ヘビの座布団

2007年4月第4週

今週の野菜セット

左上から時計回り

ようやく春めいてきたかと思ったら、先週は二月中旬並みの低温続き。野菜セットのキャベツは結球できず、アスパラガス、山うども顔を出しはしたものの、背丈を伸ばすことができませんでした。その割に葉ものは徒長していましたしね。そんなわけで、ほんとうに気の重い一週間でした。

野菜の調子がいいと、それを箱詰めする作業も楽しくなるのですが、不調のときは、ああ、これを見たらみんながっかりするだろうな、イヤだなあ、送りたくないなあ、という気分が強くなるものですから、かわいそうに野菜はますます萎縮するみたい。送り手の気の持ちかたが大事、と心してはいるのですが、それにも限度があるようで、先週はほんとうに申しわけありませんでした。

せっかく営巣をはじめたツバメも、ふたたび姿を消してしまい、冬眠から覚めたヘビも動くことができず、トタンの下で身を寄せ合っていたようです。落ち葉を敷きつめたところにブロックを置いてトタンをかぶせ、さらにそれが飛ばないようにブロックで固定。それがヘビの避難所になるのですが、案の定、大小さまざま、色とりどりのヘビたちがかたまって、座布団みたいになっていました。とても座る気にはなれないけれど、グッドデザイン賞ものです。

青大将もいればシマヘビも、ヤマカガシも隙間がないほど寄り添っています。ちょっと気温が上がれば、ゆるゆるとそれがほどけて、それぞれのテリトリーに戻ってゆくのでしょうが、非常事態が宣言されると、種類も力関係も無視されるのです。それがヘビの生き残り作戦で、人類もこういうことができるようにならないと、そのうち滅亡するぞ、とかれらを見るたび思います。

冬眠中もこのグループはいっしょにいるんでしょうね。かれらの「おめざ」用に、毎年卵を並べておくのですが、それはみんな消えています。吐き出した卵の殻は見あたらず、避難所の内部はきれいになっていますから、公共心も人間より上を行っているみたい。尊敬の意味をこめて、またヘビの数だけ卵を入れておきましたが、週末、ぐっと気温が高くなったので、それももう姿を消しているはずです。

こんな田舎でも、青大将が激減しています。ヘビの中でもとくに農薬や除草剤に弱いからだそうで、農地改良と銘打った田圃や用水路の整備がそれに拍車をかけているようです。都市部でも生息できるシマヘビは、薬品にも比較的強いんですけどね。

ヘビがいなくなれば、虫を捕食するカエルが増えてくれるかといえばさにあらずで、ヘビが生息できないようなところに、ヘビよりも薬品に弱いカエルが生息できるわけがない。カエルもヘビも生息できないようなところで、わたしたちの主食である米が作られているなんて、ちょっと怖いと思いませんか?

田圃に水が入るとはじまるカエルの大合唱。これがなくなる日が来たら、わたしたちはいったいどんなものを口にするんでしょうね。現にわたしの家のまわりから、ホタルが姿を消してしまいました。以前は山羊の水飲み場にも、田圃から上がってきたホタルが儚げに舞っていたものでしたが、数年前、用水路がコンクリートになってからは皆無。夏の夜の楽しみがなくなりました。

生きものがひとつ、またひとつと姿を消してゆくのは寂しいことですが、そんな叙情的な問題では済まされません。世界中で恐ろしいようなスピードで動植物が絶滅していますが、これは単なる引き算ではないはずです。代わりに誕生しているものがあるはずで、不増不減という宇宙原理に照らし合わせば、当然なにものかが発生せねばなりません。そのひとつが新種の病原菌なのではないかと思うのですが、どうでしょう。

今まで聞いたこともなかったような病気が増えていますよね。その一方で、新薬の開発に呼応するように、病原菌がどんどん進化してゆきます。これらの病気は人類の敵みたいにいわれていますが、じつは人類が生み出したものにほかならず、文明の発展とひきかえに受け取らざるを得ない代償だったのかもしれません。

人間中心主義が横行すればするほど、人類が淘汰されるという皮肉な現象。ノアの方舟に運ばれたのが人間だけではなかったことを、あらためて思い起こす必要がありそうです。

今週の野菜とレシピ

例年より早くなると思われていたタケノコが、今年は例年より遅れて登場しました。届いたら、その日の湯がいてください。

タケノコは土のついた底の部分と、穂先(全体の四分の一ほど)を落とし、小ぶりのものはそのまま、大きいものは半割にして皮をつけたまま、添付のヌカと唐辛子といっしょに湯がきます。箸が通るぐらいになったら火を止めて、そのまま冷まし、皮を取ってきれいな水に浸けておくと、数日は常温で置いておけます。

切り落とした穂先も、外側の皮を剥くとやわらかい姫皮になりますから、食べやすい大きさに切ってかき揚げにするか、さっと湯がいて梅肉和えにしてみてはどうでしょう。

アスパラガスは今週も天候しだいですが、天気はわるくても気温は高くなりそうです。先週よりは収穫が見込めるのではないでしょうか。下のほうは皮がかたいことがあるので、根元から四分の一ほどは皮をむいてお使いください。今週も足りない分は、山うどで代用させていただきます。

葉玉葱は前回よりも玉が大きくなっているはず。玉も葉もいっしょに油炒めにしてください。

好子さんのキャベツはしばらく休養させて様子を見ることになりました。うまく結球してくれるといいのですが、今年はどこの畑でも葉がぼさぼさになって丸まらない、という話を聞きます。来週あたり、もう少し大きくなって出てきてくれるといいですね。