田圃の除草

2007年6月第2週

今週の野菜セット

左上から時計回り

あいかわらず初夏の陽気に冷気が混じり、天候は不安定。集中豪雨の被害が出ているところもあるようですが、このあたりでもそういうときには用水路の流れが急になり、ときに事故が発生します。なみなみと水をたたえた急流は、大人なら軽く跨げる広さですが、柵がないのでけっこう危険。

小ぶりのヘビが流されるのを見たことがありますが、どうしてやることもできませんでした。もしそれが人間の子供でも、わたしひとりではどうしようもなかったと思います。田舎の子供の通学路にもけっこう危険は潜んでいて、見た目ほど牧歌的ではなさそうです。

今年に入って、相次いでお父さんを亡くした福田さんと青山さん。かれらの農作業も牧歌的どころか、熾烈をきわめているようです。というのはこの時期、田圃の周囲の草が伸びるだけでなく、田圃の中にも草の芽が出てきます。去年まではお父さんたちが助けてくれたので、なんとかなっていたそうですが、今年はそれがなくなったので、草に追われているのです。

まったく、うちのジイチャンはよけいなことばかりして・・・というのがふたりの口癖みたいになっていましたが、いなくなってはじめて、ありがたみがわかったみたい。人手がなくなったのを契機に、除草剤を使わざるを得なくなった農家というのも、聞けばけっこういるようですから、ふたりにはなにがなんでもがんばってもらわなくっちゃね。

米の有機栽培というのは、けっしてむずかしいものではないのですが、この除草という作業が農家を尻込みさせる一因になっていて、ただでさえ歩きにくい泥の中を、除草機という小型の一輪車のようなものを押して歩く。お天気のいい日には、田圃の水が日光を反射するので、上と下の両面から灼かれることになります。また、その面積が半端じゃないときていますからね。

有機米のおいしさは、肥料のちがいとか、無農薬だからとか、そんなところにあるのではなく、農家の汗が田圃の中にしたたり落ちる。その塩分が作るのだ、とは青山さんの言。ほんとうにその通りかもしれません。

こんな話を聞くと、除草剤を撒くというお手軽路線に、農家がついつい行ってしまうのもしかたがない、と思ってしまいます。が、先週も書いたように、あの化学工場の廃液のような不快臭がたちこめる田圃のそばを一度でも歩いたら、そのおぞましさに身の毛がよだつはず。そんな農家も、自家用の田圃だけは草取りを厭わないようで、そういう田圃には鳥が降り立ち、日暮れにはカエルが鳴き出します。

自家用の田圃には薬を撒かず、だれの口に入るかわからないものにはそれを撒く。ひどい、と思われるでしょう。冷酷なばかりのエゴイズムです。しかし、だれもそれを責めることはできません。身を粉にして働いて米を作っても、輸入米がうまくて安いといえば、消費者はそれに走る。それでなくても第一次産業はつねに経済発展の犠牲にされてきました。車を輸出するためには、農産物を大量に輸入しなければなりません。貿易収支のバランスの問題だけでなく、車を輸送した船が空のまま戻ってきたのでは輸送コストが高くつきすぎます。なにがしか運ばなければなりませんが、その荷物も産業界にマイナスになりにくいもの。となると農産物。国産車を運んだ船に、外車を満載して帰ってきたのでは、なんにもなりませんからね。

そうして農家に課されるようになった減反政策。補助金が出ているので、農家が保護されているように見えますが、実は潰されているのです。そんな中で、農家に消費者の健康を考えろ、といったところで無理な話で、消費者だって、好き勝手な生活をしながら、農家にだけ重労働に耐えろ、とはいえないはずです。

農家を支えるみなさんのような会員がいるからこそ、福田さんも青山さんも除草剤の誘惑に負けず、泥まみれになることができる。おたがいの顔が見えるというのが大きいんですね。顔が見えないところでは、農家の側にも消費者の側にも不信感しか育ちません。双方の信頼関係があってはじめて、安全でおいしいものができるのですから、そこをなんとかしないかぎり、田園地帯が健全な環境になることはないのかもしれません。

今週の野菜とレシピ

福田さんのトマトが入りました。このセットに入る野菜は無農薬が原則ですが、トマトのみ、数年前から苗の時期に消毒散布しています。申しわけありませんが、そうしないことにはビニールハウスという不自然な状況下、まともなトマトができないそうです。

では露地栽培にすればいいじゃないか、という意見が出てきそうですが、トマトはアンデスの高地が原産。多湿が苦手ですが、とくに雨には弱く、直接雨にふれると病気になってしまうのです。家庭菜園でも、トマトには雨除けのビニールがかけられ、雨上がりには農薬散布というのが一般的になっているぐらいで、わたしも何度か挑戦したことがありますが、屋根なしでも立派な実がついた、と喜んでいるとある日突然、その実が青いまま、ぽとりと落ちてしまうのです。割ってみると中は灰色。今はあきらめて、福田さんのトマトが出るのを毎年、首を長くして待っているしだいです。

好子さんのスナップえんどうは数量がないため、足りないところはさやインゲンで補わせていただきました。えんどうやインゲンは湯がいてサラダにすると、ドレッシングがからみにくいものですが、はじめに油をからめておいて、後から酢、塩、胡椒などで和えるような感じにすると、味がしみやすく、おいしくなります。

おかのりはおひたしでは感じられませんが、かき揚げにすると海苔のような香りがします。また、茎の部分にはぬめりがあるので、この部分だけ湯がいてきざみ、蕎麦つゆに入れるととろろ蕎麦のような食感。納豆に混ぜてもイケます。

今週はニンジンが入る予定でしたが、なかなか地温が上がらないせいか、生育がよくありません。今月末ぐらいには出てきますので、今すこしお待ちください。