秋の風物詩
2008年10月第2週

左から
- 小松菜
- サツマイモ
- 山東菜
- ナス
- 原木マイタケ
- ルッコラ
秋雨前線がようやく遠のいて、さわやかな秋晴れが広がりました。もっとも、これもいつまで続くかわかりませんが・・・。
秋の花も満開で、畑にまで侵入してきたコスモスが色とりどりの花をつけ、風が吹くたびにキンモクセイが匂ってきます。ムラサキシキブもたわわに実をつけていますが、中でもススキがいちばんきれい。
ススキというと、枯れ尾花のイメージが強いせいか、どちらかというと侘びしいものと思われがちですが、開花したばかりの尾花というのはむしろ豪奢で、朝日を受けて金色に輝いている姿など、王者の風格すら感じさせます。
黄金色の中に、よく見ると赤があり、青もあり、すべての色がモザイクのように溶けこんでいるのです。遠目には地味ですが、子細に見ると国宝級の金屏風といった趣があり、散歩中、河原などでそれに出会うと、しばし見入ってしまいます。ススキのよさがわかるようになるなんて、わたしも年をとったのかもしれませんけどね。
年をとったといえば、うちの老犬がとうとうあの世へ旅立ちました。どうにか薬のおかげで歩けるようになり、散歩にも出かけられるようになっていたのですが、とうとうそれも効かなくなり、食欲もなくなっていたのでした。けっこう大きな犬だったのですが、遺体を抱き上げたときには驚くほど軽くなっていました。
家の中に死に瀕した生きものがいるというのは、じつに気の重い状況ですから、息を引き取ったときには、悲しみよりも安堵のほうが先に立つものです。治る見込みでもあれば別なんでしょうが、日に日に衰弱してゆく姿を見ていると、早く楽にしてやりたいという気持ちにもなるというもの。ようやく一段落して、心底ほっとしているところです。
したがって、当分朝はひとりで散歩ということになりそうですが、またそのうちに相棒が出てくるでしょう。そうなったら、ひとりで歩く気楽さがなつかしく思い出されるんだろうな、と思いながら、今は犬と歩いていたころをなつかしみながら散策しているしだいです。
この秋は雨が続いていたおかげで、稲刈りが遅れ気味でしたが、さすがに今ごろになると、稲の姿も見あたらなくなりました。右を見ても左を見ても、きれいに稲が刈り取られた田圃が広がり、そこでカラスたちが落ち穂拾いをしています。スズメは稲に実が入ってくると、いっせいに田圃に集まりますが、カラスが刈り取り前の田圃に入ることはありません。わるそうに見えて、じつは律義者。ひたすら落ち穂拾いに徹するのです。
そのカラスに混じって、サギも地面を物色しています。サギもこの時期になると、植物性のものを食べるのですね。白いサギしか田圃にいないということは、子育てを終えた親鳥が渡りに備えているんだと思います。渡りをせずに翌年まで残っている幼鳥は、そんな必要がないんでしょう。相変わらず水辺で雑魚を漁っていますから・・・。幼鳥は羽の色が保護色なので、親と見分けがつきやすいんですね。
ふだん、カラスはサギが来るとうるさがって追い払い、サギのほうでもカラスに近づくことはないのですが、この時期だけは別。もうすぐ姿を消す鳥が、滋養をつけておかねばならないことを、カラスもちゃんとわかっているみたい。
わるそうに見えて、情け深いところもあるのです。
秋のほんの一時期しか見られない光景ですが、白と黒のコントラストがあざやかで、しかもなごやか。秋の花もきれいですが、この光景がいちばん心が和みます。ミレーの「落ち穂拾い」も足元に及ばないくらいの名画が生まれそう。
これが見られなくなるころ、秋風も涼しいなんていっていられなくなります。そろそろ冬支度。日暮れも日ごとに早くなってきましたね。
今週の野菜とレシピ
小松菜、山東菜、ルッコラと、青ものが豊富になってきました。
山東菜は別名・しろ菜。クセのない、やわらかい葉ものです。クセがない分、もの足りなさもあるのですが、それは豚肉や油揚げで補ってはどうでしょう。
豚バラ肉は湯がいてから、肉類はダメという方は油揚げをさっと湯通しして包丁を入れ、芥子醤油で和えておきます。山東菜も食べやすい大きさに切ってから、湯がいてそこへ加えます。芥子は多めにしたほうがおいしいですよ。
ルッコラはサラダ用。こちらはワサビ醤油と相性がいいみたいです。アボカドをワサビ醤油で和えておき、そこにルッコラを加えるとご飯によく合うサラダになります。アボカドはよく熟したものを選んでくださいね。
山崎さんの原木舞茸。菌床栽培のものよりも味と香りが濃厚で、まるで天然もののよう。これはてんぷらがおすすめ。舞茸の天丼は絶品です。
舞茸ご飯という手もあります。舞茸150グラムに対して、米は2合から3合ぐらい。ご飯はふつうに炊いておきます。舞茸は手でほぐし、細かくしたものを油炒めして醤油で濃いめに味をつけ、炊きあがったご飯に混ぜます。米が3合以上必要なご家庭では、舞茸といっしょに細かくきざんだ油揚げを混ぜると増量できます。
舞茸にかぎらず、茸類はみんなそうですが、よほどの潔癖性でないかぎり、水洗いはしないこと。洗うとしても、塩水をくぐらせる程度にとどめてください。ふつう、細かい汚れは刷毛で落とします。石づきの部分だけ包丁でこそげ取りますから、ほとんど捨てるところがありません。さらに茸は風に当てることによって香りが増しますから、ほぐしたものをザルに広げて半日ぐらい置いてから使うのが理想的。日に当てると乾きすぎるので、室内干しか陰干しにしてくださいね。
ほんとうは今週、青山さんの牛蒡、じゃが芋、ニンニクが入る予定でしたが、稲刈りの疲れが出ているようなので、来週にまわすことになりました。来週は馬田さんの椎茸も出てきます。