虎杖浜の異変

2007年9月第2週

今週の野菜セット

左上から時計回り

台風一過の青空。といいたいところですが、今のところ曇り空。雲の切れ間から青いものは見えるものの、抜けるような青空とはいえず、あれだけの暴風雨が通過したにもかかわらず、浄化しきれないものがあるのかもしれませんね。

台風は大掃除みたいなものだといいますが、通り過ぎた後は掃除どころか、やんちゃ盛りがおもちゃ箱でもひっくり返して行ったようなありさまで、山の中は倒木だらけ。道ばたでも、雨と風に落とされた枝や葉が散乱しています。ま、掃除というより、洗礼みたいなものでしょうか。さいわい河川の氾濫もなかったようで、わが家の物置もトタンを数枚失っただけですみました。

畑の被害もそれほどではなかったようです。ちょうど夏野菜が終わりを迎えるころだったので、こちらのほうは文字通り大掃除だったようで、わが家のズッキーニもかたづけやすいように寸断されました。ただ、幸子さんのピーマンは背丈が低いので、それごど影響を受けなかったのですが、茄子が風にもまれたため、表皮に傷がついてしまったようです。

いちばん気がかりだったのが田圃ですが、こちらのほうも心配なさそう。コシヒカリというのは腰が弱く、台風が来ても来なくても倒れてしまい、そこに雨が降るとモミが発芽してダメになるケースが多いのですが、そこは筋金入りの有機農法。初期の肥料をすくなめにして徒長を防ぎ、稲穂に実が入り、重たくなってきてもちゃんと持ちこたえるようにしてあるので、倒れても数日晴天が続くと立ち上がってくれるそうです。

はやいところでは、もう稲刈りがはじまっているようですが、こちらは今月下旬あたり。例年並みの収穫が見込めそうです。

あまりよくないニュースもあります。今のところ、会員のごく一部の方にしか関係なくても、いずれ会員のみならず、すべての人にかかわる問題。わたしたちが推奨品にしている出し昆布の話です。

去年、不作に見舞われて一年間お休みしていましたが、今年は去年より状況が悪化。もう虎杖浜では昆布は採れなくなってしまうのかもしれない、という話を聞いて、ちょっと怖くなったのでした。虎杖とはイタドリのことで、スカンポとも呼ばれますが、これが群生しているところでは良質の昆布が採れる、というのが定説でした。その虎杖浜から昆布が姿を消してしまう・・・。もっと北のほう、羅臼や知床ではまだ異変は起こっていないそうですが、それも時間の問題ではないか、と思ったからです。海洋資源の枯渇がしばしば話題に上り、イワシが高級魚になったり、ちりめんじゃこが年々値を上げてゆくのを見ていても、海から遠く離れたところに住んでいると、なかなか実感がともなわず、遠い未来の話のような印象しかなかったのですが、虎杖浜の話を聞いたとたん、ひたひたと足元に波が打ち寄せてきて、その波が足下の砂をさらって行ってしまうような心許なさ。そうか、もうここまで来ていたのか、というショックなのでした。

水面下で起こっていることは、可視的な地上の自然破壊よりすさまじいのかもしれません。広大に見える海ですが、その浄化能力も限界に達してきたのでしょうか。最近、しばしば耳にするオニヒトデや越前クラゲの大発生は、手に負いかねるとはいえ目に見えるからいいものの、肉眼では見えない微生物の世界でも異変が起こっているはず。そちらのほうが事は重大かもしれません。生きものの揺りかごだった海が、生きものを傷つけ、死に至らしめるものになりかねないからです。

海がダメでも陸があるさ、と思うかもしれませんが、海がダメになれば陸も息が詰まってきます。地球という星の薄い表皮のような大気圏の中のことですから、あちらがダメでこちらが健在なんてことはありえませんものね。日本人の食卓から昆布が消えた、魚が消えた、だけではすまされない問題が、わたしたちの足元まで迫ってきている。そんなことを昆布の不漁続きは語っているようでした。

今週の野菜とレシピ

秋茄子が入りますが、本文でもお話ししたように、台風の風にもまれたため、表皮に傷がついているかもしれません。カメの甲羅のような模様が入っていますが、表皮を落とすと中はきれいです。皮ごと焼いてしまえば、多少の傷は関係ないので、今週は焼き茄子がおすすめ。

里芋は初物なので、500グラムとひかえめですが、煮っころがしに・・・。これが出てくると秋ですね。長葱も出てきましたので、味噌汁にして、葱といっしょに味わうという手もあります。

夏のきゅうりは福田さんが作っていましたが、秋になって好子さんにバトンタッチ。こちらは昔ながらのきゅうりですから、形のわるいものもあるかもしれません。でも、なつかしい味がするはずです。

モロヘイアピーマンは今週あたりが最終便。ピーマンは虫が入っているもの、また今度の台風で病気が入ってしまったものがあるようです。収穫時ににゅうねんなチェックをしていますが、外観からはなかなかわからないので、もしかしたら途中で傷んでしまうことがあるかもしれません。あらかじめお詫びとしてりんごを入れておきますので、もしもの節はご容赦ください。

玉葱もこれが最後で、次は北海道産のものが入ってからになりそうです。