この一年もありがとうございました

2008年12月第4週

今週の野菜セット

左から

師走というのに、妙にあたたかい陽気が続いていましたが、ようやく寒さがもどってきたようです。今年も残りわずかになりました。

山の中。落ち葉のふかふかカーペットが、ところどころ掻きよせられたようになっているのは、イノシシがなにかを物色した痕跡。ドングリなど木の実類のほか、落ち葉の下の腐葉土にはミミズがいて、それが貴重な蛋白源になるからです。それを子細に観察している人がいて、聞けば猟友会のメンバーだとか。足跡から塒(ねぐら)の見当をつけ、ハンターを集めて寝込みを襲うのだといいます。

おじさん曰く。この谷底に塒があって、足跡がこう続いているところを見ると、お宅の庭あたり、しょっちゅう出てきてるはずだよ。いわれてみれば、生ゴミを埋めたところは何度土をかけ直しても、翌日には堀りかえされている。でも畑が荒らされた痕跡はないし、かれらの大好物・百合根が植わっているところですら、堀りかえされてはいないのです。

夜間、イノシシがうろついたところで、わたしはなんとも思いませんが、農家にとっては死活問題。山間の田畑には電流を流した柵が設置されるようになり、その経費もバカにならないといいます。町の補助があるとはいえ、こんな田舎町のことですから赤字財政。その分、なにかが犠牲になっているはずです。でも、十一月に猟が解禁になってから、二ヶ月足らずの間に二百頭ものイノシシが仕留められたという話を聞くと、ちょっと待った。この町だけで二百頭?それってジェノサイドじゃないの、と思ったんですね。

わが家の裏手は国有林ですから、鳥獣保護地区です。だからキツネやタヌキもいるし、狩猟の対象になるキジもそこに集中。ここに逃げこみさえすれば危険は回避されるのですから、イノシシも集まっているはずです。

それが一昨年から「害獣は除く」という但し書きがつくようになり、イノシシはいくら殺してもいいことになりました。よりによって亥年を目前に条例が変わるなんて・・・。おかげで狩猟が解禁になると、わたしたちも安心して山の中を歩けなくなりました。いつ、どこから散弾が飛んでくるかわからないからで、ところによっては洗濯物を干すのも命がけ、なんて話も聞かれます。イノシシはこわいけど、下手な鉄砲打ちはもっとこわい。

腕に自信のある猟師なら散弾銃など使わないでしょうが、このあたりのハンターはみんなそれで、鉛の玉をあちこちに落としてゆきます。穀類を主食にする鳥は、餌をすりつぶすのに小石を食べる習慣があり、ほどよい石の粒を探すより散弾のほうが見つかりやすい。その結果、鉛中毒で命を落とすことになるのです。とくに水鳥などは危機的状況にあるといわれ、そういう鳥を餌にする肉食獣や猛禽類にも中毒症状はあらわれ、水俣病とおなじ病苦が自然界に広がりつつあるのです。

山の中で出会うハンターはみんな、人のよさそうなおじさんで、しかもかれらの多くは町の要請を受けたボランテイア。自前の銃で、それぞれ仕事を持ちながら時間をやりくりしているわけです。趣味を兼ねた奉仕活動。当然、罪の意識などあろうはずがありません。

イノシシがかわいそう、という人もいるんだけどねえ、といいながら、自分たちのやっていることがどれだけ人のためになっているか、どれだけの農産物を救っているか、かれらは得々と話します。

でもねえ、おじさん、この山を見て。大半が杉か檜になってしまって、しかも手入れがされてない。枝下ろしも間伐もされず、蔓は巻き放題。こんな林からまともな木材など取れっこないし、台風にでも直撃されれば山の表土ごと崩れ落ちてしまいそう。それだけじゃなく、これが日光を遮っているから、ほかの植物が育たない。

そういう放置林を一掃し、照葉樹林にしたら防火林になり、保水能力も増大。しかも野生動物の餌になる木の実を落とし、周辺に植物も育つから、クマやイノシシが危険を犯して人里に出没することもなくなるわけで、農家や自治体がよけいな出費に頭を悩ますこともない。また、そういう林が増えれば土壌が豊かになり、それが河川を下って近海の魚類も増える。いいことずくめです。

でも、そんなことが簡単にできるのか、というとこれができるのです。農水省が雑木林を杉や檜に転換する際に出している補助金。第二次大戦後、建材不足を補うために施行されたこの制度を見直して、利益を生じる見込みのない針葉樹林を雑木林にする際、この補助金を出すようにすればいいのです。問題は、一度決めたことは時代遅れになろうが、逆行しようが改正したがらないお国がこれをやってくれるかどうか。なぜか、憲法改正だけは妙に積極的なんですけどね。

ハンターのおじさんもいってました。そりゃそうだ。明けても暮れてもイノシシじゃ、おれたちだって面白くないんだよ。政府も無駄金ばかり使ってないで、たまには国民のためになることもやらにゃあ、と・・・。

ほんと、国民を食いものにするような政治は、今年かぎりで終わりにしてもらいたいもの。来年はもうすこしいい年でありますように・・・。

今週の野菜とレシピ

ひさびさに大根が入ります。練馬大根は煮もの用。かつては大根の主流でしたが、今では青首大根に押されて絶滅危惧種とさえいわれています。が、おでん、ふろふき大根などはやはりこれでないと、という人も多いようです。

ター菜は座布団のように広がっている分、全体に日があたり、霜にもあたるので、独特の甘さ、やわらかさがあります。小松菜に似たクセのない味なので、炒めもの、スープなどにご利用ください。

ほうれん草も霜にあたる回数が増え、甘みを増してきました。逆にあぶら菜は、甘さの後からくるほろ苦さが売り。さっと湯がいて芥子醤油和え、あるいはそのままマヨネーズで食べてもいいのですが、湯がくときに油少々を湯の中に落とすこと。そうしたほうが湯の中に成分が解け出しにくくなるのか、味がよくなります。茹であがったものは水にさらさず、まな板の上に広げてくださいね。

風邪が流行っています。ぞくっとしたら生姜湯。おろし生姜に湯を注ぎ、蜂蜜を加えて飲むと殺菌効果があり、身体もぽかぽかしてきます。もちろん、料理用にもご利用くださいね。

隔週でお送りしている方は、今年最後の野菜セットになります。この一年もありがとうございました。どうかよいお年をお迎えください。