ネパールの学校

2007年7月第3週

今週の野菜セット

左上から時計回り

梅雨らしい雨量になってきたと思ったら、台風が接近。沖縄を経て、九州に上陸。そのまま本州に沿って、関東地方沿岸までやってきそうでしたが、東の海上にそれてくれました。栃木県は内陸なので、それほど大きな被害を受けることはないのですが、いつもは軒下に営巣するツバメたちが、今年はガレージの中で子育てをしています。もしかしたらこのあたりも・・・と案じていたのですが、大雨ですみました。

それよりも大雨に見舞われた直後の九州、四国地方。そこに台風が直撃するとどういうことになるのか。益子も二十年ぐらい前、水害に遭遇したことがありますが、一度床下に浸水するとそこに泥がたまり、悪臭がいつまでも残るといいます。二十年を経た今でも、倉庫や物置の片隅に名残があるというぐらいですから、なかなか傷は癒えないようです。

水害といえば、ヒマラヤの氷河の減退にともなって、洪水が頻発しているネパールの農村部に、つい先日、友人が行ってきました。友人のお母さんがネパールで学校を作る運動をしていて、開校準備の手伝いに駆り出されたのでした。

ネパールは貧しい国です。首都のカトマンズは排気ガスで汚れているし、ストリートチルドレンもいる。農村部はさらに貧しく、だから日本人が学校を作る手伝いなどしているのでしょうが、帰ってきた友人の報告はそれとは大ちがい。すばらしいところだったそうです。

たしかに首都はごみごみしていて、ディーゼル車が通った後は排気ガスが臭いけれども、悪臭ならニホンの都市部で感じることのあるどぶ臭さのほうが、よほど気になるとのことで、これはわたしも納得。バレーやオペラなどの催しに出かけると、一見きれい、一見立派な建物の足下から、ふっと下水のにおいがすることがあって、コンクリートやアスファルトの厚化粧の下で、大地が蒸れ、水が腐っているという印象を受けるのですが、いわゆる後進国では汚れが顕在化している分、解消するのも早く、見た目は悪くても清潔なのかもしれません。

人でごったがえすカトマンズには、野良犬、野良牛もたくさんいるそうで、それが人の庇護を受けないかわり、追われたり殺されたりすることもない。犬は犬、牛は牛、人は人でそれぞれ混在しながら、干渉しあうこともなく街を行き来しているのが印象的だったといいます。先進国といわれるところでは、そういう自由は許されません。だから犬はかみつくし、乞食の存在も許されないから犯罪が多発する。どちらが健全で、どちらが病的か、ここでも考えさせられたといいます。

さて、肝心の農村部です。貧しくて、疲弊しているはずの農村部が、これまた活気に満ちていたそうで、なんといっても若者が多いそうです。若者も一度はカトマンズに出て行きますが、仕事がないので帰ってくる。現金収入はなくても食べられるから、結局そこで落ち着くことになるそうです。やることもけっこう多く、お金にはなりませんが、頻発する洪水で道が使いものにならなくなれば、それは国ではなく、その地域の住民が受け持つことになっているので、若者の出番となるわけです。

現金がなくてもちゃんと食べられ、しかもみんなおいしいものを食べている。どこの家で出されたカレーもおいしく、ナンやご飯にのせて食べるバターも、これがバターかと思うほどおいしかったそうです。農家にはかならず水牛がいて、農耕にもそれを使うし、ミルクも絞る。そのミルクから絞るバターが、彼女を感動させたのですね。

農家から分けてもらったというそのバターをわたしも味見させてもらいましたが、まず香りにびっくりしました。焼きたてのクッキーみたいな香ばしい匂いがして、舌にのせると油というより氷が溶けてゆくような涼しい食感。わたしたちがふだん口にしているバターって、いったい何なんだろうと思ったぐらいです。

これは水牛と乳牛の差だけだろうか、とわたしたちは話し合いました。家族のように大事にされている牛と、ミルクを出す機械みたいに生産性ばかり追求され、ちょっと乳の出が悪くなると廃牛にされてしまう牛との差。人といっしょに歩き回っている牛と、狭い牛舎に詰め込まれている牛との差・・・。

日本には食料がたっぷりあるし、種類も豊富。毎日がごちそう三昧でも、ほんとうにおいしいものといったら、そんなにはない。いったいどちらが貧しくて、どちらが豊かなのか・・・。ネパールで食べた野菜は、痩せ土のはずなのに、どれもとってもおいしかったそうです。

学校にしても、母親がやっていることとはいえ、日本人が小遣い程度のお金を出して、農村部に学校を作っても、はたして意味などあるものだろうか。それよりネパールに学校を作ったら、そこに一ヶ月ずつでも日本の子供を送り込んで、ほんとうの豊かさというものを教えたほうが、よほど有意義なのではないか、などと思いながら帰ってきたそうです。

友人は若いころ、青年海外協力隊としてパラグアイに滞在していたことがあります。音楽教師として派遣されたそうですが、こんなすばらしい伝統と音楽を持った人たちに、わたしはいったい何を教えに来たんだろうと、と悩んだそうです。ただ、子供たちに珍しがられ、みんな壊れそうなオルガンを弾くと喜んでくれたそうで、それが唯一の救いだったとか。

そこでも貧しいはずの村人が、なんの屈託もなく暮らし、毎日単調とはいえおいしいものを食べているのが意外だったそうで、日本に帰ってきたときのほうが環境の変化に対応するのがたいへんだったといいます。先進国と後進国、豊かさと貧しさという概念がひっくり返ったからでしようからね。

ただ発展途上国でも、ついこの間まで植民地だったようなところでは、ちょっと事情が違うようです。先進国の悪弊が持ち込まれただけではなく、搾取の仕組みだけはそのまま残っていたりしますからね。大国資本のプランテーションが入り込んでいるところも同様。そして、そういうところに限って自然災害に見舞われやすいというのも皮肉です。自然災害が人災でもあるということを考えれば、そういう面でも大国のツケを払わされているということになるのですから気の毒です。

日本に上陸する台風も、永田町や工業地帯に集中してくれればいいのですが、いかんせん、老人しかいないような過疎の村が壊滅的な被害を受けたりする。国はその人たちによほど手厚い援助をしないかぎり、亡国の憂き目にあうことが必定なのですが、そういう因果関係も科学的に証明されないかぎり、注目されることはないのかもしれません。今回の台風4号も、関東地方に達するころには勢いがなくなってしまいましたからね。この根性なし、とテレビを見ながら舌打ちしていたわたしは、不謹慎だったでしょうか。

今週の野菜とレシピ

今週はトウモロコシが入るかと思われたのですが、枝豆のほうが先に大きくなりました。これも鮮度が命。日が経つにつれて甘みが減ってゆきますから、届いたらその日のうちに湯がいてください。面倒でもサヤの両側をハサミで落とし、塩もみしてから湯がくと仕上がりがきれいです。

オクラも生のままスライスするにせよ、湯がくにせよ、一度塩もみしてから使うと色が鮮やか。赤いオクラが混じっているかもしれませんが、これも湯がくと緑に変色します。

空芯菜はニンニクとの相性がいいので、炒め物にするときはかならずニンニクを先に入れ、香りをつけてください。豚肉との相性もいいですよ。

好子さんの報告では、今回の風と雨で、トウモロコシとオクラの木が倒れ、一部がダメになってしまったそうです。が、野菜セットに影響が出るほどではないといいますから、来週にご期待ください。