雷様の話

2008年7月第2週

今週の野菜セット

左から時計回り

梅雨の中休みというより、本格的な夏をむかえたかのよう。あちこちで記録的な暑さが報じられ、このあたりも暑苦しくなってきました。

日中、どれだけ気温が高くても、夕立が降ると、それまでの暑さが嘘のようにかき消され、とたんに過ごしやすくなります。夕立というだけあって、雷雨というのは夕刻でなくてはダメ。中途半端な時間帯に降られると、一時的に涼しくはなるものの、また太陽が顔を出すと、それまで以上に蒸し暑くなるからです。

わたしたちはこの雷雨にずいぶん助けられています。人が過ごしやすくなるというだけでなく、植物が活気に満ちてくるからです。植物にとって雷雨というのは、単なる水分補給ではありません。空中に放電される数万ボルトという電気。これが地中の養分に勝るとも劣らぬ効果をもたらすのです。

雷が鳴りはじめると、庭先が妙に明るく感じられるのは、植物たちが帯電しているからで、それは雷雨が去った後もしばらく残ります。木の葉も雑草も、芝のような小さなものでさえ、葉っぱが微光に包まれ、まるで発光体でも内蔵しているように見えるのです。このとき大量のマイナスイオンが放出されるので、あの特有のすがすがしさが生まれるのかもしれませんね。

タイだったかベトナムだったか、記憶はさだかではありませんが、とにかく南方の竹林で、一時間足らずの雷雨の間に、若竹が三十センチも伸びたという報告があるぐらいですから、植物にとって雷が栄養分以上のものであることがわかります。雷雨の発生しやすい地域が、野菜や米の特産地になるのも偶然ではなさそうです。

稲妻とは元来、稲を受精させるもの。つまり稲の夫という意味でした。古代には夫は妻、妻のほうは妹(いも)と呼ばれていましたからね。それを含んで雷雨の中で田圃に立つと、背丈を伸ばした稲苗の葉先が一面、白く輝いているのが壮大なポルノグラフィーに見えてきます。光の放精と雨に打たれながら、稲たちが歓喜に撓い、踊り狂っているのです。

この光景は圧巻です。ふと目を上げると、山の稜線も白く発光して見えますから、稲妻はひとり稲だけのものではなく、万物にひとしくエネルギーを分かち与えるものだというのがわかります。雷様、とはよくいったものですね。

それに比べたら原子力発電所など、ちゃちなオモチャみたいなもの。地中のタブーに触れるぐらいなら、空中のこの膨大なエネルギーを蓄電できる装置ぐらい、優秀な頭脳と技術があるのだったら作ってみろよ、といいたくなるのですが、雷雨のたびに河川の氾濫やら、土砂崩れやら、インフラの不備ばかりがニュースになるような現状では、百年早いのかもしれません。

その雷が昔にくらべたら減ってきています。年によって多少のちがいはありますが、減少傾向にあるのはまちがいなく、高圧電線によって雷の通り道が変わってしまうのも一因だといわれています。わたしの家は山の中腹にあるので、眺めはとてもいいのですが、数キロ離れた山の峰づたいに、鉄塔が等間隔にならんでいます。この景観を台無しにしている代物が、福島の原発から東京へと続く送電線で、これを境に雷が迷走しているみたいです。

電気同士が反発しあうのか、まっすぐに進んできた雷雲が高圧線に接近すると、カーブを描いて迂回。また来た道をもどって行ってしまうんですね。また、こういう鉄塔が避雷針がわりになることもあるらしく、半径三キロの円周上にある家は、雷雨のたびにテレビや冷蔵庫が壊れるので、慌ててコンセントを抜いてまわるそうです。

わが家はこの三キロという線上から、数百メートル外れているおかげで事なきを得ていますが、雷の性質っておもしろい。もっと研究されてもよさそうなものなのに、雷雨の中、命がけで凧を揚げていたベンジャミン・フランクリンの功績が、避雷針だけで終わっているというのも寂しいことです。

話は変わって、ひとつ気にかかっていることがあります。軒先のツバメのことなのですが、どうもヒナが育っていないようなのです。

前にお話したドジなカップル。案の定、あれから二回も巣が落ちましたが、巣の中に卵はなく、大惨事には至りませんでしたが、三度目の巣作りの途中、あきらめたのか姿を消してしまいました。

ところがもう一方のお利口カップルの方も、順調に営巣していたにもかかわらず、突然姿を消してしまったのですね。隣近所でも同様で、巣は作っておきながら、なぜか卵を産んでいない。いやあ、うちだけかと思っていたら、お宅もそうだと聞いて安心しました、というご主人。

それを聞いて、もっと不安になったのはわたしのほうです。うちのツバメの事情だけなら、類は友を呼ぶで、出来のわるい家に出来のわるいツバメが来たで済まされるのですが、わが家の一帯がそうだとなると、天変地異でも予言されたようなイヤーな気分になってきます。

ツバメの世界も少子化?それはそれで環境問題に発展しそうですが、みなさんのところのツバメたちは無事に子育てしてますか?どこもかしこも卵が孵っていないようなら、事態は深刻です。プライバシーの侵害になるかもしれませんが、一度巣の中を覗いていただけないでしょうか。

今週の野菜とレシピ

トマト、茄子、きゅうりと出てきて、野菜セットも夏の様相を呈してきました。ただし、ピーマンは数量が足りないため、ズッキーニと抱き合わせという形になりました。

茄子は揚げてよし、焼いてよし、炒めてよし、生できゅうりと塩もみしてよしと、万能の夏野菜です。好子さんがいちばん力を入れているだけあって、茄子のやわらかさと甘みは他の追随を許しません。ミナミアザミウマという外来虫の登場以来、無農薬栽培がもっとも困難になってしまったといわれるのが茄子ですが、苗の時期からいっさい薬剤に頼らず、この夏も乗り切るつもりです。

きゅうりの酢のもの。上品な小口切りでなく、包丁をきゅうりの上に寝かせて体重をかけ、きゅうりを割ると歯ごたえがよく、断面がぎざぎざになるので味も染みやすくなります。たまにはこんなワイルドな食べかたもいいですよ。

モロヘイアが遅れていますが、この暑さが続けば来週あたり、出て来そうです。空芯菜もいっしょに大きくなっているかもしれません。

野菜たっぷりセットには、今回もコリンキーが入っています。生食用のカボチャですが、さっと炒めても美味。ぬか漬けが最高、という意見もありますが、いずれにしても独特の食感とほのかな甘みに人気があります。

これもかなり大量に作っているのですが、花が落ちやすく、なかなか収穫まで漕ぎつけないようです。はじめて作る品種なので、農家のほうも手探り状態。夏中にはなんとか全セットに入れて、みなさんに味わっていただきたいと思うのですが、どうなりますか