芝焼き

2007年2月第2週

今週の野菜セット

左上から時計回り

梅のつぼみがふくらんで、今にも咲きだしそう。厳冬だった去年より二ヶ月ちかく早い開花で、桜も辛夷もこの調子では早くなりそうです。

例年ならうれしい春の訪れも、今年はあんまり早すぎて、逆に気が重くなってしまいます。今年はいったい何頭ぐらい、シロクマが命を落とすのか。種の存続が危ぶまれそうな状況ですが、これは北極圏だけの問題ではありません。シロクマが死んだ数に比例して、南では環境難民が増加するのです。

あたたかくなると虫も増えます。ハスモヨトウをはじめ、これまで日本では生息できなかった昆虫が、輸入野菜といっしょに上陸。いくらでも繁殖できる状況になってくるんですね。病原菌も微少な虫みたいなものですから、どんどん力をつけてくる。ですから農家にとっても、早すぎる春というのは頭の痛い問題なのですね。

この時期、益子では毎年芝焼きが行われます。芝焼きというのは文字通り、田圃や畑の土手をはじめ、道路わきの草地をきれいに焼きはらう行事で、農家だけでなく全町民が参加することになっています。

目的は街の美観もありますが、草むらで越冬しているカメムシなど、害虫と称される昆虫と雑草の駆除。町中がもうもうと立ちこめる白い煙におおわれ、枯れ草の燃える香りに包まれます。たまたま益子を訪れた車など、しばしば立ち往生させられますが、町民はみんなこれに参加していますから、熊手を片手に気の毒なドライバーを見送ることになります。

わたしの班は以前、木製の道路標識を燃やしてしまったことがありますが、住居や納屋にまで火が移ってしまうこともあります。そのためいっせいに火を放つのではなく、地域ごとに消防車の巡回を待つことになっているのですが、なかなかそれが守られない。そんなわけで消防車まで、煙に行く手を阻まれながらやって来ることになります。

香りのいい煙に加えて、雑草の種がパチパチはじける音。わたしはこの行事がきらいではないのですが、それ以外にやることがあるのでけっこう忙しいんです。火が勢いをつける前に、茅の根元などに産みつけられたカマキリの卵を救出しなければなりませんからね。それは持ち帰って、物置の稲ワラの中に入れておきます。春になるとそれがいっせいに孵化。物置がカマキリの子供たちでいっぱいになり、やがて戸外へ旅立ってゆく・・・。そんな光景を思い浮かべながらの作業です。

カマキリの卵は短時間、火に包まれたぐらいではダメにならない、という意見もありますが、やっぱりダメージは受けるでしょうし、茅の茎が燃えてしまえば地に落ちる。そうなれば雨のとき、水浸しになってしまいます。多少の耐水性はあっても、やっぱり卵には快適な環境が必要でしょうからね。稲ワラの中にはすでに産みつけられている卵もあって、それはもしかしたら去年、こうやって救出されたカマキリのものかもしれません。

いずれにせよ、そうやって納屋から旅立ったカマキリが、この夏もせっせと虫の駆除をしてくれる。農家にとっても心強い味方ですから、いたずらに害虫駆除に精を出すより、農場周辺の生態系を崩さない努力や工夫がほしいものです。自然を敵にまわしたって、かなうわけがないのですからね。

芝焼きにはおまけがあって、翌朝の犬の散歩には大きな袋が必要になります。それまで枯れ草に紛れていた空き缶やペットボトルが顔を出しているからで、黒こげになった缶、ぐにゃぐにゃになったペットボトルを回収するためです。

いちばん多いのがビールの空き缶ですから、子供がそこらにゴミを捨てても責めることはできません。ウイスキーの瓶まで落ちていることがあるぐらい。みんなドライバーが落としていったもので、ここまで来ればオマワリはいない、という安心感があるのか、帰宅してグイッとやるのが待ちきれないのかわかりませんけど、ゴミといっしょに「運」まで捨てる人の多いのには驚かされます。両手にずっしり荷物を提げて帰宅すると、朝ご飯のおいしいこと。この満足感と幸福感、ポイ捨て飲酒ドライバーに教えてあげたいぐらいなんですけどね。

今週の野菜とレシピ

今週の切り干し大根。これは好子さんのお母さんの手になるもので、彼女がやりかけて断念したものを、根気よく続けてくれたのです。前回、野菜たっぷりセットに入った好子さんのものとは形態はちがいますが、おなじ大根を使っています。

ほんの少しずつですが、これでも大きな大根1本分。ぬるま湯にひたしておくと増量します。にんじん、油揚げなどといっしょに出しで煮て、味醂、もしくは酒と砂糖、醤油で味をつけ、しあがりに胡麻油を少量たらします。この胡麻油をたらすところがミソ。これでぐっとおいしくなります。お好みで七味とうがらしをふってください。

福田さんのハウスからはサニーレタス。じつは好子さんも露地にビニールトンネルを張り、レタスを作っていましたが、この時期にしては気温が高すぎてダメになりました。気温の変動にも病害虫にも強いサニーレタスしか、こんなときには作れないのかもしれませんね。ひさびさにサラダでどうぞ。

からし菜はさっと熱湯をかけると、特有の辛みが出てきます。これは一夜漬けで・・・。

来週はいよいよ春大根が登場しそうです。サニーレタスもいいけれど、歯ごたえのいい大根サラダをお楽しみに・・・。