益子の夏祭り

2008年7月第5週

今週の野菜セット

左から

数週間ぶりに雨らしい雨が降りました。

その日はちょうど、益子の夏祭りの最終日。三日にわたって町中を山車が練り歩くのですが、期間中、かならずといっていいほど雷雨に見舞われるのです。中には重要文化財クラスの山車もありますから、当事者にとっては迷惑この上ないのでしょうが、まわりの者にはありがたい恵みとなるわけです。この祭り、もしかしたら雨乞いを兼ねていたのかもしれません。

祭りが奉納されるのは鹿島神社。これはその昔、諏訪神社の竜と闘った翼竜が祀られているところです。竜神さまといえば雨を司るものですから、夏の乾季、それもちょうどニンジンや白菜といった冬野菜の種を蒔かねばならない時期に、山車や御輿が繰り出すというのは、意味深いことだったにちがいありません。

ちなみに、この鹿島神社と諏訪神社の竜の闘いは、今は国技となっている相撲の起源でありまして、両者が砂浜で死闘を繰り広げたという神話がもとになっています。全国の鹿島神社が東向きに、諏訪神社が西向きに建てられているのも、そういう理由から・・・。勝者は翼のある竜のほうで、諏訪神社の竜というのは大蛇(おろち)だったようです。

ともあれ、小さな町の祭りがこの時代になっても、昔どおりに機能しているというのがうれしいですね。どこの祭りも今では日取りを変更して、人の集まりやすい週末に焦点を合わせたりしていますが、無名ゆえ、それをやらずにすんでいるというのも大きいでしょう。

祭りを巨大化して観光客を呼び、経済効果を上げることも地方にとってはたいせつなのかもしれませんが、ショービジネス化した祭りでは、肝心の神さまが関与しづらくなっているのかもしれません。祭りが本来の意味を失ってしまったら、一時的に潤っても、結局その地方は栄えることができないのではないでしょうか。

バリ島では数年前、国際会議に合わせて祭りの日を変更したばかりに、火山が噴火してしまいました。聖なる山の名前は思い出せませんが、その山が噴火しないよう、供え物を山と積み、踊りと音楽を奉納するという国を挙げての祭典です。それを島民の大反対を押し切って、トップが変更。大惨事にいたったというわけでした。

そこまで信仰心が厚くなく、すべてが貨幣に変換されるようになった世界でも、同様のことは起こっているのかもしれません。物事をおこなうには方法と適期があります。そういう厳密さは旧弊だの迷信だの、誹りを受けがちですが、科学などでは計り知れない、深い根拠に根ざしているのかもしれませんものね。

このところ地震が増えていて、わたしも夜中に揺り起こされることがありますが、震源地では老人が、そういえばアレをやらなくなったから、コレをおろそかにするようになったから、などとつぶやいているんじゃないか、と勝手な想像をしているしだいです。

その点、農業に携わっている人というのは、事細かな決まり事がそれほど苦にならないようです。それは農業という仕事が、自分の都合に合わせられないものだからで、常に天候に左右される上、適期というもののたいせつさが身にしみているからだと思います。

この百年ほどの間に、農村部から姿を消した風習は多く、農家もまた、否応なく市場経済に組みこまれているのですが、それでも都市の生活者にくらべたらまだまだ敬虔なところが残っています。それは農家の生活が人間中心では成り立たず、いやでも動植物の意向や性格、天候や地力などといった、自分ではどうにもならないものに依存しているからでしょう。

だから犯罪も少ないみたい。自分の都合が優先される世界にいると、思いどおりに事が運ばないとストレスが溜まるのでしょうが、個人の都合など無視されるのがあたりまえ、といった環境ではため息をつくことはあっても、思い上がった行動に出ることなど考えられません。

人間がどこまで進化しても、自然の一部であることに変わりはなく、天と地のはざまで汗を流し、カラスにはアホーといわれ、地虫には嗤われる。その程度の存在だと自覚した上で、卑下することなく、自惚れることもなく生きられたら、これが仕合わせというものではないか。最近の血なまぐさいニュースを見聞きするにつけ、そんなことが思われるのですが・・・。

いつの世でも若者は社会の鏡です。かれらの暴走に眉をしかめるのは簡単ですが、かれらがなぜたいした理由もなく、目的すらあいまいなまま、通りすがりの人や家族を殺してしまうのか。わたしたち大人はそれを真摯に受け止める必要があるようです。まるで他人事のようにそれを話す、事件の張本人の家族のことも含めてね。

今週の野菜とレシピ

オクラが出てくると盛夏です。湯がくというより、さっと熱湯をかけて輪切りにし、鰹節と酢醤油で・・・。納豆に混ぜてもおいしいですよ。夏はぬるぬるパワーで乗り切るにかぎります。

ぬるぬるパワーといえばモロヘイアですが、どうも生育が思わしくありません。そのため、今週もオクラと抱き合わせという形になってしまいました。来週あたり、全セットに入ってくれるといいのですが・・・。

玉葱トマトピーマンのサラダ。玉葱はみじん切り、ピーマンとトマトもさいの目に切ってドレッシングで和え、冷蔵庫に入れておきます。さいの目に切るのが面倒なら、材料を全部ミキサーにかけてガスパッチョみたいしてはどうでしょう。ほんとうは青とうがらしがあるといいんですけどね。

ドレッシングの作り方はいたって簡単。ボウルに少量の酢、塩、胡椒を入れたっぷりのオリーブ油、またはサラダ油を加えて泡立て器でかき混ぜるだけ。味見して、塩分の足りないところを醤油で補うと、マイルドな感じになります。

このサラダ、小さめのガラスの器に入れると涼しげですが、白身魚のフライのソースにしても美味。日持ちがするので、多めに作っておくと便利です。とんかつも、夏はこういうさっぱりしたソースで食べるといいかもしれませんね。

来週はゴーヤが登場しそうです。