ashes and snow

2007年6月第4週

今週の野菜セット

左上から時計回り

梅雨入りしたと思ったら、雨が降り出す前から「梅雨の中休み」とかで晴天が続いていました。ようやく雨が降り出しましたが、一日限りできょうは晴天。雨が降るとうっとうしいし、野菜は濡れるし、あまりいいことはないのですが、それでもこの時期の降雨量は、稲や夏野菜の生育を左右します。とくに今年は雪がなかったので、早くから水不足が心配されていました。このあたりの河川には、県北や福島の雪解け水が流れこむのですが、春先から水位は低いまま。梅雨に期待が寄せられていましたが、曇りがちでも、なかなか雨にはなってくれないようです。

タケノコの出がわるかったので、今年は冷夏になるかもしれない、なんて話し合っていましたが、逆に気温が上がり、その分旱魃が懸念されるようになるのかもしれません。

人の営みなどというのは、ほんとうに微妙なバランスの上に成り立っているんだな、とつくづく思います。やれ暑いの寒いの、雨だ、雪だと文句ばかりいっていますが、この感謝知らずの身勝手さが自分でもイヤになるぐらい。じゃあ、おまえはなにをやっているんだ、といえば水も電気も好きなだけ使って、きわめて快適な生活を送っているんですけどね。

先日、ひさびさに上京する機会がありました。どうしても見たい写真展があったので、慌ただしく出かけていって、そそくさと帰ってきたのですが、車窓から見える田園風景が住宅街になり、やがてそれが高層ビルになってくるにつれ、だんだん気が重くなってきます。小さな河川は暗渠にされ、湾岸は埋め立てられてそこに大きな建造物や道路が並ぶ。テレビで見ている分にはそれほどでもないのですが、実際に目の当たりにすると、ああ、この文明はいつか滅びるぞ、という気分が濃厚になってくるんですね。

栃木県にいてもそういう気分になることはあるんです。ここは都会以上に道路が整備されていて、しかもたいして交通量がないようなところまで新しい自動車道を作っていますから、無意味に広い道路が多く、それが廃墟を連想させるからです。他県から遊びにくる人はみんな、道が広すぎる、ぜいたくすぎるといいますが、実際、巨費を投じて田畑を潰しているのですから、ぜいたくというより愚行。廃墟と化した都会にはビルが残り、ここには不毛になった大地を蛇行する、やたらと広い道路だけが残るのかもしれません。

それでも電車の中で聞こえてくるのは、女が三人寄ればファッションか海外旅行、男同士は車かゴルフと能天気な話題ばかり・・・。架線事故の影響で、通常の倍ちかい時間、そんな会話と風景につきあわされたので、疲れが出た分、よけいそんな気分になっていたのかもしれません。

でも、グレゴリー・コルベールの「ashes and snow」という写真展は、期待通りでしたよ。テーマは人と野生動物の共生ですが、ドキュメンタリータッチのものではなく、多分に作為的な写真と映像で、にもかかわらずそれが胸を打つのは、詩的なうつくしさもさることながら、それが失われたものへのオマージュ、また静謐な祈りにもなっているからでしょう。

それは、人がかつて持っていたのに失ってしまった感性とも取れますし、心の奥底で願いながら、ついに手に入れることができなかったものへの憧れ。もしくはそういうものを滅ぼしてしまい、今も滅ぼしつつある悔恨とも取れますが、灰と雪というタイトルが示すように、そこはかとない再生への希望がそこにはあって、それがこの展示の原動力になっているように思われました。

骨は灰となり、やがてそれが雪となって降りしきる・・・。そうだ、滅びのあとには再生があったんだ、という仄かな希望に勇気づけられてきましたが、帰りの終電も事故による遅れのせいか、朝のラッシュ並みの混雑で、しかものろのろ運転。わたしたちの便利な生活もまた、好条件の連続という、奇跡みたいな幸運の上に成り立っているのを実感したしだいです。

今週の野菜とレシピ

茄子トマトピーマンズッキーニと夏野菜が充実してきました。そしてひさびさにニンジンが入りますが、雨が少なかったせいか、これはまだ小ぶり。そのかわり青々とした葉っぱが魅力的です。

この葉っぱを利用して、常備菜を作りませんか?用意するものはちりめんじゃこと胡麻。ニンジンの葉を細かく切りますが、茎のほうはとくに細かくしておきます。熱したフライパンに油を入れ、ちりめんじゃこをかりっとするぐらいまで炒め、次いで茎の部分、最後に葉っぱを全部入れて火を通したら、一味唐辛子少々と醤油で味つけ。ちりめんじゃこに塩分がありますから、醤油の量はひかえめがいいと思います。仕上げに煎り胡麻をたっぷり加えて・・・。

梅雨どきのおべんとうはわるくなりやすいので、こういうものがあると便利ですし、ニンジン本体よりも栄養があります。ミネラルも豊富ですしね。今年の夏は暑くなりそうですから、バテないよう、今から体力をつけておいてくださいね。