食糧自給は無謀な計画?

2008年6月第2週

今週の野菜セット

左から時計回り

早い梅雨入り。夏の旱魃が予想される中、もうすこし梅雨入りが遅ければ・・・と思うのは、こちらの身勝手でしょうか。

ともあれ雨は降っても、これまでとはちがって蒸し暑く、気温だけは暦どおりになってきました。なかなかかたづけることのできなかった冬物衣類も、これでようやく衣装ケースに収めることができそうです。

生育の送れていた夏野菜も、今週あたり、どんどん背丈を伸ばしそうです。小さいながらもピーマンが白い花をつけ、トマトは早くも実をつけはじめています。ズッキーニの花も咲きはじめました。

いよいよ夏のはじまり、はじまり。

先週は、こちらが低温なのでつい油断して、ひと足先に夏を迎えている関西方面では、ブロッコリーが開花。黄色くなってしまっているところがあったようです。今週からはクール便を利用させていただきます。

野菜は根っこがついているうちは、灼けるような日射しにも耐えられるのですが、土から離れるととたんに脆弱になってしまいます。が、死んでいるわけではありませんから、箱から出したらすぐに広げて熱を取ってやり、葉ものなのどは水を与えるとしゃんとなります。

卵も生きています。暑くなると酸素を求めて、呼吸がはげしくなってきますが、その分、生命体である白身が消耗してゆるくなってしまいます。それを防ぐには冷蔵庫がいちばんですが、直接冷気にあたると今度は呼吸困難に陥って、逆に傷みやすくなります。そんなわけで冷蔵庫に入れるときには、紙パックから出さず、冷気のあまり強くない野菜ボックスを利用するのが理想的。もちろん常温でもOKです。

常温の場合には、パックから出してカゴかザルに入れ、風通しのいいところに保管してください。卵は本来、親鳥が十日分ぐらいをあたためて孵すものですから、基本的には常温でわるくなることはありません。わが家で実験したところ、白身はいったんゆるくなりますが、一ヶ月を過ぎたあたりから水分が徐々になくなって、だんだん軽くなってゆきます。半年を経過しても食べることができますが、一年も経過すると、水分がすっかり抜けてしまって、起きあがり小坊師みたいになってしまいます。でも、腐るようなことはありません。

ただし、みなさんのところに行く卵は、輸送中に傷がついているかもしれませんから、あまり冒険はせず、半月ぐらいを目安に食べきってくださいね。

先日、風呂あがりにテレビをつけたら、ちょうどニュースを時間だったらしく、経済評論家なる人物が日本の食料事情に言及しているところでした。穀物市場が高騰。日本でも食料自給率を上げろという声が上がっているが、それは金がかかりすぎるというんですね。農家への補助金のことをいっているんでしょうか。いたずらに自給率など上げるより、どんなに価格が高騰しても、このまま輸入に頼っていたほうが経済的だというのです。

いっぺんに眠気が吹き飛びましたね。なんじゃ、このオッサンは・・・。銭勘定しかできない禿げオヤジに意見を求めるテレビ局もテレビ局ですが、銭勘定に関してはもっとシビアな、生き馬の目を抜く商社マンでさえ、減反政策を見直せといっているときにですよ、しかもこれだけ輸入食品の安全性が問題になっているときに、なにをいってるんでしょう?

評論家のオッサンが心配しているのは、おそらく帰り船の積み荷の件。つまり車や工業製品の輸送船が空のまま帰ってくると、その分の運賃が輸出品に加算されることになり、競争力が落ちてしまう。だから、帰り船にはなにがなんでも農産物を積みこんで、運賃をそちらのほうに負担してもらわねばならないんですね。この国が経済力をつけるにつれ、農業が衰退していった背景には、こういう事情があったのです。

もうひとつ、補助金の問題ですが、これこそよけいな心配で、食糧の自給システムがちゃんと動き出せば、そんなものもらわなくたって農家はちゃんとやって行けるのです。ただし、今のように買いたたかれていたのでは、どうにもなりませんけどね。

日本の米は高い、という定説があります。スーパーなどで売っている米だとキロあたり三百円。益子GEFの有機米なら、その倍になります。たとえば中国で一般的に出まわっている米なら、キロあたり五十円ですから、高いといわれても仕方がないかもしれません。しかし、中国からやって来た留学生などは、異口同音に日本は米と卵が安いというのです。なぜなのか?

これは賃金と比較してみればわかることです。農文協の調べによると、北京の一般的な労働者の賃金が一日あたり二十五元。およそ三百八十円です。その一日あたりの賃金を米に換算すると、八キロあまり。一方、日本の一日あたりの最低賃金が五千六百円。それを米にすると十八キロ以上になりますから、高いはずの米が半分以下の価格で買えるのです。

市場経済が金科玉条のように喧伝され、生活感覚まで狂いはじめていますが、日本人の一日あたりの米の消費量は平均二百グラム。金額にすると六十円にしかなりません。その倍の値段の有機米ですら、ほぼ自動販売機のジュースとおなじで、清涼飲料水の価格で主食がまかなえるのです。これを高いと感じるのは奇妙な話で、逆にショートケーキ一個が三百円だと、まあ安い、なんていっている・・・。

米が中国並みの適正価格になれば、補助金などもらわなくても農家はちゃんと自立できます。消費者米価の値上がりは低所得者層の生活を圧迫するでしょうから、中国並みは無理だとしても、せめてキロあたり五十円ぐらい政府が出してくれれば、農家と消費者、双方が生計を立てられることになるのです。これは国民一人・一日あたりにすると十一円の負担。国家の屋台骨を揺るがすほど、無謀な計画ではないと思うのですが・・・。

農業で採算が取れるようになると、後継者も育ちます。そうなれば米だけでなく、麦も大豆も作る余力が出てくるでしょう。経済のグローバル化は後進国を疲弊させるばかりですが、グローバルな視点で生態系を考えれば、ここらでまじめに食糧の自給自足を考えるべき。食糧の輸入は、水を輸入することでもあります。他国の森林を破壊してまで、貴重な水を搾取することが許されなくなる日も、そう遠くはなさそうですからね。

今週の野菜とレシピ

今週は枝豆が入る予定でしたが、低温が続きすぎたせいか、一部が枯れてしまい、あまり調子がよくないそうです。

その分、ソラマメスナップエンドウががんばっています。どちらも、さっと湯がいて食べられるところがいいですね。

サニーレタスは葉もの感覚で・・・。生のまま胡麻和えや芥子醤油和えにすると、すぐにしんなりしておひたしのようになります。もちろん生食もOK。

スライスして水にさらした玉葱、それにみじん切りのニンニクを、適当にちぎったサニーレタスといっしょに醤油で和えてもさっぱりしています。

玉葱は青山さんの畑から・・・。今週から地物になりました。