自然界の賄賂

2008年3月第1週

今週の野菜セット

左上から時計回り

日射しが春めいて、あたたかくなってきました。また寒さがぶり返しそうですが、季節は着実に動いています。ついこの間、年が明けたと思ったら、早いものでもう三月。日もずいぶん長くなりました。

わが家の裏手に残っていた雪も、ようやく姿を消しました。人が歩くところは雪かきをしているので、すぐに地面がむき出しになりますが、そういうところは霜に押し上げられて歩きにくく、さらに気温が高くなると陥没しやすくなりますから、あちこちに大男のような足跡を残すことになるのです。だれに見られるわけでもないけど、それがみっともない。

さらにあたたかくなると、それがぬかるみになります。逆にいつまでも雪が残っていたところが、きれいになっているのが皮肉です。人手をかけたように土の肌理も細かくて、雪が掛け布団さながら、保護膜になっていたのがわかります。人には不便な積雪も、大地にとっては至福のひとときだったんですね。

今年の春は海上に温度差ができにくいことから、春特有の大風はないという予測でしたが、このところ春風ではなく、北風があちこちで大暴れしています。現にこの通信を書きはじめたとき、ぽかぽか陽気だったのが、にわかに空がかき曇ったかと思うと突風が吹き荒れています。

春の嵐はおなじみですが、北西の風がここまで猛威をふるうのは、はじめて見るような気がします。なんか、とっても怒っているみたい。あ、また日射しがもどってきました。風も止みましたが、ふだん柔和な人からいきなり怒鳴りつけられたような気分。どぎまぎするだけならいいのですが、こんな短時間でもあちこちで被害は出ているはずで、福田さんのハウスはだいじょうぶだったかしら、などと気にかかります。

先日の風では、好子さんの畑の空豆とキャベツの苗がすっかり土に埋もれてしまい、先週いっぱい土を取り除く作業に追われていましたが、それが無駄になってなければいいのですが・・・。農業に番狂わせはつきものですが、春を目前に、野菜のエネルギーがふくらみはじめているときですから、その芽が摘まれるのは痛手です。

ただでさえこの時期は、餌のとぼしくなった野鳥たちに畑のものが啄まれやすく、しかもかれらは無農薬の畑に集中して来ます。農家にとってはいちばん頭の痛い季節かもしれません。

わたしの畑にもヒヨドリが来て、ブロッコリーをほとんど食べつくされてしまいました。このままではようやく十センチぐらいになったソラマメがやられると思い、庭木に傷みかけたりんごやみかんを射しておいたところ、食害がストップ。毎日、とっかえひっかえ餌を出すのが日課になりました。

カラスもそうですが、野生の生きものは義理堅いというか、仁義を心得ているところがあって、こちらの出方しだいで敵にも味方にもなるところが面白いと思います。かれらを敵にまわしてしまうと、いくら防御をかためても、かならず裏をかかれてしまう。そんな無駄なエネルギーを使うぐらいなら、賄賂を使ってでも友好関係を結んでおいたほうが得策なのはいうまでもありません。

そんなわけだから、テレビを見ていて賄賂が発覚などというと、ちょっと後ろ暗かったりするんですね。賄賂がよくないということはだれもが認識していても、いっこうに後を絶たないのは、それだけ有効な手段だから・・・。政治家がからむと腹が立つけど、おおまかな捉え方としては必要悪みたいになってしまうのは、上記のような事情があるからですが、厳密にいえばプレゼントなどというのも賄賂の範疇。

ぐずっている子供をお菓子でなだめる、などというのもありますしね。要はそこに愛情があるかないか。敬意があるかないか、です。そういうものがなかったら、賄賂は侮辱に等しい行為となって、受ける側のみならず送り手までが恥辱にまみれることになりますものね。

ま、そんなわけで今朝もささやかな賄賂を、カラスやスズメ、ヤマバトやヒヨドリにも差し出してきたところですが、野鳥の数が日に日に増えてくるのが頭の痛いところ。うちの母は喜んで、ちゃんとした餌台も作ってあげなくちゃ、なんていってるんですけどね。

今週の野菜とレシピ

ひさびさに大根が登場しました。露地の大根は、年が明けると地上部に近いところが凍結して使いものにならなくなるため、ハウスで栽培していましたが、先月までの寒さで、なかなか大きくなれませんでした。ほんとうは冬大根のつもりでしたが、春大根と呼んだほうがいいかもしれません。

やわらかそうな大根なので、さっそく短冊に切ってサラダにしてみました。鰹節を天盛りにして、酢:1、醤油:2、それに胡麻油少々の和風ドレッシングで食べてみてください。残った大根と葉っぱをきざんで、こちらのほうは漬け物に・・・。おなじ青首大根でも、時期によってこれだけ食感が変わるんですね。

山東菜は別名しろ菜とも呼ばれ、クセがなく、食感もたよりないわりにはカリウムの豊富な野菜です。野菜のカリウムは体内に入るとカルシウムに変換されますから、牛乳など飲むより、青菜をたっぷり摂ったほうが骨がじょうぶになるんですよ。のみならずカルシウムにはストレスを緩和する働きもあるので、季節の変わり目にはとくに大事です。

山東菜をさっと湯がいて、油揚げといっしょに芥子醤油和えにすると美味。油揚げはさっと炙ってから細く切り、先に芥子醤油をたっぷりまぶしておき、水気をよく切った山東菜を加えてください。

京菜、小松菜、ほうれん草・・・。いずれもおひたし、炒めもの、おつゆの実でどうぞ。