自然の逆襲

2008年5月第1週

今週の野菜セット

左から時計回り

ゴールデンウィーク。益子の町は陶器市で賑わっています。

ふだん、渋滞などとは無縁の生活を送っている田舎者には、こういう混雑はわずらわしいもので、いつも高速道路のように使っている農道まで、のろのろと品川ナンバーの車が走っていたりすると、まるで聖域でも侵されているような気分になってくるんですね。

カーナビの普及のおかげで、新緑の山道にも他県ナンバーの車が入りこみ、猛スピードで走り抜けてゆくかと思えば、きょろきょろとあたりを見ながらのろのろ運転。おまけにゴミまで落としてゆくんですから、始末に負えません。所在なげにうろつく犬も、都会から来た人たちの落とし物。陶器市が終わるとかならず、そういう不運な犬が現れるのですが、だいたいが老犬か病気持ちです。そんな犬たちを看取るのも、観光地に住む者の宿命なのかもしれません。

それにしても悲しいですねえ。チューリップやパンジーをなぎ倒す人がいるかと思えば、無用になった犬や猫を捨ててしまう人がいる。それだけ不幸な人が多いということなんでしょうが、どうしてこうまで生命が軽々しく扱われるようになってしまったのか。

ただでさえ、わたしたちの物質文明はおびただしい動植物を絶滅に追いやってきました。今、こうしている間にも、どこかで人知れず死に絶えている生きものがいるはずで、それはもしかしたらわたしたちが名前も知らない小動物かもしれないし、、匂いも知らない花かもしれません。

チューリップやパンジーが切られるとニュースになりますが、ひっそりと消滅してゆくかれらのことは話題にも上らない。存在すら知られなかった種も、中にはあったはずで、そうやって滅びていった生命たちは、わたしたちにどんな見返りも求めないのでしょうか。

ニュースに上るような花々は、多くの人が義憤にかられることで、それなりに成仏(?)できていると思うんです。でも、人知れず死んでゆく野生の生きものは、たとえかれらの側に恨み辛みがないとしても、なんらかの形で人間界に影響を及ぼさずにはいられないのではないでしょうか。それが宇宙法則、というのが大げさなら、自然界の掟だと思うのです。

たとえば通り魔に代表される、理由なき殺人といったような・・・。そういう理不尽なニュースを見聞きするたびに思うのは、わたしたちが知らないところで殺してしまった生命の数だけ、世界中で人間が人間を殺さねばならないのではないだろうか。だから通り魔になってしまうような人は、性格や家庭環境といった個人的な問題でなく、なにかに憑依されるように凶行に走ってしまうのではないだろうか、ということです。

大量殺人もあります。時代が進むにつれ、戦争や動乱はなくなるはずなのに、愚行であるとだれもが思っているにもかかわらず、逆にそれが増えているのも、わたしたちがツケを払わされていると思えば納得できますし、医学の発達に逆行するように、強力な病原菌が次々と誕生してくるのも、根源はおなじところにありそうです。

消滅した生命の分量だけ、人間界が殺伐となる。それは湯水のごとく資源を使えば使うほど豊かさから遠ざかり、贅沢をすればするほど貧しくなるといった、わたしたちが直面しているパラドックスと対をなしているのではないでしょうか。

ま、平たくいえば、車からぽいぽいゴミを捨てるような人は、運に見放される。犬や猫を捨てる人は、いつか自分が無用になったとき、子供たちから見放される。チューリップやパンジーを切り取る人は?もうすでに、社会からも家庭からも見放されているのかもしれません。

毎朝、犬の散歩がてらゴミを拾い集めているからといって、べつに幸運が舞い込むわけでもないんですけどね。でも、よくよく考えてみれば、大きな病気をするわけではなし、犯罪や事故に巻きこまれるわけでもない。お金はなくても家庭は円満だし、仕事もなんとか順調に行っている。こういうのを、もしかしたら幸福というのかもしれない、なあんて、いつになく神妙な気分になったりして・・・。

連休中もこうやって仕事をしていられることに、ほんとうは感謝すべきなんでしょうね。

今週の野菜とレシピ

今週もタケノコが入ります。先週、タケノコが入った方には、ほかの野菜を入れる予定でしたが、再度タケノコを送ってほしいという希望が多かったので、全セットに入ることになりました。

はじめて海老原さんのタケノコを見た方は、その大きさに驚き、次に大きさの割にやわらかいのに驚かれます。どんな大きさであれ、地面から顔を出しているものではなく、地中深く埋もれているものを掘り出したものですから、それだけ地下茎が深いということです。それがやわらかさの秘訣なのですが、掘り出す作業は、テレビなどで見かけるように、クワ一本でひょいひょい、などというわけにはゆきません。そんな労力に思いを馳せながら、タケノコを湯がいてくださいね。

大きな鍋がなければ、適当に切り分けて、添付の米ヌカ・唐辛子といっしょに湯がいてください。竹串がすっと通るようになったら火を止めて、そのまま冷まし、冷めたら冷水に浸けておきます。毎日水を替えると日持ちしますから、煮物やお吸いもの、タケノコご飯と日替わりでお楽しみください。

山ウドはてんぷらがおすすめ。そのとき、タケノコの姫皮もいっしょにかき揚げにするとおいしいですよ。

この時期に入るニラは、ニラ醤油を作っていただくのが目的です。ニラを細かくきざみ、口の拾いビンに入れてひたひたまで醤油を注ぎ、胡麻油も少量入れます。こうして冷蔵庫に入れておくと、これから夏に向かって、ギョウザを作るときに重宝します。焼き肉のタレとしても使えますし、冷や奴にかけてもおいしいですよ。

絹さやは卵とじにしてどうぞ。出しで煮てもよし、油炒めして卵でとじてもよし。ほんのりした甘みと、しゃきしゃきした歯触りが身上です。ただ、絹さやというのは収穫期間が短く、先週いっぱいがピークでした。そんなわけで、代品が入ることもあるかもしれませんが、その際はお許しください。