スズメバチは駆除していいの?

2007年10月第1週

今週の野菜セット

左上から時計回り

週末、気温がぐーんと下がって肌寒くなりました。ぶり返しかけていた暑さが一気に吹き飛んで、蝉の羽音もとうとう途絶えてしまいました。

反対に勢いを増したのが秋の虫。コオロギは昼間から鳴き交わし、夕刻ともなれば車を運転していても耳の中、いや、頭の中がわーんと鳴るぐらい大音量になってきます。いったいどれだけのコオロギやキリギリスが、草むらに潜んでいるんでしょうね。

この連中が畑に押しかけて、好子さんの小松菜を穴だらけにしてしまうんです。中には葉脈しか残っていない、レースのようなものまであるそうです。小松菜と山東菜が並んでいると、圧倒的に小松菜がやられるといいますから、かれらの好みもわたしたちとおなじみたい。気持ちはわかるけど、もうすこし遠慮してくれるといいんですけどね。

この時期、いちばんイヤなのは路上で轢かれたヘビに遭遇すること。今朝も犬の散歩にでかけて、小ぶりのヤマカガシが二匹、つぶれているのに出会いました。

急に気温が低くなると、ヘビは日中あたためられたアスファルトの上で暖をとろうとするのです。だから、轢かれるのは夜間。ライトをつけていても、ドライバーは路上に横たわるヘビにはなかなか気がつかない。気がついたところで、ブレーキが間に合わないことが多いのです。

中にはヘビなんか殺してもいい、あるいは殺したほうがいい、と思っている人さえいますから、夜間のひき逃げ事件は絶えません。先日など、わたしの前を走っていた車がドンとなにかにぶつかり、スピードを落としましたが、何事もなかったように走り去ってしまいました。路上ではタヌキが断末魔の痙攣。今ごろ獣医は寝てるだろうし、どうしようかと迷っているいるうちに事切れてしまいました。

裏庭の猫の墓場に埋葬しましたが、やわらかい毛並み、ふかふかの尻尾、チョコレートポイントのシャム猫そっくりの色合いといい、このまま埋めてしまうのがもったいないような死体でした。キツネ・タヌキに特有の体臭がちょっと気になりますが、極上のマフラーさながら。

ヤマカガシだって、生きているときはきれいなんですよ。全体に細かい網目があって、そこに赤みがかったオレンジの小判模様が、規則正しく並んでいます。でも、どんなにきれいでも、愛らしくても、野生動物は特別な保護でも受けないかぎり、殺されても傷つけられてもなにもいえない。なにもいわれなければ、なにをしてもいい、というわけではないのですけどね。

また、十月に入ると、スズメバチの活動が目立つようになってきます。生き残りのために、ミツバチの巣を強奪するのが目的ですが、気が立っているせいか、人を襲うこともあります。人は自分がヘビやタヌキを轢き殺しても知らん顔をしているくせに、ハチに刺されようものなら大騒ぎして、駆除に乗り出したりするから困るのです。一族皆殺し。すごい報復でしょう。

スズメバチの駆除を専門にしている業者もいて、だれも被害を受けないうちから大スズメバチの巣を撤去したりする・・・。スズメバチそのものは無害ですが、針があるから危険。危険だから予防措置として駆除したほうがいい、という考えかたです。これって、どこかの国の「テロとの闘い」を彷彿させるような話じゃないですか?

そんな風にスズメバチが駆除されるものだから、日本中の野山で天敵を失ったアブが大発生しています。スズメバチが人を刺すのはアクシデントですが、アブは蚊とおなじように吸血が目的なので確信犯。わたしもこれには迷惑しています。涼しくなってなにがうれしいって、庭先や畑からアブがいなくなったこと。蚊は今も健在ですが、刺されても痛くないし、痒みも長続きはしません。ところがアブは痛い上に、しつこく痒みが残るんですから・・・。

はい、スズメバチもたくさんいます。イチジクなど採るときには、スズメバチの集団の中に入らねばならないのですが、これがじつに面白いのです。イチジクが目的なのか、スズメバチと駆け引きするのが楽しみなのかわからないほどで、熟れすぎたイチジクはスズメバチに譲るかわり、ほどよく熟れたものはわたしがもらう。そういうルールを作ったにもかかわらず、なかなか譲ってくれないのが中にいて、そのハチとじっくり向き合う。おだてたりすかしたり、粘っていると、しぶしぶハチのほうが譲ってくれるのですが、これが貴重な情報交換になるようなのです。

うちのイチジクの木に集まるハチと仲良くなると、どういうわけか、ずっと離れたところにいるスズメバチも友好的になってくる。山の中で大スズメバチに道を教えてもらったときは、無意味に山中を徘徊しなくてすんだというより、ハチが自分を先導してくれたことのほうがうれしくて、感動的でした。もしイチジクの実を採るときに、スズメバチがいるといって殺虫剤など撒いていたら、そんな幸福は得られなかったにちがいありません。

自然界のものをひとつ敵にまわすと、なし崩しに敵が増えてゆくものです。それにかかるお金や、無駄な労力を考えたら、馬鹿馬鹿しくなってくるし、敵に囲まれながら生きてゆくというのは、けっして居心地のいいものではないはずです。ほんのすこし謙虚になるだけで、生活は楽になるし、自分自身も解放されて、のびのびと生きることができるんですけどね。

今週の野菜とレシピ

待望のごぼうニンジンが入りました。が、ニンジンはまだ小ぶりです。その分、葉っぱのほうがやわらかくて食べ頃なので、かき揚げや炒めものにしてはどうでしょう。

ニンジン葉とちりめんじゃこの常備菜:フライパンに胡麻油を熱して、ちりめんじゃこを炒め、細かく切ったニンジン葉も加えて炒めます。一味唐辛子と醤油で調味。火を止めてから、煎り胡麻をたっぷり加えてください。ふりかけ感覚で新米といっしょにどうぞ。

小さいとはいえ、ニンジンが出てきて、ごぼう、里芋、長葱とくれば、大根がないのが残念ですけど、けんちん汁が作れますね。豆腐を用意。こういう具だくさんの汁ものをたっぷり作っておくと、翌日は手抜きができます。三日目はけんちんうどんにして終了、というのがわが家流。みなさんもいろんな楽しみかたをしてください。

胡麻の香りのルッコラは、サラダ向き。

小松菜は冒頭にあるように、バッタやキリギリスが穴だらけにしていますが、かれらだけがわるいわけではありません。例年なら、好子さんの小松が登場するのは十月も半ばになってから・・・。それを端境期の野菜不足を理由に、ちょっと時期を早めてもらったのがわるかったようです。種を蒔く時期が一週間ちがうだけで、畑の環境は大ちがい。とくに秋口は三日でも、野菜に大きな差が出るといいます。

わたしが急かす。好子さんが焦る、というのが小松菜に穴ができてしまった最大の原因だったのですが、目をつぶって調理していただけたら、風味にも栄養価にも別条はありません。遅れて蒔いた小松菜のほうはきれいに育っているそうですから、もうすこしの間ご辛抱ください。