌を逸した犯罪が横行しているのも、こんなところに原因があるのかもしれません。

子供がおかしい、といわれています。それに対して、道徳教育の時間を増やそうなんて意見がありますが、そんなことをしてもますます子供はおかしくなるだけです。かれらにいちばん欠けているのは、羽目をはずすことなのですから、一校区にひとつぐらい解放区を用意して、週に一度はそこで火遊び、泥遊びに興じさせる。そういう一見馬鹿馬鹿しいような取り組みが案外、いちばん効果がありそうな気がするんですけど・・・。

癌かなにかで余命六ヶ月なんて宣告を受けたら、あなたはなにをしますか?なんて質問をされたら、わたしは迷わず、毎日焚き火をして暮らします、と答えます。そしてそれが現実となったとしても、半年間も朝から晩まで火遊びなんかしていたら、どこの癌か知りませんけど、いつの間にか消えてしまうのではないか。そんな気さえするんですけどね。

わたしのところは山の中なので、焚き火をしても人目には触れにくいのですが、好子さんや福田さんのところでは、収穫の終わった作物の後始末がとてもやりにくくなっているようです。

麦刈り後の麦わらでも、収穫の終わった茄子やトマトでも、それを畑で燃やせばCO2が発生します。では、放っておけば発生しないのかというと、時間をかけて微生物が分解するときにもやはりCO2は発生するのであって、これは冷たい燃焼と呼ばれています。だからこれはCO2問題とは、あまり関係がないみたい。

個人の焚き火は禁止されているのに、部落全体が真冬に行う芝焼き。これは枯れ草などによる山火事の防止と、越冬中の虫や虫卵の駆除が目的なのですが、これは消防署の立ち合いがあれば許可されるという二重行政。これも変な話ですがもっと変なのは、個人でも焼却炉を使えば焚き火もOKで、田舎の年寄りは発泡スチロールなども平気で燃やしてしまうのですが、それに関する規制はなし。プラスチックゴミの煙というのは重たいらしく、地面に沿って移動します。そんなダイオキシン混じりの煙の中を、登下校の子供たちが歩いている。しかもその灰を、果樹や植木の根元などに撒いたりするのです。このあたりでは、昔からゴミはそうやって処理していたのですが、昔と今ではゴミの素材そのものがちがいます。こういうところにこそ、徹底した意識改革が必要だと思うのですが・・・。

会員のみなさんに直接影響することになる餅つきも、戸外に竈を作ることになるので焚き火と見なされ、今後は続行が困難になるかもしれません。これには保健所も一枚噛んでいて、人力による杵つき餅は、人の汗などが餅に混入するおそれがあるので、衛生的でない。したがって家庭内で消費するのでなければ、保健所の許可の下りた施設内で、衛生的に作られねばならない、というのです。

わたしたちの手は不潔なので、餅は機械でつけということなんでしょうが、この国もだんだん住みづらくなってきたみたい。でも、法律というのは人間が作ったものですから、人間がこれを破っても、それが宇宙法則に反しないかぎりは許される。そう考えると、いくらか気は楽になりますけど、逆にこうも自然に逆らうような規制が増えるようでは、国のほうが危うくなるんじゃないかって、よけいなお世話かもしれませんが、そっちのほうが気にかかります。

今週の野菜とレシピ

好子さんの大根は遅れていますが、そのかわりキャベツがここ数日の晴天で予想外に大きくなってくれました。

馬田さんの椎茸も出てきました。これをシルク椎茸と呼んでいるのは、菌床に結城紬に使う絹糸を取った残り、くず繭が使われているからで、それが生育時間を長引かせるため、肌理の細かい、香りのいい椎茸になるそうです。

からし菜はそのまま使えばただの青菜ですが、さっと熱湯をくぐらせると芥子特有の匂いがツーンと鼻をつきます。それに塩をふってラップにくるみ、冷蔵庫にひと晩置くだけで、お漬け物が作れます。京菜や小松菜も、おなじ要領で即席漬けにできますが、味の点でも刺激のある香りでも、からし菜にはかなわないと思います。

ごぼうも漬け物というか、簡単な箸休めになります。皮をむいてしまうとごぼうを食べる意味がなくなってしまいますので、表面を傷つけないようにそっと洗い、斜め薄切り。それに醤油をかけるだけなのですが、すぐに食べられて、香りもいいのです。細めのところを丸ごと味噌の中に入れておくと、数日後には立派な味噌漬け。入れ忘れて真っ黒になってしまったら、きざんでけんちん汁などに使いますが、残ったごぼうは味噌の中に漬けておいて、ごぼうのない季節にそれを使うという手もあります。

来週はいよいよ大根が出てきます。冬の気配がますます濃厚になりそうですね。