競争社会の落とし穴

2008年6月第3週

今週の野菜セット

左から時計回り

梅雨の中休み。

気象庁が梅雨入り宣言などするものだから、とたんに雨が降らなくなりました。梅雨が中断されたまま、空梅雨になる可能性もあり、予断を許しません。畑では早くも虫害が出はじめています。雨のない夏は、雑草が育ちにくいかわり、虫が活動しやすくなるんですね。人にとっても植物にとっても、過酷な夏になりそうな気がします。今から気が滅入りそうですが、そういうときに活力を与えてくれるのが、畑で懸命に生きている野菜たち。食べる前からパワーをもらって、食べてまたそれをエネルギーにする・・・。この夏も野菜パワーで乗り切るとしましょうか。

それにしても植物にくらべて、人のなんと非力なこと。所有するものが多くなるほど弱くなるのか、小手先の技術などに頼っているのがいけないのか知りませんけど、自然界からの搾取なしでは生きられないくせに、動物界ではこれ以上ないほど傲慢。害獣の最たる者かもしれません。

害獣といえば、コンラート・ロレンツという行動学者が、動物の世界をつぶさに観察しながら、おなじ動物である人間界の矛盾に言及しています。そのひとつが攻撃性で、よく誤解されることですが、ライオンがシマウマを襲うのは攻撃ではなく捕食行動で、ライオンはシマウマを憎んでいるわけではけっしてない。攻撃とは同種の生きものの間で発生する怒りに端を発しているもので、縄張り争いなどが筆頭にあげられます。

その際、動物たちはその争いを儀式化することによって、周囲の環境を守ると同時に、みずから絶滅の危険を回避しているというんですね。他者から見たら無意味に見える習慣も、その種にとっては攻撃性を抑制し、有害な作用を避ける必要不可欠な儀式であり、動物たちはそれを死守しようとする。おなじカモでも、種類が違えばまたちがった儀式があるのですが、ひとつの繁殖地でかれらが同居することになると、おたがいに相手の儀式、すなわち文化を尊重。それを侵害するようなことはないといいます。

以下はロレンツの言葉で、もしわたしたちがこのことをなしおおせないなら、一方にとって神であるもののうちに他方はいっさいの悪の根源をみてとることになりがちで、儀式のもつ犯しがたさこそ最高の価値であるのに、それがかえって人を破滅させる結果になる。宗教戦争はあらゆる戦争のうちちばん忌むべきものだ。そしてわたしたちを今日脅しているのは、まさにそれなのである。

進化というものにも誤解があって、すべての進化が理にかなっているとはかぎらないのだそうです。たとえばゴクラクチョウ、エリマキシギ、セイランといった多彩な装飾的な羽根を持つ鳥がそうで、そのオスたちは闘わず、衣装を競い合ってメスの関心をひきつけようとします。

セイランのメスは、オスのみごとな斑紋のついた大きな翼に反応します。求愛のとき、オスはそれを広げて見せるわけですが、その翼は大きく進化しすぎて、オスはもう飛ぶことさえできなくなっているといいます。しかし、翼が大きければ大きいほど、メスははげしく興奮するので、一羽のオスが一定期間に生ずる子孫の数は、その翼の長さに正比例することになるのです。が、そのオスは、彼ほど求愛器官の発達していないオスよりも、捕食者に食われてしまう確率も高くなります。

ロレンツによると、この種はもうけっして理にかなった解決策をみつけることはできないだろうし、今後もこの無意味な競争をオスたちは続けてしまうだろう。セイランの進化は袋小路においこまれてしまったのである。なぜそんなことになるかというと、自然淘汰というものは、同種の仲間同士の競争が、種外の環境と関係なしに単独で選択をおこなう場合には、つねにそういった落とし穴を用意しているからだ、というんですね。

ロレンツの師匠であった人は、冗談めかしてこういったそうです。セイランの翼とならんで、西欧の文明人の仕事のテンポは、種内淘汰のもっとも愚劣な例だよ、と・・・。これは五十年も前の話ですから、今では世界中がおなじ種の、仲間同士の競争という進化の袋小路から出られなくなっています。

とくに人間が種内淘汰の悪い作用に身をゆだねているのは、はっきりした理由がある、とロレンツはいいます。それは人間がほかの生物とはくらべものにならないほど、周囲の敵対勢力を支配してしまったからで、なにも恐れるものがない。そんな中でおこなわれる種内競争こそ、攻撃よりももっと直接的な意味で破滅的である、と・・・。

つい先日、この事務局の近くにまたスーパーマーケットがオープンしました。そこから徒歩で十分ほどのところに、三軒も似たようなスーパーがあるというのに、しかも夜の八時過ぎには車も通らなくなるところで深夜営業。さらにその隙間を縫うようにコンビニが林立。こんな田舎町でさえそうなのです。

スーパーやコンビニがつぶし合いをするのは自由かもしれませんが、それが建っているのはすべて農地だったところです。それをコンクリートでかためて、だだっ広い駐車場になる。店がつぶれたからといって、元の農地にはもどせません。そうやって食糧の供給が絶たれ、植物が生成する酸素も絶たれたうえ、植物というエアコン装置も失うわけですから、店内の冷房と冷凍ケースでいたずらに気温が上昇するわけで・・・。エコバックぐらいでは、太刀打ちできるわけがありません。

店がつぶれるのは勝手でも、跡地は生産性のない、ただの廃墟になるだけです。ロレンツが半世紀も前に警告したことが、目の前でどんどん現実となってゆく。それがこわいぐらいです。

今週の野菜とレシピ

福田さんのトマトが登場しました。益子GEFの野菜は無農薬が原則ですが、トマトだけは育苗中に消毒散布をしています。苗のうちは病気によわく、一部がやられると全滅の危険があるので、やむを得ず認めさせてもらっているのですが、栄養成長期から生殖成長期に移行して、実をつけはじめると頑強になってくるようです。

とうもろこしも入りました。これを湯がいておやつにすると、あっという間になくなってしまいますが、ご飯に炊きこむと、家族みんなで楽しむことができます。とうもろこしの実は包丁でそぎ落とし、豆ご飯の要領で塩味に仕上げます。とうもろこし2本に対して、白米;2~3合。香ばしくて、ほんのり甘いご飯です。

ミニ大根はおろし用。サラダにしてもさっぱりとおいしそうです。

青山さんのじゃが芋は早生白という新しい品種ですが、新じゃがのわりには甘みがあって、水っぽさがありません。皮をつけたまま適当に切って、素揚げ。二度揚げして塩をふったら、大好評でした。

ニンニクも皮をつけたまま丸ごと揚ると、甘くて美味。低めの温度でじっくり揚げると、臭いも気にならなくなります。これも塩でどうぞ。