新年の受難

2008年1月第1週

今週の野菜セット

左上から時計回り

あけましておめでとうございます。

この一年もよろしくお願いします。

昨年末、急に事務局が移転することになり、上を下への大騒ぎ。餅つきという大イベントを控えながらの引っ越し準備。そして年末の出荷が終わると早々に大移動という強行スケジュールでしたから、疲労困憊。年明けはほとんど寝正月になってしまいました。

なぜそんなことになったかというと、昨年、福田さんのお父さんが急逝されたため、相続税として土地が売却されたからです。事務局に隣接していた広大な畑もなくなり、あたり一帯、建て売り住宅が建ち並ぶことになりそうです。

なんか腑に落ちない、やりきれない気分ですが、驚いたのはそういうことを農協がせっせと斡旋していること。農協に不動産部があることもはじめて知りました。高齢化に伴う離農で浮いた農地を、農協がせっせと売却。あるいは集合住宅にして農協が管理しているそうで、これはどう考えても変なのですね。農業を振興させなければいけないはずの農協が、せっせと農地を宅地に変えていたのでは、自分で自分の首を絞めることになりそうなものですが・・・。

農協が農産物の貿易自由化に毅然と立ち向かうことができないのは、これだけ大きな組織でありながら、輸入飼料などは商社まかせで、独自のルートを開発してこなかったため、強い態度に出ることができないからだといわれています。そうして縮小してゆく日本の農業に手を打つどころか、農地潰しに荷担しているのですから、これはもう救いようがないのかもしれません。

そんなわけで、しばらくは仮事務所から野菜をお届けすることになります。借家を改装した新所帯ですから、いろいろ不便な点は多いのですが、コンパクトな分、冬でもあたたかく仕事ができるというのが救いかな。アラレちゃんとふたり、いろいろと工夫しながらこの局面を乗り切ってゆく所存ですので、どうかよろしくお願いします。

年が明け、猪年から子年になったせいでしょうか。益子の山中ではいろんなところから銃声が聞こえるようになってきました。

毎年、狩猟は十一月に解禁になりますが、これまでは自由にハンターが入れたところと鳥獣保護区とが厳然と分かれていました。ところが今年に入って、鳥獣保護区の標識に「ただし、イノシシは除く」という文字が加わったのですね。そんなわけで、これまで安心して山歩きができたところでも銃声がとどろくようになり、わが家の周辺もおちおちしてはいられなくなったのです。

たしかにイノシシは年々増加傾向にあるようですが、だからといってねえ。これまで町から指名されたプロフェッショナルしか入れなかったところに、散弾をやたらと撃ちまくる素人が入ってくるのですから、イノシシも住民も大迷惑。山の中でイノシシに遭遇することがあっても、ハンターの無責任な流れ弾ほど危険ではないのですから・・・。

そんな短絡的な方法でなく、間伐もされず荒れ放題になっている杉林を照葉樹林にして、野生動物が里に出てこないようにするとか、意味のない開発をやめるとか、手の打ちようはいくらでもありそうなのに、そういうことはやりたがらない。頭のいいイノシシが保護区に逃げこむものだから、その規制を外すというのでは、その時点で人間側が頭脳勝負を放棄したことになるのですが、問題はそれだけではありません。保護区に侵入を許されたハンターたちが、はたしてイノシシ以外の野生動物を捕獲しないでいられるか。たとえば無防備なキジなどを目の前にしても、かれらは自制してそれを見逃すことができるかどうか。

この国は、先進国の中では野生動物の多様さにおいて突出しています。それは地形によるところも大きいと思われますが、工業国でクマやイノシシがしょっちゅう出没するところなど、そうあるものではありません。それをマイナスと見るか、豊かさと捉えるかは立場によって異なるのかもしれませんが、これは「売り」にしたほうが賢明だと思うのはわたしだけでしょうか。

国際的にも共存が最大の課題となっている今こそ、害獣や害鳥という概念が害念以外のなにものでもないということを証明。この国が世界をリードする存在になってくれたらいいのになあ、というのがわたしの初夢。今年に入っていちばんに願ったことです。

今週の野菜とレシピ

松の内を餅とおせちだけで過ごすという人は、おそらくいないと思いますが、それでも年明けにはじめてご飯を炊き、味噌汁を口にすると新鮮で、同時にほっとしたりするものです。ごちそうは飽きますが、いわゆるお晩菜、身体になじんだおかずは飽きがこないもの。やっぱりふだんの食事がいちばん大事なんでしょうね。

この冬最後になりそうな里芋は、皮つきのまま湯がいて柚子味噌で和えても美味。アンチョビとにんにくのみじん切りをオリーブ油で炒めたところにレモンの皮をすりおろし、里芋にからめても意外なおいしさ。このソースは葱の白いところを湯がいた、ホワイトアスパラガスもどきにかけてもよく合います。

ター菜は大きな花のような形態で、根元を洗いにくいのが欠点ですが、小松菜をやわらかくしたようなクセのない味ですから、炒めものでもスープの実にしても美味。炒めものにせよスープにせよ、中華風に片栗粉でとろみをつけたほうがおいしくなります。

やわらかい京菜はサラダでどうぞ。ちりめんじゃこをカリカリに炒めるか、カリカリベーコンか、とにかく歯ごたえのいいものをトッピングしてポン酢でいただきます。もうひと手間、これに温泉卵を加えてつぶしながら食べると、カリカリと卵のトロトロ、それに京菜のシャリシャリがマッチして、食感のおもしろいサラダになります。

ほうれん草、春菊は胡麻和えがいちばんですが、春菊には酢を少量加えるとおいしさが倍増します。

今年も青ものをたくさん食べて、寒さを乗り切ってくださいね。