人の老い、ペットの老い

2007年10月第3週

今週の野菜セット

左上から時計回り

ついこの間まで心地よく感じられていた風が、だんだん肌寒くなってきて、冬の気配すら感じられるようになりました。

先週から、わが家では炬燵が登場。そろそろストーブ用の薪の準備もはじめなければなりません。夏の間、布団に寄りつきもしなかった猫が、やたらと人なつこくなってくるのも今ごろで、猫に枕を取られて夜中に目を覚ます、そんな日々がはじまりました。

犬の発情もあちこちではじまっているらしく、うちのエロ爺犬が夜中にヒャンヒャン、変な声でラブコールしますしね。これじゃいくら秋の夜が長いといっても、睡眠不足になってしまいそう・・・。

去年、近所でうちのにそっくりの子犬が生まれ、冷や汗をかいたことがあるので、今年は脱走できないよう、しっかりリードをつけてあります。それでよけい吠えたてるのかもしれませんが、こればっかりはねえ。去勢手術も考えましたが、なにせ拾ったときにはいい年で、去勢してもあまり意味はないと獣医にいわれ、現在に至っていますが、この爺さん、なかなか枯れてはくれないようです。

よく考えてみれば、犬や猫をはじめ動物には加齢はあっても、老齢というものはないのですね。雌猫は死ぬまで子供を生み続けるし、雄犬は死ぬまで雌の尻を追いかける。老猫になると流産が多く、たまに生まれても奇形があったり、虚弱だったりするのですが、繁殖行為がなくなることはありません。雄犬も若い犬に阻まれて、しだいにチャンスはなくなっていくのですが、それでも本能的に自分の子孫を残そうと、精いっぱいがんばるみたいです。

それで寿命を縮めることになろうとも、繁殖には手を抜かず、まるで繁殖のない生には意味がない、といわんばかり。衝動に突っ走る若者の精神状態が、一生持続されるのでしょう。人とちがって、かれらには過去や未来という概念がないから、永遠の「今」だけがある。つまり、幼少期と壮年期しか、存在しないというわけです。

これはうらやましいことで、人は二十代から三十代になっただけで、ああ、自分もオジサン、オバサンになったと思い、還暦を迎えるころには黄昏を意識したりするのですが、これもちょっと変。人の多くが過去をひきずり、未来に怯えていることを考えたら、一見無駄なことをしているようでも、かれらの生のほうが理にかなっているのかもしれません。

わたしは未来に怯えてなどいない、という人がいるかもしれませんが、生命保険、医療保険、火災保険、自動車保険などなど、ひとつやふたつは入っているはず。保険というのは、わたしたちに未来に対する不安がかけらもなければ、成り立ちようがない制度なのです。昨今話題になっている膨大な不払いなど考慮に入れなくても、元々があこぎな商売。人の恐怖心につけこんでいるんですからね。

動物は一生現役。そして一生、自分の生命は自力で維持するのですが、ペットとなると事情はすこしちがってきます。病気は自然淘汰のひとつですが、飼い主は見ていられないから獣医に走る。食事は定期的に供給されますから、いやでも長生きして、飼い主に噛みつく痴呆症の犬猫まで登場する始末。それでも、死ぬまで面倒を見るというのは責任感なのか、動物を擬人化した錯覚にすぎないのか・・・。

わたしはうちの犬猫が惚けたら、ベッドだけは用意してやるけど、水も餌も一切やらない方針です。夜中の遠吠えに腹を立てたからではなく、それがかれらにふさわしいと思うからで、わたし自身、老境を迎えてそういうことになれば、だれもいないところで静かに衰弱したいと思いますもの。

それまでは一生現役。立てなくなるまで野菜を送り続けますからね。

今週の野菜とレシピ

今週は青物が充実しています。春菊、山東菜、京菜とくれば、あとはほうれん草が育ってくれるのを待つばかり。ほうれん草は霜が降りるころにならないと味がのってこないので、例年よりすこし遅れて登場すると思います。

山東菜はさっと湯がいて、油揚げといっしょに芥子醤油和え。油揚げはさっと炙って、よけいな油を取ると同時に香りを出してから、たっぷりの芥子醤油にからめてください。そこへ山東菜を加えると、ちょうどいい味加減。ご飯がよく進みます。

春菊京菜はやわらかいので生食できます。春菊とりんごのサラダは絶妙な取り合わせ。フレンチドレッシングに醤油少々を加え、お好みでぬるま湯でもどしたレーズンや、クルミのスライスを散らしてください。残った春菊の茎のほうは、お吸い物に使ってくださいね。

京菜はカリカリになるまで炒めたちりめんじゃこをのせ、二杯酢でいただきますが、そこに温泉卵を加えると食感が複雑になって、その分おいしくなります。

馬田さんの椎茸は生育が遅れているため、今週は原木舞茸が入ります。これはほんの一時期しか食べられない貴重なもので、今年はタイミングよく全セットに入れることができました。

茄子は茸類と相性がよく、茸の毒性を消す働きもあるので、このあたりでは山で採ってきた茸で素性のはっきりしないものは、茄子といっしょに油炒めする習慣がありますが、舞茸との相性も抜群。味つけしだいで、和風にも洋風にもなります。

舞茸ご飯にするときは油揚げを加えると、味と香りが増量されます。できれば舞茸はほぐしてザルに広げ、半日くらい風に当ててください。そうすることで香りが倍増されます。それをみじん切りにした油揚げといっしょに炒め、醤油で濃いめに調味。炊きたての新米に混ぜると、松茸ご飯も尻尾を巻いて逃げ出しそう・・・。香りだけでなく、こちらは味も濃厚です。

このまま秋晴れが続いてくれれば、来週には待望の大根が期待できると思います。