冬の到来

2007年12月第1週

今週の野菜セット

左上から時計回り

寒くなりました。

そういうことをいうときは、身をちぢめながら、まるで災難みたいな口調になるものですが、今やそれが恩恵のようにすら思われるようになってきました。寒さが苦手であろうとなかろうと、あたりまえに冬がきてくれたことがうれしいといった、奇妙といえば奇妙な感覚です。

あたりまえに冬がきて、あたりまえに春を待つ。そういう人の営みがあたりまえに続いてきたのが、なんだか危うくなってきているものだから、わたしたちもそんな風に感じるようになっているのでしょうね。

冬を楽しむ、といったら雪国の人に叱られそうですが、冬の中のささやかな暖を見つける楽しみは失いたくないものです。冬の日だまりのありがたみがなくなってしまったら、太陽はまるで悪者みたいになって、その絶大な恩恵が忘れられてしまいかねませんものね。それは太陽のせいではなく、地球の住人の責任なのですが、太陽黒点が増え、そのエネルギーが増大していることも事実だそうです。

太陽系宇宙の中心におわします巨大な星が、ほくろのような黒点を増やしているのはどういうことなのか。知るべくもありませんが、そのほくろが皮膚癌になど進行しないよう祈るしか、わたしたちのような小さな生きものにはできません。が、もっと小さな生きものの多くがすでに絶え、今もなお加速度的に減り続けていることを考えると、明日はわが身という漠然とした不安がどうしてもつきまといます。

そういうドラマはわたしたちの目には見えませんが、見えないからわからない。わからないから、相も変わらず経済発展が重視され、わたしたちの贅沢三昧も変わらない。でも、わたしたちも生きものですから、肌のどこかにひんやりとした感触があるはずで、そんな意識下の小さな恐怖が冬の寒さを逆にありがたがるという、ひと昔前には考えられなかったような感覚につながっているのかもしれません。

ともあれ、今年もようやく冬の兆しが見えてきました。まずはひと安心といったところでしょうか。

でもやっぱり寒いのはイヤだと、身体は拒否していますけどね。朝、布団を離れるのがつらいし、職場では野菜がいちばん大事なので、鮮度のことを考えたら暖房は使えない。野菜を箱詰めしているうちに手指がかじかむようになってきました。足も冷えます。

一方、土間に保管しているイモ類などは凍ってしまうと使いものになりませんから、何重にも毛布をかぶっているという状態。わたしたちもイモのように着ぶくれながら仕事をしていますが、好子さんひとり、夏とあまり変わらない格好をしています。あの人、夏でもけっして半袖姿にならないかわり、真冬でもセーターなんか着たことがないのです。夏とおなじTシャツの上に、ジャンパーを一枚はおっているだけ。

冬になると自然に体重が増えるから、それが下着がわりになるのだと本人はいうのですが、わたしたちは彼女のことをバケモノと呼んでいます。冬、好子さんの手に触れると湯たんぽみたいにあたたかく、夏は逆にひんやりしていますから、身体の中にエアコンを内蔵しているようで、バケモノと呼んではいるけれど、じつはうらやましい。尊敬しているといっても過言ではありません。

そんな好子さんが、この夏は過労で膝が痛くなったといいます。そんなことはおくびにも出さないので、わたしたちも今になって知ったのですが、バケモノにも加齢はあるということで、これは少々ショックでした。息子さん夫婦が後を継いでいるのなら心配はないのですが、若者は農業みたいなマイナーな仕事にはつきたがりませんからね。益子GEFを支えている彼女の野菜が一代かぎりで終わってしまうのかと思うと、さらに益子GEFそのものがわたしたちの加齢とともに消滅することになるのかと思うと、暗澹とした気分に陥ってしまいました。

わたしたちが暗くなってしまったら、野菜も元気をなくしてしまいますから、好子さん夫婦をかこんで、あと十年はがんばろうね、と声をかけあったのですが、十年後にはまた、あと五年がんばろうね、と気勢を上げて、全員がバケモノみたいになりたいものです。

今週の野菜とレシピ

今週は里芋が入りました。ごぼうや大根、それに先週の残りのニンジンを加えて田舎風の煮物はどうでしょう。

大ぶりの鍋に油をひいて、ごぼう、ニンジンの順に炒め、乱切りにした大根も加えて油をからめます。ひたひたになるぐらい出し汁を入れたら里芋を入れ、酒と醤油、お好みで砂糖を少々加えて煮こみます。このとき落としぶたをお忘れなく。里芋をはじめ、有機栽培の野菜というのはすぐに火が通りますから、煮すぎないようにしてくださいね。汁気がすくなくなってきたら、オイスターソースと一味とうがらしを少量入れて全体にからませると、コクが出ておいしくなります。和風の煮物にオイスターソースなんて、意外に思われるかもしれませんがけっこう合うので、うちではたいていの煮物に使っています。

ター菜は中国野菜ですから、オイスターソースが合わないわけがありません。肉や魚介類といっしょに炒めて塩、胡椒。それからこのソースを少量たらしてください。

今週のメニューには見慣れないものが入っています。むかご、って何だ?はい、むかごというのは山芋の蔓にネックレスのビーズみたいにぶら下がる実のことで、山芋の種になるものです。昔から山里ではこれを茹でておやつにしたり、むかごご飯などにしていたようです。湯がいてから油炒めにするとおいしく、このときも醤油といっしょにオイスターソースを使うと、味に深みが出てくる感じ。来週はおなじみの地下部分、山芋をお届けします。

ムカゴ天ぷら