薪ストーブの季節

2008年11月第1週

今週の野菜セット

左から

ようやく気温が平年並みに下がってきました。

紅葉もはじまりましたが、いつまでもあたたかかったせいか、色づきはあまりよくありません。ここ数年、はっとするほど鮮やかな紅葉というのにお目にかからなくなりましたが、ま、くすんでいても紅葉は紅葉。それなりに目を楽しませてくれています。

ようやくストーブにも火が入りました。

去年、灯油が高騰したため、薪ストーブに転向する人が多かったのか、薪を頼んでもなかなか持って来てもらえなくて、やっと来たと思ったら注文の半分量。しかも薪がまだ新しく、水分が抜けきっていなかったのです。そんなことがあったので、今年は早くから声をかけていたのですが、去年とはうって変わって薪屋さんの反応がよく、おまけに注文の倍量も納品されてしまいました。

ガレージの中は薪が天井まで積み上げられ、歩くスペースもままならないほどでしたから、寒くなるのが待ち遠しかったというわけです。ただ、例年なら薪が減るにつれ、ガレージ内が明るくなって、日時計のように春までの時間が体感できたのですが、来年は春になってもうずたかく積まれた薪が残りそう・・・。しかも用心のために別口からも薪を取り寄せていて、それが物置小屋に三トンちかくも山積みになっており、わたしが集めた倒木も手つかずになっているのですから、なんだか急に大金持ちにでもなったような気分です。

薪長者、とでもいうのかな。薪が乏しい冬は心許なく、裏山の松ぼっくりや栗のイガまで拾い集めたりするのですが、今年はぬくぬく。しかし、持ちすぎるというのも問題がありそうです。これだけ薪があるというのに、先のことまで考えるようになるからです。あそこを薪小屋にすればもっと備蓄できるぞ、みたいなことを考えている自分がいて、われながらぞっとしました。人の欲望の構造が見えた、と思いましたね。

欲の皮が突っ張るとろくなことはありません。今、騒がれている経済危機だって、欲の皮の突っ張った証券会社が世界を相手に、詐欺まがいの商売をしたのが発端。売ったほうも買ったほうも、欲の皮が突っ張りすぎていたのですから、破綻するのは因果応報。当然の報いなのですが、荒波をまともにかぶるのがかれらよりも一般庶民で、それも貧困層ほどひどくなるというのが合点のゆかないところです。

いつも思うのですが、貨幣が薪のように嵩張って、穀物のように古くなればカビが生えて使いものにならなくなってしまう代物なら、事態は変わってくるでしょう。決定的な打開策にはならなくても、貨幣や証券という、それ自体にはなんの価値もない紙切れに振り回されるという馬鹿馬鹿しさはなくなるわけで、わたしのような経済音痴にも世の中がわかりやすくなろうというもの。

ペルーの山岳地帯では、主食のじゃが芋が貨幣代わりで、芋の袋を下げた女性たちが日用品や靴を買っている。その光景をテレビで見ながら、うらやましくなったものです。買い物は空になった芋の袋に入れて帰るので、無駄もない。シンプルにして賢明。じゃが芋の皮をいかに薄く剥くか、女たちが競い合うことはあっても、手垢にまみれた紙切れがない分、ストレスがないから犯罪もないのですね。

彼女たちの家の中もきわめてシンプルで、家具らしい家具がありません。土間にはマーモットという大型のネズミがいて、じゃが芋の皮などの残飯を食べ、子供たちの遊び相手になっていますが、ペットではありません。貴重な動物性蛋白質。とことん無駄がありませんが、その生活が貧しいかというと、けっしてそうではない。それが伝統的な生活スタイルで、貧乏人もいないかわり金持ちもいないのです。

それを思うと、わが家のあちこちに山積みになっている薪の存在が気になって、恥の象徴にも見えてくるからイヤになります。早く消えてくれればいいのですが、かといって無駄には使えない。今年は長い長い冬になりそうです。

今週の野菜とレシピ

青菜がたっぷり入りました。小松菜山東菜はおひたし。ルッコラはサラダ用ですが、出はじめの春菊もサラダがおすすめ。春菊とスライスしたりんごをフレンチドレッシング+醤油で食べてみてください。

先週の大根は小ぶりでしたが、今週はもうすこし大ぶりになっているはずです。葉っぱがやわらかいので、これも青菜として利用します。細かくきざんで塩をしたものをぎゅっと絞り、ちりめんじゃこ、煎り胡麻といっしょにご飯に混ぜるとおいしいですよ。大根の煮物といっしょにどうぞ。

大根を薄くスライスして、ぱらぱらと塩をふり、レモンスライスをのせて、また大根、塩、レモンと重ねてゆきます。これ、世界でいちばん簡単なサラダ。大根から水分が出て、しんなりしてきたら、重ねたままテーブルに出してください。ワインにもビールにもよく合います。ドイツのビアホールでは、各テーブルにこれが塔のように並んでいて、無料、食べ放題なんだそうです。そういえば、塩気のきいたソーセージなんかも合いそうですね。

ドイツ風となると、じゃが芋も欠かせません。旭川の横畠さんの男爵。初物は皮ごと湯がいて、シンプルに塩だけでいただきます。甘みが濃厚でおいしいですよ。