暖冬の危機

2007年1月第2週

今週の野菜セット

左上から時計回り

新年になって、ようやく冬らしい寒さになってきました。

毎朝の犬の散歩。ばりばりと音を立てながら霜の上を歩いていると、ああ冬の音がする、とひと安心。指先はかじかむし、風が吹くと耳は痛いし、小走りで散歩を終えるころ、ようやくあたたかくなってきます。

この犬がまた、秋も深まって冬毛が生えそろったとたん、春先のように大量に抜け落ちて、薄着になってしまったのです。どうしたことかと思っていたら、近所にもおなじような犬がいたので、この様子だと暖冬はまちがいなさそう。困るなあと思っていたら、ようやく冬将軍が動きだしてくれました。

冬があたたかいのはありがたいことではあるのですが、それが多方面に及ぼす影響を考えると、おお寒い、とちぢみあがっていたほうが健全な気がします。冬毛を脱ぎ捨てた犬はさぞかし寒いだろうって?それが平然と散歩に出てくるから不思議です。

正月に流れたニューヨークの光景は異様で、半袖姿で闊歩する市民の映像を見たとき、こんなことではこの冬、カナダではいったい何頭のシロクマが生き残れるんだろう、と気が重くなったものです。年末に父が亡くなりましたが、それよりもこちらのほうがはるかに重大で、ショックも大きかったぐらいです。クマと自分を同一視するという幼い部分が父にはありまして、中でもシロクマはお気に入りでしたから、彼の死後、急に気温が下がりだしたのは、もしかしたら北極に住む同胞のため?ハドソン湾が一刻も早く結氷し、シロクマが猟に出られるよう、微力をふるってくれたのかもしれません。

そんな個人的な思い入れはともかくとして、夏の間、ほとんど食糧らしい食糧が口にできないシロクマたちは、いち早く氷が張るハドソン湾に集結し、ひたすら待ち続けます。結氷が三日遅れると、体力のない子供が死に、一週間もすると成獣にも餓死するものが出てきます。とくに母親は半年以上なにも食べずに子供を産み、濃厚なミルクを出し続けているのですから、体力も限界にきているでしょうからね。

温暖化に苦しんでいるのはシロクマだけではありません。アラスカを大移動するトナカイの移動ルートが血に染まっているという報告があり、これは冬のアラスカに雨が降るようになったため。雪はどんなに積もっても、トナカイたちを傷つけることはありませんが、雨は凍りついて、ガラスのように脚首に切りかかり、かれらを消耗させるのです。

そんなわけで、やっぱり冬は寒くなってくれなくっちゃ。こちらは下着を一枚プラスするだけで、十分しのぐことができるんですからね。

でも、暖冬の危機が去ったわけではありません。

日曜日、落ち葉堆肥を作っていたら、ウグイスが鳴いていたのです。鳴いていたというより、鳴く練習をしていたといったほうがいいでしょうか。ホーホケキョにはほど遠い、チューチャチュチュという声が、落ち葉の上にヌカをふり、鶏糞とぼかしを撒いて水をかけ、踏みしめてはまた落ち葉を積み、という作業の間、ずっと続いていたのです。

応援歌にしてはもどかしい、逆に力が抜けそうになるような鳴きかたですが、それにしても例年より二ヶ月ちかく早い。ふつうなら二月の終わりごろから鳴きはじめ、五月ごろになってようやく、ちゃんとしたホーホケキョが聞けるようになるんですね。ということは春が早いということかもしれません。

冬枯れの木立の枝に声の主を見つけました。丸々太った大きなウグイス。成鳥はスズメとたいして変わらない大きさですから、巣立ったばかりの幼鳥にちがいありません。発声練習に夢中で、こちらが近づいても逃げ出さない。うちの猫どもにやられるなよ、といいながら落ち葉相手に奮闘していましたが、この分だと堆肥ができあがるのも例年より早くなりそう。堆肥作りが遅れていたので、そうなってくれればラッキーですが、でも、ほんとうにそれでいいんだろうか。ちょっと複雑な心境でした。

今週の野菜とレシピ

今週はカブが入りました。甘みのあるカブは生食でも、スープや味噌汁でも持ち味を発揮。カブの葉も栄養価が高く、青ものにはめずらしく亜鉛を含んでいますので、無駄なくお使いください。

ター菜は畑で小鳥たちの集中攻撃を受けているとのこと。かたわらには小松菜も春菊もあるのに、野鳥はター菜ばかり啄みに来るらしく、よくわかってるんだよねえ、と好子さん。ヒヨドリのお墨つきというだけあって、甘さもやわらかさも小松菜を抜いています。炒めもの、汁ものに・・・。

ひさびさに大貫さん(山形)のシメジが入りました。油炒めしたしめじはレモンと相性がいいので、たっぷりかけて・・・。そこにパセリも忘れず、散らしてくださいね。

来週は好子さんのお母さんのタクワンが入ります。

※野菜たっぷりセットにはキク芋が入りました。ほんとうは全セットに入る予定でしたが、思ったほど数量がなかったので、一部の方だけになりました。申しわけありません。

イク芋はキク科ヒマワリ属の多年草で、人の背丈よりも高くなりますが、食べられるところはわずか。甘みがあるので果糖の原料にもされるそうです。

芋という名前がついていますが、でんぷんは含まれず、インスリンの代謝を促すイヌリンとビタミンB1が豊富に含まれているので、血圧や血糖値の高い方にはとくにおすすめ。

薄くスライスしてさっと油で炒め、塩、胡椒で食べてみました。キク芋自体に甘みがあるので、味つけはシンプルなほうがよさそうです。また、炒めすぎるとべたっとなっておいしくないので、半生ぐらいにしておいたほうがよさそうです。ほかにサラダ、てんぷら、さっと湯がいて胡麻和えなど、いろいろ食べ方があるようなので、お好きな方法でお召しあがりください。