子供の反抗期と栄養周期説

2007年5月第4週

今週の野菜セット

左上から時計回り

長かった菜種梅雨が明けて、ようやく五月晴れになったと思ったら、また雨天に逆もどり。今度は梅雨のはしりでしょうか。今年は晴天が長続きしないのかもしれません。

おかげで思ったほど気温が上がらず、過ごしやすい気候ではあるのですが、夏野菜というのは長雨に弱いので、病気のほうがちょっと心配。梅雨のようなストレスの多いとき、農家はどうするかというと、カルシウムを大量に投与するんですね。卵の殻や牡蠣殻といった天然のカルシウムを、畑の土ばかりでなく、植物本体にもかけて、ストレスを感じにくくするんだそうです。

ストレスがかかるとカルシウムをはじめ、ミネラルの消費量が増えるのは植物も人間もおなじで、栄養周期農法というのはそういう点に着目しています。植物も人間も子供のうちは栄養成長期といって、ひたすら大きくなるのを目指しますが、ある程度身体ができあがると、今度は生殖成長期に移行します。このときにミネラルが不足すると、人間なら精神が不安定になって理由もなく苛立つようになり、反抗期というのがそれ。植物もおなじようにひねくれてしまいます。

その時期にカルシウムを投与すると、野菜が甘みを増すのですが、病害虫にも強くなるというんですね。それを人間界に応用した報告があります。高校生のクラス全体にカルシウム剤を飲ませた教室と、飲ませなかった教室を比較したところ、授業中の雑音に大きなちがいがあったそうで、校外での生活態度にもあてはまるのではないか。もっとも、それは調査がむずかしいので、憶測でしかないのですが、ちがいがあると考えたほうが自然だと思います。

子供にせよ、植物にせよ、かれらが受けているストレスは半世紀前とくらべても、数倍にふくれあがっているにちがいありません。日本にもそういう比較研究をしている人がいるんでしょうが、発表されたものを見る機会がないので、これはイギリスの例。産業革命時代には、労働に駆り出されていた子供も多く、今の小学生ぐらいの子供が十時間以上、工場で働かされていたといいます。食べものだって、今とくらべたら格段に貧しいわけですから、子供にとっては暗黒時代。

ところがその生活をつぶさに比較してゆくと、今の恵まれた子供たちより、当時の貧しい階級の子供のほうが、はるかに自由を謳歌できたのではないか、という思いもかけない結論に達したのですね。労働時間が長かったにもかかわらず、子供同士で過ごしている時間も意外に長く、その関係は親密で、秘密結社のようなのまであったそうです。

学校生活というのは、否応なく競争原理に支配されるところがありますが、労働の現場では協力が基本になりますからね。食事にしたって、豊かになったとはいえ、ジャンクフードの占める割合だって増えているのですから、どちらがどうとはいえません。カロリーはともかく、ミネラルの摂取量に関しては、現代のほうが乏しくなっているのではないでしょうか。

生活が豊かになると、食べものを盗む子供はいなくなりますが、逆に凶悪な犯罪が増えるのは、このミネラル不足と大いに関係がありそうです。それともうひとつ、調理に要する時間が短くなればなるほど、食事の質は低下するもの。ここでは親の姿勢が問われているようです。

でも、ご心配なく。野菜セットを送っている家庭では、まちがっても子供が親の身体を切断したり、近所の子供を傷つけたりするようなことは起こりそうもないからです。うちの子供たちにいたっては、反抗期もなかったので、もしや脳に欠陥でもあるのでは、と心配したぐらいですが、栄養周期説という農法を知ってひと安心。

そういえば農家が、子供が反抗期で手に負えなくて、というのも聞いたことがありません。うちは子供の布団の中に、牡蠣殻たっぷり撒いておいたからね、という笑い話ができたぐらい・・・。

でも、実際にカルシウム剤の投与となると考えもので、あまりにも場当たり的な気がします。やはり子供のころの栄養成長期から、青菜をたっぷり与えておくことがたいせつで、青菜というのは調理がめんどうなものですが、青菜のカリウムが体内でカルシウムに変換されるのです。そうやって手間暇かけて調理をしていると、母親もまた更年期という大きなストレスに出会っても、障害に悩まされずにすむんですね。

家族というのはありがたいものです。たまに家族が留守になって、ひとりになるとどうしても食事がいいかげんになりがちで、家族の健康を維持していたつもりが、じつは家族から健康をもらっていたというのがよくわかる。台所に立つ時間が少なくなれば、女性が解放されるというのはウソで、自由になった分もっと憂鬱なもの、精神的なストレスや体調不良とおつきあいすることになるというわけです。

食費を浮かせば、その数倍の料金を医者に支払うことになりますしね。医者に金を払うぐらいなら、八百屋に払えって、昔の人はいいことをいったものです。

今週の野菜とレシピ

好子さんのソラマメが登場しました。去年、せっかく種を蒔きながら、収穫に至らなかったソラマメですが、今年は春先の雨のおかげでアブラムシもつかず、いい感じにふくらんできたようです。

サヤから出し、爪の黒い部分を取ってから塩茹でしてください。ひさびさの初夏の香り。数年ぶりにセットに入るので、送る側も嬉々として鼻歌まじり。たくさんではありませんが、ご家族で分かち合ってくださいね。

サニーレタスは露地ものです。そのため、先月お送りしたものより葉が厚めで、味もしっかりしています。きゅうりといっしょにサラダでどうぞ。

京菜は途中でなくなるかもしれませんので、そのときは来週出荷予定のサラダほうれん草が入ります。