クリスマスツリー

2007年12月第2週

今週の野菜セット

左上から時計回り

早いもので、今年も残りわずかとなりました。

きれいに紅葉した木々も、ようやく葉を落としはじめましたが、未だその気配すら見せない木もあって、景色だけを眺めていると年の暮れという実感は湧いてきません。デパートや商店街の年末商戦のデコレーションが、かろうじて年の瀬を感じさせますが、気分はまだ晩秋。

冬至十日前という言葉があるように、今週あたり、一年中でいちばん日照時間が短くなります。わたしたちが帰宅するころ、あたりはすでに暗くなっていますものね。そんな帰り道、あちこちで目にするクリスマスの電飾も、暮れの風物詩といえなくもありません。が、個人が中途半端に庭先を飾ると、それは華やかというよりむしろうらぶれて、場末の盛り場みたいな感じになるんです。

昼間見るとそれなりに立派なお庭が、このときだけは汚れ家業に身を窶(やつ)しているようで、通りすがりのわたしまで涙をさそわれそうになるくらい。けっこうお金もかかっているのでしょうから、よけい気の毒になってきます。

中にはセンスのいい電飾もあって、まあ、これなら許せるか、などと勝手な感想をいうのですが、どんなにきれいなイルミネーションでも、ほんとうはこの時期、戸外にそんなものを持ち出すべきではないのだそうです。

クリスマスツリーの起源というのは、ヨーロッパにキリスト教が持ち込まれたとき、それまでの神々が住んでいた森が焼きつくされたという経緯があって、改宗後もそれは人々の心の中に残っていたにちがいありません。また心情的には、依然として精霊信仰も色濃く残っていたはずで、そういった諸々の傷を癒し、つじつまを合わせるのに必要だったのがクリスマスツリーではなかったか。もしかしたらはじめのうち、それは権力者の目につかぬよう、家の中に隠されていたのかもしれません。

だって砂漠の宗教に緑のツリーなんて、どう考えたってミスマッチですものね。レバノン杉があるにはあるけど、キリストが誕生するころ、すでに過剰な伐採が祟り、だれにでも手に入るというものではなくなっていたといいますから、これは北ヨーロッパの庶民の知恵にちがいありません。

たくみに権力者を欺きながら、ついにクリスマスの主役にまでなったツリーってすごい。でも、メジャーになると初心は忘れられがちで、それが巨大になればなるほど、絢爛豪華になればなるほど、ツリーは形骸化され、空疎になってゆくような気がします。

ツリーを飾るのは、森や山に住む精霊への感謝だけでなく、わたしたちが心ならずもそれを蹂躙していることへの謝罪と反省。それがなかったらただの子供だましで、上記の田舎臭いイルミネーションなど、もしかした

ら形骸化の悲しみを誠実に表現するものだったかもしれません。

ま、そんな屁理屈はともかくとして、開放的な夏にくらべて冬は人の暮らしが内向的になりがちですが、それはべつにわるいことではありません。陽があれば当然陰もあるべきで、陰だからといって、かならずしもそれがマイナス要因になるとはかぎりません。たいせつなのは陰陽のバランス。内向し、みずからの内側にひっそりと釣り糸を垂れるがごとく自省する時期に、無理をして戸外で騒げば心が風邪を引きかねません。

抱きかかえられるぐらいの小さなツリーを山の中から取ってきて、彩色したドングリや松ぼっくりで飾るぐらいが、ちょうど自分に見合ってるんでしょう。クリスマスがすんだらお正月飾りにもなって、寒いうちは玄関先で観葉植物といっしょに並び、春分のころ、山の中に帰ってゆきます。

そういう木が山の中で大きくなっていると、まるでわが子の生長でも見るようなほのぼのした気分。そんなおまけはイルミネーションでは得られませんものね。

今週の野菜とレシピ

今週は白菜が入ります。それぞれのご家庭で、すでに鍋は何度か囲んでいると思いますが、これから人が集まる機会も多くなりそう。クリスマスパーテイーもこれならOK、という鍋を今日はご紹介します。

強いて名づけるとしたら、和風ヴィヤベース鍋。まず土鍋にオリーブオイルを入れ、みじん切りにしたニンニクをじっくり、かりかりになるぐらいまで炒めます。水1リットルに対してトマトの水煮1缶を入れ、白菜とじゃが芋を煮ます。じゃが芋がやわらかくなったら、豚肉、ベーコン、鶏のつくね、はまぐり、白身魚、イカ、エビ、ワタリガニなどなど・・・。お好みの魚介類を入れ、塩・胡椒で調味。これを全部入れる必要はありませんが、じゃが芋と白菜は必要不可欠。それにキノコ類、とくにもやしを入れるとおいしいので、これもぜひ加えてくださいね。

食べるときに粉チーズをふると美味。中身を食べてしまったら、わが家ではそこに市販のほうとう、もしくはきしめんを生のまま入れ、水をすこし加えてじっくり煮ます。できあがりはイタリアン。このパスタが絶品なのです。それで思い出しましたが、このレシピ、フレンチのシェフからもらったのですが、和風ヴィヤベースではなく「イタリアちゃんこ」という名前だったかもしれません。厨房の賄い料理だったのかもしれませんが、立派にパーテイー料理としても通用すること請け合いです。

やわらかいネギはサラダがおすすめ。白いところを3~4センチに切って、塩ひとつまみを入れて湯がきます。沸騰したところで火を止め、余熱で調理しますが、すこし辛みを残したい向きは早めに、甘くしたい方はもう一度火にかけ、芯まで火を通してください。それにドレッシングをからめて、冷蔵庫で半日ぐらい寝かせます。ドレッシングも鍋同様、みじん切りのニンニクをオリーブオイルでよく炒め、アンチョビのフィレもみじん切りにして加えたところに酢、またはレモン汁、オリーブオイル、塩、胡椒で調味。醤油をすこしたらすと和風になります。

山芋はとろろご飯か、マッチ棒サイズに切って山葵を添え、二杯酢で食べるのが一般的ですが、わが家ではおろした山芋と豆腐を混ぜあわせ、そこにひじきなど彩りを加え、塩少々で調味。それをスプーンで油の中に落とすように揚げ、それをだし汁を張った椀に盛ります。山芋のつるりとした食感が、豆腐のなめらかさとマッチしておいしく、柚子の皮のひとかけらも添えると、これはもう立派な精進懐石。赤ちゃんの離乳食にも老人食にもなる優れものです。

隔週で野菜をお送りしている方は、今週が今年最後のセットになります。

この一年もありがとうございました。

年明けは1月7日~12日の週からお目にかかります。新年もどうかよろしくお願いします。