幻の自由主義経済

2007年11月第2週

今週の野菜セット

左上から時計回り

今年は秋になっても気温が高く、畑の虫や草もいつまでも元気いっぱい。農家にとっては頭の痛いところでしたが、さすがに今月に入ってからは、朝夕の冷えこみで勢いがなくなりました。

寒がりのわたしは早くからストーブ用の薪を準備。勾配の急な屋根に上って、煙突掃除も済ませておいたのですが、ストーブの出番はまだありません。例年ならとっくにお世話になっているはずなのに、朝夕も炬燵だけで間に合ってしまうのです。薪の節約になるからいいようなものの、年々霜が降りるのが遅くなってゆく・・・。薪の節約なんて、暢気なことをいってる場合ではないのかもしれません。

ガソリンの値が上がり続けて、ここへ来てまた一気に高騰。経済界には大きな打撃でしょうが、車がなければどこへも行けない田舎では、個人の負担も大きくなります。農業への影響も大。耕耘機もコンバインもガソリンなしには動きませんからね。とくに真冬にトマトやきゅうりを作っている農家などは、重油の値上がりで採算が取れなくなったといいます。

このガソリン価格というのも奇妙なもので、かならずしも需要が供給を上回ったから高くなる、というのではなさそうです。陰には姿の見えない投資家どものマネーゲームがあり、そんな黒い手に世界が動かされていると思うとイヤになってきますが、それでもかつてのようにガソリンが安くて使い放題。どこもかしこも景気がよくて、バブルがどんどん膨らんでゆく、みたいな状況よりは健全ではないかと思うのです。

どの国のトップも経済政策、景気の上昇をお題目のようにとなえますが、そんなにどこもかしこも経済成長が右肩上がりになるわけがなく、どこまでもそれを続けようと思ったら、弱小国に侵略、搾取するしか手はありません。資本主義はネズミ講だといった作家がいますけど、ネズミ講というのは、人口が倍増してゆかないかぎり利潤が得られないシステムです。小規模なネズミ講なら、トップが行方をくらまして立ち消えになることもできますが、国家主導のそれとなるとそれができない。他国を巻きこむことになるのですね。

ネズミ講が機能するのは、したがって初期の段階だけ。行き詰まるのはわかっているのですから、賢明な為政者なら、それを収束する手段を考えなければなりません。それができてはじめて先進国と呼べるわけで、ネズミ講にしがみついたまま他国に爆弾を落としたり、所得の格差を広げることで貧民層の裾野を広げ、ネズミ講の初期段階を無理矢理作ろうとしているどこかの国など、劣悪な後進国以外のなにものでもなさそうです。

かつてソ連が崩壊し、東欧が次々と自由経済に呑まれていったとき、テレビの画面には嬉々とした人々が映し出されていましたが、あの人たちは今もあんな笑顔でいるでしょうか。当時は共産主義の崩壊イコール、自由主義経済の勝利みたいにいわれていましたが、一方の制度が崩壊すれば、もう一方の制度も崩壊を余儀なくされるのが世の常です。末期的様相を呈しはじめた資本主義経済が、競争とは無縁の世界にいた人たちにどんな牙を向けるのか、漠とした不安をおぼえたものでしたが・・・。

この世界には、ついに実現したことのない制度がふたつあります。それはプロレタリア独裁と民主主義で、ロシアでも中国でも皇帝は失脚しましたが、長い歴史に裏打ちされた官僚政治はそのまま残りましたから、トップの首がすげ替えられただけ。プロレタリアは独裁どころか、意思表示すらできない状況に置かれていました。

民主主義という体制もまた、選挙制度があるにもかかわらず、肝心なところは官僚に押さえられていますから、絵に描いた餅のようなところがあって、なかなか大衆の思惑通りにはなりません。どっちもどっち。はっきり官僚主義といってしまえば、これはいかん、それに替わる制度をなんとかしなくっちゃ、ということにもなるのでしょうが、民主主義なんて聞こえのいい名称があるかぎり、新しい制度は誕生しにくい。

ネズミ講の資本主義も、自由主義経済なんて呼ばれているうちはダメ。当分泥沼から這い出せそうもありませんが、そうこうするうちに温暖化は加速する一方。せめて世の中が不景気なうちは、それを自然のブレーキだと思うことにして、慌てず騒がず、つつましく暮らしたいものです。

今週の野菜とレシピ

今週も大根は細めなので、おでんはちょっと無理。こういう大根は乱切りにして、ニンジンといっしょに炒め煮にするのが田舎風。それに蒟蒻や薩摩揚げを加えて筑前煮風にしてもおいしいですよ。

椎茸は汁ものに入れると、少量でも香りとだしが出るので、小松菜などと組み合わせてお吸いものに・・・。また、すぐに使わない分はスライスして冷凍しておくと、使いやすいだけでなく、香りが濃厚になって出しもよく出ます。そろそろ都会でも、夕刻には冷たい風が吹いてくるはず。そういうときはあたたかい鍋ものがいちばんですが、とくにおすすめしたいのがみぞれ鍋。かぶを摺りおろして出しを張った鍋に入れ、みりんと醤油で調味。そこに揚げ豆腐、葱、春菊などを入れてさっと加熱するだけですが、真冬でも汗ばむぐらい身体が芯からあたたまります。風邪のひきはじめにはこれを食べて、早めに就寝。かぶの代わりに大根おろしを使ってもけっこうです。

来週は北海道のじゃが芋が入ります。また、予定表にはサニーレタスとありますが、畑ではレタスと白菜がおなじペースで大きくなっているところ。どちらが先になるか、農家にもちょっと予測がつかないそうですが、時節柄、白菜のほうが喜ばれるかもしれませんね。