カラス

2007年3月第1週

今週の野菜セット

左上から時計回り

ぽかぽか陽気が続くかと思ったら、寒の戻りがあったりして、春特有の不安定な空模様が続きます。風邪をひいている人も多いようで、花粉症かと思えば風邪。風邪かと思えば花粉症みたいな、白いマスクが目につくようになりました。今ごろになってインフルエンザの噂も耳にしますから、この時期の服装には注意しなくちゃね。

天気予報がアテにならないのはわかっているのですが、それでも出がけに家人から、今日は四月上旬の陽気になるんだって、なんていわれるとついつい軽装のまま外出し、裏切られることもしばしば。テレビのいうことは信じなくても、それをそのまま家人の口から聞くとつい信用してしまう。信じたわたしがバカなんですけどね。そんなわけで今日は震えながら仕事をしています。

(この日、午後になって急にあたたかくなりました。今度はちょっと動くと汗ばむぐらいで、この時期、汗をかくとすぐに冷えますから、これはこれで風邪の原因になる。厄介な季節ですね)

それにしても冬が短すぎました。暮れのころから犬の冬毛が抜けはじめ、冬の間も抜けつづけて、今ではきれいさっぱり春仕様。ウサギのモモも漆黒の冬毛が薄くなって、みすぼらしい姿になりつつあります。そしてわが家の周辺にはカラスの抜け羽がいたるところに・・・。

鳥もあたたかくなってくると冬羽を落としますが、いろんな野鳥の中でもカラスの羽根は大きく、色もあざやかなのですぐにそれとわかります。面白いのは、こちらがそれを拾おうとするとカラスが抗議の声をあげること。それはオレの羽根だぞ、といわんばかりに鳴くのです。おまえはケチだねえ、といいながらそのままにしておくと、翌日になってもそこにある。結局拾うことになるのですが、カラスってヘンなヤツ。一度など、黒い傘の埃をはらっているだけで怒られたことがありますからね。

カラスの見ているところでは、黒いものはたいせつに扱わねばならないようです。袋の底でかたまりになってしまった肥料かなにかを、粉砕するために踏みつけていてカラスに襲われたという農家もいます。袋の色がいけなかったんですね。黒いポリ袋にクッションでも入れて、それを叩いたり蹴ったりしてみても、カラスは襲ってくるといいます。わたしは信頼関係を壊したくないのでやりませんけど、お近づきになりたい方は試してみては?

カラスは嗅覚がそれほど発達していない分、視覚に頼るところが多いらしく、それを逆手にとって、黒いゴミ袋を丸めて棒に吊し、カラス除けにしている農家もあって、これは一種の脅迫行為。細工がバレたときには、集中攻撃を受けるかねません。釣り糸を畑の周囲にめぐらせているところもあって、これはカスミ網にみせかけるため。こちらのほうはかなり効果があるそうですが、それでもいつかは見破られるにちがいなく、どうせ知恵比べをするのなら、こちらがカラスに敵愾心を抱いていないという意思表示をしたほうが、よほど効果的。敵にまわしてはいけませんよね。

最近、近所の公園で仲良しになったカラスがいます。カラスには二種類あって、都会にいるのがハシブト。もともと日本に生息していて、今は田舎にしかいないのがハシボソなのですが、ハシブトよりひとまわり小さく、野性的で人にあまりなつきません。以前、怪我をしているところを保護して育てたキョロちゃんだって、怪我が治って飛べるようになると、すぐに野生にもどって人のそばには来なかったぐらいです。

それがどういう育ちかたをしたのか、わたしがベンチに座っていると接近してくるハシボソがいて、まずわたしの靴をつついて様子を見、それからベンチに上がって今度はバッグをつつき、それでも大丈夫と見ると、ベンチの背にとまってわたしの髪をひっぱる始末。顔にキスまでしてくれましたが、頬に穴が開くかと思った・・・。

このところ、仕事が終わるとその公園に日参し、短いデートを楽しんでいるしだい。人に慣れたハシブトの話はよく耳にしますが、ハシボソときたら、もう十年ちかくゴハンを上げているカラスたちでさえ、近づくと飛び立ってしまうんですからね。

その近づくと飛び立ってしまうカラスのつがい。最近はすっかり年老いたのか、テリトリーを追われたらしく、滅多と姿を見せなくなりました。ここ数年、抱卵もしていないのか、子供の姿も見かけなくなりましたしね。この雌、ランちゃんというのですが、ひさしぶりに見ると白い羽根がいちだんと増えていましたから、来年あたり「白いカラスがいる」なんて話題になるかもしれません。

かわりにゴハンをねだりに来ているのが、数年前のかれらの子供で、足を片方なくしてしまった通称・坊や。この坊や、障害があるせいかずっと配偶者に恵まれなかったのですが、最近は彼女ができたみたいで、今年は坊やの子供が見られるかもしれない、と楽しみにしています。

カラスの世界の世代交代。悲喜こもごもといったところですが、一羽のカラスがこんなにも人を楽しませ、幸福にしてくれる。昔はなんとなく怖くてきらいでしたが、好きなものが増えると人生がこうも豊かになるのか、なんてあたりまえのことを実感。これもカラスに教えられたことのひとつでしょうね。

今週の野菜とレシピ

今週はにんじんゴボウが入りました。きんぴらもいいですが、ここは春らしくピーラーを使って薄く削いで、てんぷらというのがどうでしょう。にんじんとゴボウのリボン揚げ。これはおかずにはなりませんが、食卓を楽しくしてくれます。

あぶら菜を湯がくときには塩ひとつまみといっしょに、油を少々落とすのがコツ。菜種油が理想的ですが、サラダ油でもなんでも、お手持ちの油でけっこうです。茎のほうから湯がいて、沸騰してきたら葉先も入れて火を止め、余熱で調理。ほどよいところでまな板の上に広げて冷ましてください。これだけのことで、あぶら菜の味と香りがぐっとよくなります。食べやすい大きさに包丁を入れて、芥子醤油和え、胡麻和え。いずれにしてもマヨネーズを少量のせて食べるとおいしいですよ。

ここ数日のあたたかさでホウレン草が徒長。袋におさまりきらなくなってきました。というわけで、今回か最終便。こうして徐々に冬野菜が姿を消してゆきます。

じゃが芋が入りますが、例年より発芽が早いようで、もう子猫の乳歯のような芽があちこちに見られます。保存中にもやしのような大きさになってくるかもしれませんが、それは落とせば食べられます。発芽がはじまると、じゃが芋のでんぷんがアミノ酸に変化するため、甘みが増します。ですから見方を変えれば今がじゃが芋の旬。もっともおいしく食べられる時期なのです。

元気に発芽をはじめたじゃが芋は、出荷には手間取りますが、生きているんだなあ、という仕合わせな実感がともないます。だって、市場にあふれるじゃが芋はほとんどが放射線を浴びせられ、発芽のできない奇形にされているんですからね。じゃが芋のひとつをペーパータオルを敷いた皿にのせ、毎日水をやっていると初夏にはきれいな薄紫の花が咲きます。そういう楽しみかたができるのも、生きた野菜ならでは・・・。それをやるときは、なるべく日当たりのいいところに置いてやってくださいね。