身近な野草を食べてみようその2

2007年3月第3週

今週の野菜セット

左上から時計回り

春を目前に寒さがぶり返したようで、開きかけていた花のつぼみも停止状態。思わぬ寒さにふるえているようです。

でも、寒いのには我慢しましょう。冬将軍にそれだけ余力があるのなら、どうしてもっと早くがんばってくれなかったのか、ちょっと恨めしい気もするんですけどね。

寒いとはいえ、冬の間地面に張りついていた草はもう起きあがり、すこしずつ背丈を伸ばしはじめています。タンポポのつぼみもふくらみはじめ、摘み草にはいちばんいい大きさ。今なら葉っぱをサラダで食べることもできます。

今週は、身近な野草を食べてみよう、第二弾です。前回、春や秋といった気温や気候の変動のはげしいときは、とくにミネラルが必要とされると書きましたが、冷暖房が発達した現代の生活では一年を通じてミネラルの消費量が多く、そこに温暖化が加わると、さらにそれが上乗せされるといいます。寒い地方が急にあたたかくなると、ふだんからあたたかい地方に住んでいる人より多くのミネラルが要求されることになり、今年のような暖冬を経験すると、身体がだるい、眠たいという人が多くなってくるんですね。

このだるい、眠たいという症状はミネラル不足を補うため、骨が溶解かされているからで、体内でそういう自給自足がおこなわれているときは、自然と人体は休眠状態に入ってしまうのだとか。それ以外にも、ミネラルの欠乏は冷え性、貧血、アレルギーといった疾患の原因となります。現代病の多くが、ミネラルの消費量は増えているのに、野草を食べる習慣がなくなった上、青菜が敬遠されがちであるといった悪循環に起因するところが大きいようです。

春眠暁を覚えず、などと暢気なことをいっている場合ではありませんよね。休日にはちょっと早起きをして、摘み草にでかけてはどうでしょう。

タンポポをはじめ、ハコベ、ハハコグサ、ぺんぺん草、アザミ、スギナ、ヨモギ、カラスノエンドウなどなど、食べられる野草はたくさんあります。

小鳥を飼っている人にはおなじみのハコベなど、湯がくとほうれん草とおなじ味と香りになりますし、ハハコグサのおひたしもクセがなくて美味。花が咲いてしまったタンポポは、花も葉もてんぷらに・・・。カラスノエンドウもかき揚げにすると子供がよく食べます。わが家では子供が小さかったころ、野草類はすべてかき揚げにして、それを「葉っぱエビセン」と称していたものです。

もうひとつ、この時期かならず作るのがスギナご飯で、これは葉が広がる前の若いスギナを集め、さっと湯がいてからきざんで、ちりめんじゃこといっしょに炒めて醤油で味つけ。それをご飯に混ぜたものです。スギナは万病の薬といわれていますが、そんな理屈は抜きにしてもおいしいので、機会があれば作ってみてください。

今は健康ブームのおかげで、そんな手間をかけなくても野草茶やタンポポコーヒーが市販されていて、わたしも利用することがあるのですが、やっぱり春にはフレッシュなものが食べたい。身体が求めているものを食べたときのおいしさは、どんなごちそうにも勝るものです。

とくに妊娠中の方は、そういうものをたくさん食べてくださいね。子供のアトピーが増加していますが、これもミネラルの欠乏と大いに関係があるからです。親にアレルギーがあっても、妊娠中にミネラルを十分に摂取していると、赤ちゃんはアトピーになりにくくなるそうです。

かつて長寿を誇っていた沖縄で、平均年齢がじわじわと下がってきているのも、昔ほどヨモギが食べられなくなっているからで、これを見ても野草のありがたさがわかりますよね。

野草ほどではないとはいえ、青菜類もバカにしたものではありません。子供の骨が弱く、骨折しやすくなっているのは、この青菜が不足しているからにほかならず、カルシウムの豊富な牛乳を飲んでいるからといって、それが骨の形成に役立つわけではありません。

それどころか高カルシウム食品は体内からリン酸を奪ってしまうので、逆にカルシウム不足という現象を引き起こしてしまうのです。カルシウムというのは体内で作られるものだということは、草しか食べない牛が牛乳を作っていることからもわかりますよね。では、体内でカルシウムに変換されるのはなにかというと、青菜に多く含まれるカリウムなのです。

このあたりの農家では、青菜のない味噌汁を飲んでいると婆さんの腰が曲がるといって、味噌汁というより菜っぱのごった煮みたいなものが作られます。はじめて食べたときはびっくりしましたが、そうか、あれはそういうことだったのか、と気づいて以来、わが家の味噌汁も具だくさんになりました。味噌汁でもスープでも、とにかくそこへ野菜をたっぷり入れて、青菜がきらいという人にはミネラルの溶け出した汁だけ飲ませる。その方法でやってきました。

野菜セットに青菜が多いのも、青菜を敬遠しがちな若い世代にも最低限これぐらいは食べていただきたいからで、どうしていいかわからないものはスープに入れる。青菜は薬、ぐらいの気持ちでご利用いただけたら、と思います。

今週の野菜とレシピ

先週に引き続き、田ゼリが入ります。田ゼリで思い出しましたが、野草を摘むといっても公園などでは除草剤が使われているところが多く、安心して採集できませんが、田圃の土手というのは草の根が張っていないと崩壊して水が漏れるので、無精な農家でもせっせと草を刈り、除草剤は使いません。農家がまだ田圃に入らない今が狙い目ですが、農家がいても摘み草は歓迎されると思いますよ。

すこしの摘み草なら行楽気分ですが、これを全セット分採集する青山さんの根気には、毎年のことながら脱帽します。青山さんはこのセリのために、田圃に耕耘機も入れないでがんばってくれています。これはもちろん「葉っぱエビセン」の仲間入り。葉だけでなく、根も食べられますが、境目の太くなった部分は取り除くか、包丁を入れて食べやすくしてくださいね。

パセリは野草並みにミネラルが豊富。これをさっと熱湯にくぐらせて、胡麻和えにしてみてください。パセリの香りがどうも、という人でも食べられます。

春大根は今回で終わり。みずみずしい大根サラダもしばらく食べられなくなりそうです。この大根葉はさっと湯がいてから塩でもみ、水気をよく切ってから、ちりめんじゃこ、切り胡麻などいっしょにご飯に混ぜると、彩りのきれいな菜飯になります。

かき菜はあぶら菜の一種。根元から収穫するのではなく、花のついた茎をかき取るのでかき菜という名前がついています。これもあぶら菜同様、さっと湯がいてマヨネーズ+醤油+すり胡麻で和えると美味。もちろん汁もの、炒めものでもOK。あぶら菜のほのかな苦みが身体にしみわたるのを感じてください。