花粉症

2007年2月第4週

今週の野菜セット

左上から時計回り

春になると風の強い日が多くなります。春とはいえ、この時期の風はまだまだ冷たく、真冬並み。しかし真冬とちがうのは、その風にスギ花粉が混じっていることです。今年は花粉症の発症が例年より早いようで、花粉の量も多いのかもしれません。

この時期になると会員以外の人からも、例のビワ種微粉末の注文が入ってきます。どうやって調べてくるのか、ふたつ、みっつと袋が出て行くのですが、貴重なビワ種を会員以外の人に譲るのは不本意。でも、電話の声を聞いてしまうと断れない。そんな複雑な気分にさせられますが、春になると電話が増える。いいことなのか、わるいことなのかわかりませんけど、これも年中行事のひとつとなりそうです。

花粉症というのは、小さなコップに水を一滴ずつたらすがごとく、体内に異物が溜まっていって、許容量を超え、コップの水があふれ出すと発症するといわれています。だからわたしなども安閑としてはいられないのですが、まるで貯金でもするように花粉を積み立て、はい、満期になりました。おめでとうございます、というほど単純なものかというと、そうでもなさそうです。

花粉の量が少なくても、自動車の排気ガスなどCO2の多いところでは、杉林のど真ん中に住んでいる人より発症しやすくなる。正確なデータはありませんが、食品添加物を多量に摂取していることも、発症とは無関係ではなさそうです。だからこれは文明病などといわれていますが、正しくは公害病、もしくはジャンク病。わが家も杉林に隣接していますが、近所に越してきた重度の花粉症の人が、症状が軽くなったと喜んでいましたから、花粉の量はあまり関係がないのだと思います。

もっとも、花粉は風に乗って飛んでゆきますから、意外と杉林の中というのはクリーンなのかもしれません。いい年になって花粉症になったどこかの知事が、都内からスギを一掃する、などとのたまわったそうですが、アホか、都内に飛来している花粉は埼玉あたりのものでしょうに・・・。

ともあれ、マスクなしでは外出できない、花粉がこわくて布団が干せない、という話を聞くと、ウインドレス鶏舎に詰めこまれた鶏のごとく、無菌室に閉じこめられた人類の将来を暗示するようで、なんだか末恐ろしくなってきます。衣服に花粉を寄せつけない洗剤や、空気清浄機などというのもそれを加速しているようで、イヤーな気分になるんですね。

花粉や病原菌を敵にまわしていると、そのうちにとんでもないツケがまわってくる。花粉症のつらさを知らないから、そんなことがいえるんだといわれるかもしれませんが、スギはなぜ花粉を飛ばすのか。それを考えたら、生殖という行為を否定、ひいては生命活動そのものを否定することになってしまいます。これは自分の首を絞めるようなことでしょう?

花粉症という名称もよくありません。たしかに引き金となっているのは花粉かもしれませんが、原因は空気中の炭素量の増加や、体内に蓄積された化学物質のほうにあるのですから、人間界なら名誉毀損罪。いいがかりみたいなもので、わたしがもしスギだったら怒ると思います。

それともうひとつ。ああ、また花粉症の季節になった。いまいましいスギ花粉め、というのと、花粉症はつらいけど、今は植物の発情期みたいなもの。嵐が去るのを待ちましょう、というのでは、おなじ花粉を吸っていても症状がちがってくると思うんですね。花粉と和解する。案外、それがいちばん手っ取り早い治療法なのだと思うのですが、どうでしょう。

今週の野菜とレシピ

今週は田ゼリが入る予定でしたが、まだ小さすぎるようです。今年はセリも例年より早いと思われたのですが、このところ、また寒さがぶりかえしているようなので、今しばらくお待ちください。

そのかわり、ひさびさに野沢さんのニラが入ります。やわらかくて香りのいいニラは、さっと湯がいておひたしに・・・。ニラは湯がくと切りにくくなりますから、食べやすい長さに包丁を入れてから鍋に入れてくださいね。醤油といっしょに胡麻油を少量たらすと、ニラの甘みがひきたちます。

あぶら菜も例年より早く登場しました。これが出てきたら、もう春です。湯がくときは塩ひとつまみといっしょに、油を少々たらしておくのがコツ。沸騰したら火を止めて、余熱を利用。茹であがっても水には浸けず、まな板に並べて冷ますとあぶら菜の持ち味が逃げず、濃厚な春の香りを楽しめます。

ター菜は大きすぎて扱いにくい、という声を聞きますが、一度に料理しなくても、外側から葉を取りながら少しずつ使うという手もあります。株が丈夫で葉がしおれにくいので、キッチンにプランターでも置いた気分で、のんびり使っていただけたら、と思います。炒めもの、スープにどうぞ。

野菜たっぷりセットの方にはユリの花。正確には日光キスゲを干したものが入っています。黄色い可憐な花ですが、鉄分が豊富に含まれているので、貧血の治療や予防に使われています。

医食同源の中国ではポピュラーな食材で、水でもどしたものをスープや炒めものに使っているとか。わたしは湯がいた煮汁をスープや味噌汁に使い、本体はサラダや酢のものにしています。ほんのり甘く、微かに酸味もあって、なかなか美味ですよ。