山の中は冷暖房完備

2010年1月第4週

今週の野菜セット

左から

先週はほんのひととき、春の陽気を先取りすることができました。

あたたかさがうれしいのは犬も猫も人もおなじ。みんなぞろぞろと戸外に出てきて、ひなたぼっこを楽しんでいるようでした。

イノシシもうれしかったと見え、ひさびさに畑や裏庭に足跡を残して行きました。イノシシの蹄は山羊とおなじですから、チューリップ型。身体のわりにかわいらしい足跡なんですよ。かれらの快適温度は摂氏三十度といいますから、この冬はつらいでしょうね。カヤを折り曲げ、落ち葉を敷いた巣の中で、家族が折り重なるように暖を取っている姿が目に浮かびます。

裏山に奥深く分け入ると、稀にそういう塒(ねぐら)の痕跡に遭遇することがあります。イノシシは夜行性。ほんとうは昼行性なのですが、人との折り合いがわるいところでは夜行性になるんだそうです。早朝なので、もしかすると外出中だったのかもしれませんが、体臭がまったく感じられなかったので、おそらく空き家。ちょっと失礼して、横にならせてもらいました。

見た目よりはるかに快適な寝床でしたよ。屋根はないけど、ぐるりが壁になっているので、横になると風が遮断されるのです。ひととき、犬といっしょにごろごろしていましたが、ここなら真冬でも野宿できると思いましたね。いつか、ここで一夜を明かしてみたい・・・。出勤時間が迫ってきたので、後ろ髪を引かれる思いで帰ってきたしだいです。

気温はぬるみましたが、地温はまだまだ上がらないようで、畑の土は地表から十センチ近くも凍っています。山の中はあたたかくても、人間の居住地区はまだまだ寒さが続きそうです。

山の中から帰ってくるたびに思うのですが、人の手の入ったところって、どうしてこんなに住み心地がわるくなるんでしょう。金をかけ、手間暇かけて、冬はより寒く、夏はより暑い環境を作り出しているかのよう・・・。都会で炊き出しを受けているホームレスの映像を見るたび、この人たち、どうしてあんな劣悪な環境に耐えているんだろう、と思うんですね。

国も本気でかれらを支援するつもりなら、国有林を解放したらどうでしょう。うちの裏山も国有林ですが、自動車道路に面したところはゴミ捨て場のようになっています。そこで提案。ホームレスの居住を許可するかわり、かれらにゴミ拾いをさせ、それをトンあたりいくらといった形で買い取るというのはどうでしょう。それを米代にすれば、おかずは採集生活でまかなえます。

放置された針葉樹林の間伐を任せるという手もあるし、雑木林を定期的に伐採してもらい、太いところは椎茸の原木に、残りは薪として商品化する・・・。椎茸の原木はどこでも不足していて、このあたりのクヌギの大半が大分県に出荷されているぐらいですから、仕事はいくらでもありそうです。テント暮らしなどしなくても、スギやヒノキの間伐材でログハウスも造れそうですし・・・。

山の再生と失業問題が同時に解決するうえ、地方の過疎化にも歯止めがかかるんじゃないでしょうか。出来合いの宿舎に無理矢理押しこまれるはイヤだという人も、こういうところなら喜んで来てくれそうです。ただ、地元の人との折り合いがうまく行かず、かれらもイノシシみたいに夜行性になってしまったのでは困りますけどね。

でも、こういう試みがあってもいいんじゃないか。それが成功した暁には、みんな家を捨てるようになるかもしれませんけどね。そうなったら息も絶え絶えの資本主義から脱却。新しい世界が生まれてくるかもしれませんよ。

今週の野菜とレシピ

日中の気温がぬるんできても、地中はまだまだ氷点下の冷たさで、作物の生育が遅れています。かぶも大根もなかなか大きくなれませんが、いちばん伸び悩んでいるのがほうれん草。今週も収穫できる大きさになることができませんでした。

代わりに出てきたのがエシャロットです。これは薬味用ですが、ひと皮むいて4~5センチに切りそろえ、かき揚げにすると甘くで美味。生のまま、味噌をつけてかじってもおいしく、これはお酒のつまみにぴったりです。

ちょっと野蛮ではありますが、かぶも丸のまま味噌をつけて食べるとおいしいんですよ。塩よりも醤油よりも味噌がいちばん、かぶの甘みと旨みを引き出してくれるみたいです。子供には、味噌にマヨネーズを混ぜたほうが評判がいいかも・・・。青々とした葉っぱのほうは、一夜漬けにするか、味噌汁でどうぞ。

青山さんの白菜。好子さんのより、ちょっと小ぶりです。白菜の種類がちがうというより、生産者の体型のちがいが影響しているみたい。好子さんはデブではないけど、がっしりタイプ。かたや青山さんのほうは細身で小柄。男物のジーンズでは大きすぎるので、女物のSを愛用しているぐらいです。どちらもパワフルではあるのですが、野菜は忠実に作り手に合わせて生育するようで、かれが作るものはすべてスリムな体型になるみたいです。

細身の男が作った白菜も、太めの女が作った白菜も、鍋に入ればおなじ白菜。

白菜の中華風スープ

白菜の中華風スープ

鍋ものに飽きた方は中華風のスープでどうぞ。

用意するものは、生姜、豚バラ肉、干し椎茸、春雨で、干し椎茸はぬるま湯でもどしておきます。白菜は丸ごと1個、全部ざくざく切ってください。大きめの鍋に油を敷き、みじん切りの生姜と豚肉を炒め、白菜も入れて全体に油をからませます。ひたひたよりすこし多めに水を入れ、椎茸のもどし汁も入れて加熱。椎茸のほうは細かく切って放りこみます。ぐつぐつしてきたら火を弱め、白菜がくたくたになるまでさらに加熱しながら、塩、胡椒、オイスターソースで調味。最後に春雨を乾燥した状態のまま鋏で切って入れ、春雨がやわらかくなったところで水溶き片栗粉でとろみをつけ、胡麻油少々をたらします。

ハンバーグの残りなどがあれば、豚バラ肉のかわりに使えますし、肉はダメという方は干し椎茸の量を増やしてください。こんなにたくさん作ってどうするの、と思うかもしれませんが、こってりしていても中身は淡泊な白菜ですから、あっさりお腹におさまってしまいます。寒い朝には、こういう作り置きのスープがあると重宝します。


赤いじゃが芋が入っています。青山さんが実験的に作ったものですが、皮だけならともかく、中まで赤いじゃが芋というのはどうだろう、と不評だったもの。セットメニューに入ることはありませんでしたが、捨てるのはもったいないので、今回サービスという形で入れさせていただきました。サラダにでもしてお召しあがりください。