身近な野草を食べてみようその1

2007年3月第2週

今週の野菜セット

左上から時計回り

あたたかくなって、ムスカリの花が満開。わが家が青い花にすっぽり包まれた感じになって、それをウサギのモモが食べる姿は、まるで小さなトウモロコシでもかじっているかのよう・・・。これが春一番に咲く花で、続いてスイセンが南斜面を黄色く染めはじめます。

そしてこれが、そろそろツクシが顔を出すぞ、という合図でもあるんですね。今年は山羊の柵の中も主人が不在なものですから、斜面一帯に顔を出すツクシも食べ手がいない。そうなると人の口に入れざるを得ない、というわけで忙しい春になりそうです。

さて、今週の野菜セットには田ゼリが入りますが、セリ以外にも食べられる野草はたくさんあります。春の七草はご存じでしょうが、なぜ春と秋にそういうものが挙げられているかというと、いずれも温度変化が激しく、気象も不安定な季節だからで、そういうときにはとくにミネラルが必要とされるから。そういうものを食べて、体調をととのえておきなさい、という意味なんですね。

春眠暁を覚えず、というのはミネラルが不足しているため、身体が活動的になれないから。布団のあたたかさとは関係がないんだそうです。この時期に食事から摂取するミネラルが不足すると、人体は骨を溶かしてまでミネラル(とくにカルシウム)を取り出そうとする。そういう活動が密かにおこなわれているときは、寝ているほうが身体に負担がかからない。だから目が覚めにくくなる、というのがほんとうのところで、とくに女性はこれを放っておくと骨粗鬆症になりやすくなるそうです。

庭先や空き地で抜いても抜いても出てくる雑草。じつはこれに効力があったのです。四国在住の野口さんの大叔母さんが大腿骨を折ったとき、医師から「骨粗鬆症は治らないから、これからは車椅子の生活になる」といわれたそうです。が、八十という年齢にもかかわらず、お元気だった大叔母さんはそれに反発。野口さんの薦めもあって庭先の野草、ハコベやヨモギを煎じて毎日飲んだそうです。その結果、骨折は治癒。ふたたび野良仕事をはじめましたが、そそっかしいところがあるんでしょうか。一年後にまた二階の階段から落ちたそうですが、今度はどこにも支障がなく、どんなもんだい、とわざわざ電話をしてきたといいます。

それぐらい野草はすごいのですが、アクや苦みがあるため食べにくいのもたしか。でも、そのアクや苦みがミネラルの正体で、この時期フキノトウが妙においしく感じられるのも、身体がそれを求めているから・・・。タンポポなど、どこにでも生えていますが、強壮、整腸、解熱、浄血を促すほか、利胆剤として消化不良、胃炎、胃カタル、胃潰瘍、腸炎、食中毒、便秘、痔、肝炎などのほか、寝汗、喘息、更年期障害、貧血症と枚挙にいとまがないほど薬効があり、わたしは今の時期、てんぷらやサラダにしますが、季節外れにはタンポポコーヒーを常用するという手もあります。西洋タンポポ、日本タンポポ、種類はいろいろありますが、効力は変わりません。

ナズナ(ペンペン草)は田ゼリ同様、アクが少なく食べやすいので、塩ひとつまみを入れて湯がき、細かくきざんだものをちりめんじゃこといっしょに炒め、混ぜご飯やふりかけにすると美味。わが家では湯がいてきざんだものを餃子に入れたりもしています。小さいうちに取れば全部たべられますが、ちょっとわかりにくいので、花が咲いてから採るときは上部2センチぐらいを集めてください。これは眼底出血、肺出血のほか、高血圧にも効果的。

アザミにも止血効果があります。わたしは花びらをサラダに散らすのが好きですが、若葉や茎もおいしいもの。トゲがあっても、さっと湯通しすれば扱いやすく、これはどんな野菜よりもおいしいぐらい。

さまざまな効能はともかく、骨まで溶かされたのではたいへんですから、せっせとミネラルを補給しておきましょう。今回は身近な野草を食べてみよう、前編です。後編は次週に続きますので、今のうちに近所を物色しておいてくださいね。

今週の野菜とレシピ

お待たせしました。いよいよミネラルの宝庫・田ゼリの登場です。これは根も地上部も食べられますが、その分かれ目の中間部が大きい株になると食べづらいので落とすか、包丁を入れるかしてください。かき揚げがいちばんですが、これをからっと揚げるコツはできるだけ衣を少なくすること。かろうじて繋がるような状態で揚げると、サクサク、パリパリした食感に仕上がります。高めの温度で揚げてくださいね。

紫色の茎にかわいい花をつけた紅菜苔、これは量がすくないのでお吸いものの彩りや、さっと湯がいたものを料理のつけあわせにお使いください。田ゼリを揚げるとき、いっしょにかき揚げにしてもおいしいですよ。

椎茸もてんぷらにすると、香りがよくて美味。

玉葱は今回が最終便。次回からは野口さんの新玉葱になりますが、これも例年よりいくらか早めになりそうです。