お盆が過ぎて・・・

2008年8月第3週

今週の野菜セット

左から

お盆を過ぎると、いろんな蝉の羽音にツクツクボーシが参入。しだいに他を圧する勢いになってきました。

田圃ではついこの間まで、わきを歩くとむせかえるほど匂っていた花の香りもおさまって、もう稲穂が頭をたれはじめています。その一部を拝借して、実を指で押してみると弾力があります。力を入れると液体が飛び出してくるのですが、このミルク状のものが固まって、わたしたちがよく知っている米の形態になるまで、およそ一ヶ月。

米がミルクから離乳食の重湯、粥の状態を経ながら成熟するのって、わたしたちが胎内で単細胞から複合細胞、魚や爬虫類を経てヒトの形になってゆくのにどこか通じるようで、生命の奥深さというか、おもしろさを感じさせます。これをいただいて生きているんだな、ってあらためて敬意を表したりして・・・。ありがたいことに、今年も豊作みたいです。

このあたりにかぎらず、田舎の人は今週あたり、たぶんみんな放心状態なんじゃないでしょうか。

お盆疲れという言葉があるぐらい、交通量が多くなり、スーパーでは連日、レジの前で長蛇の列。ご先祖さまの送り迎えからお膳の支度まで、女性の仕事がどっと増えるからです。おなじように来客の準備や接待にに追われても、正月疲れという言葉は聞かれませんから、一年中でもっとも暑い時期にこれがあるから、みんなぐったりするんでしょうね。

わたしたちはまだしも、農家となるとお嫁さんはほんとうにたいへんです。茄子もきゅうりも待ったなしで生育する中、収穫に追われながらそれをこなしているのですから・・・。旧家ともなると、お盆中は朝食に餅、昼にはうどん、夜は米と、食事の内容まで決まっているといいますから、時ならぬ餅つきがあり、お迎え団子、それに添える小豆も煮なきゃならない、うどんも打たなきゃ・・・と、てんてこ舞いになります。

農家の嫁でなくてよかった、と毎度のことながら胸をなで下ろすのですが、農家の嫁でなくても、連日の車の渋滞や買い物だけで十分に疲れています。暑さと交通渋滞の中、里帰りをしていた人はもっと疲れているのかもしれませんけどね。そんなわけで今週は、ふだんの生活にもどりながら疲れを癒すことになりそうです。

うちの老犬も、すこし前から体調がわるそうでしたが、お盆明けにやっと獣医の診察を受けることができました。おとなしい犬だったのが、急に吠えるようになったのです。それも悲痛な声なので、気がかりではありましたが、忙しさにかまけて放っておいたんですね。

拾ったときの推定年齢が七歳ぐらいでしたから、それから八年。推定年齢をもっと若く見積もっても、かなりの老齢です。耳が遠く、最近では名前を呼ばれて振り返ることもなく、振り返ったとしても白内障なので、こちらの姿はぼんやりとしか見えないはず。脊椎もかなり変形していて、足がふらつき、朝晩、家のまわりを散歩するのがやっとという状態でした。

もう先がない、というので食餌もあまり健康に留意することなく、好きなものを与えていましたが、体重は減る一方。げっそりやつれて、目が落ちくぼんでいます。そんなよろよろの犬を、どっこらしょと車に乗せて、本人がいちばん嫌がる獣医のもとへ・・・。

なんと、体毛の中にウジがわいていたのです。腰のあたりを中心に、小さな茶色いウジがびっしり・・・。びっくりしましたが、外飼いの犬、それも老犬など、ハエを払う体力のない犬にはめずらしいことではないそうで、全身、ウジにたかられる犬もいるそうです。もう一日か二日、受診が遅れていたら、そうなっていたそうで、最悪の場合、肛門に侵入して直腸を穴だらけにされていたかもしれない、というから怖い話です。

よく戦場などで、傷口にウジがわいたという話は耳にしますが、傷などなくても、死期の迫ったものには容赦なくハエが卵を産みつける。生きながらウジに食われるのですから、たまったもんじゃありません。おとなしい犬だって吠えるわけです。

ウジのたかっているところを毛刈りされ、ちょうど股引を脱ぎ捨てた形になったので、夜は寒いのか、猫のように丸くなって寝ていますが、これで安眠できるようになったみたいです。ま、ほんとうに寒くなるころには毛が生えそろってくるのでしょうが、脊椎を撮ったレントゲンには、脾臓のあたりにかなり大きな腫瘍の影がありました。手術ができる体力でもないので、すこしでも快適に死を迎えられるよう、こころがけてやるつもりですが、死期の迫った生きものを見ているのはつらいもので、こればっかりはいくら経験を積んでも、慣れることはないんでしょうね。

今週の野菜とレシピ

今週は小さな玉葱が入りましたが、これが最後。夏前に収穫された玉葱は、高温に弱いので軒下に吊されますが、それでも傷みが出るそうです。それも大玉にかぎって傷むそうで、このような小粒だけが残るんですね。申しわけありませんが、北海道産の玉葱が届くまで、しばらく野菜セットから姿を消すことになります。

また、トマトも姿を消してしまいました。果菜というのは下のほうから実をつけてゆきますが、葉が適度に陽光を遮ってくれるので、一度に赤くなることはありません。ところが上段になるにつれ、成熟が早くなり、最上段では待ったなし。いっぺんに赤くなっておしまいになってしまいます。先週はじめがそのピークだったので、後半は青息吐息。今週はなくなってしまったというわけです。

ミニかぼちゃは実がほくほく。実はこれ、青山さんの伯父さんの畑でできたもの。水はけのいい丘陵地に畑があるので、こういう食感が生まれたようです。水分がすくない分、甘みも強いはずです。

かぼちゃ、茄子、オクラ、ピーマンといった夏野菜を素揚げにして、麺つゆに浸すと、あつあつはもちろん、冷たくなってもおいしいので、作り置きしておくと便利です。このとき麺つゆに唐辛子を入れておくと、ほどほどの辛みが食欲をそそります。

意外においしかったのが、空芯菜のピーナッツ和え。ピーナッツバターを醤油でのばし、砂糖と少量の酢も加え、さっと湯がいた空芯菜を和えるのですが、胡麻で代用してもおいしいと思います。

来週は新生姜が入ります。これで暑気払いができるといいですね。

*野菜たっぷりセットの方には冬瓜が入ります。巨大ですが、厚めに皮を剥き、中のワタを取り除くと、それほどの量ではありません。鰹節で濃いめに出しを取り、ひと口大に切った冬瓜を煮ます。塩と醤油少々で調味して、あれば葛、なければ片栗粉でとろみをつけ、おろし生姜少々を添えます。あつあつでも、冷蔵庫で冷たくしてもおいしいですよ。