カマキリ女史の超能力

2010年12月第1週

今週の野菜セット

左から

いよいよ冬本番、と身構えていたわりには、あたたかい日の連続でした。ただ、小春日和の翌朝はどーんと冷えこみますけどね。さくさくと音を立てながら、足元に霜がからみつきます。

これがばりばりという音に変わったら、それがほんとうの冬本番。春なら待ち遠しいのでしょうが、相手は冬将軍です。焦らずゆっくり、道草でも食いながら来てください、という感じ。案外、すぐそこまで来ているのかもしれませんけどね。

車のタイヤをスタッドレスに交換する時期をうかがいながら、この冬の雪の量が気になるところです。雪国にくらべたら微量の雪でも、支障は大きいですからね。

枯れ草を刈っていると、カマキリの卵がけっこう出てきますから、積雪量はそれほどでもなさそうです。地表から十センチ前後といったところ。もっともかつては、カマキリは卵が雪に埋もれるのを防ぐため、それより高いところに産卵するといわれていましたが、今はその逆。雪に埋もれていたほうが風の影響を受けにくく、安全に越冬できるんだそうです。

でも、それでは卵が水浸しになるんじゃないか。そんな疑問に応えるために、カマキリの卵を数ヶ月間、氷水に浸けるという実験をした人がいます。それでも卵は無事、翌春には孵化したといいますから、あの卵のまわりの泡状のシェルターの防水力、保温力には舌を巻いてしまいます。

のみならず、春先には火事が多いというので、あの泡は熱にも耐えられるようになっていたんです。以前、野焼きで黒焦げになったカマキリの卵を見つけ、ダメもとで持ち帰ってみたところ、そんな卵からも小さなカマキリたちがわらわらと出てきましたからね。すごいと思いました。

雪など見たこともないはずのカマキリが積雪量を予想したり、知るよしもない春先の野焼きに対処したり・・・。蜂などは夏の降雨量を知っているみたいだし、そういう自然現象だけでなく、火事のような人為的なアクシデントまで、かれらは事前に察知できるみたいです。

人智をはるかに越えた動植物の能力に思いを馳せるとき、たどり着くのは我執の有無です。我というものを持たないから、かれらは大地とへその緒みたいなパイプが繋がっているんじゃないか。地球から直に情報が入ってくるから、そういう予言者もどきのことができるんじゃないでしょうか。

そこへ行くと人は悲しい。自我などを確立したばっかりに、孤立せざるを得なくなってしまったからです。地球とのパイプも取り払ってしまったから、なにも教えてもらえない。一見、膨大な情報に囲まれているように見えるけど、肝心なことはなにもわからず、目先のこともわからない。結局、過去のデータに頼るしかないのです。

そんなわけで、わたしは今年もスタッドレスタイヤを担いでうろうろ。もうちょっといいかな、なんてやってるわけです。ああ、恥ずかしい。

話は変わりますが、カマキリってどういうわけか、死期が近づくと人家のまわりにやって来て、中に入ろうとするんですね。わたしは上記のような理由でカマキリを尊敬してますし、畑で働いてもらった恩義もあるので、丁重にもてなすことにしています。

家の中に招き入れても、たいてい一日かそこらで動かなくなってしまうのですが、今月はじめに入って来たメスがまだ生きているんです。置物のようだけど、毎日居場所が変わっていて、朝、障子にしがみついていたかと思うと、夜には箪笥の上にいたりする・・・。ついにミドリちゃん、なんて名前がついて、「あれ、ミドリちゃん、どこへ行った?」「ほれ、ほれ、そこに・・・」なんて会話が交わされるようになりました。

食べものは与えていません。以前は最後の晩餐と称して、肉類のかけらなどを与えていましたが、死ぬときは食事などしないで、すっと息を引き取ったほうが楽なんじゃないか。そう思ったからです。が、水も食事もなしに数週間、彼女は家具の間を渡り歩いているのです。

それで、とうとう食事と水を与えることにしたんです。生の挽肉を少々、ゆで卵の黄身と、水をたっぷり含ませたパンを添えて・・・。やっぱり最後の晩餐って必要だったんじゃないか。それで成仏できないんじゃないか、と思ったからですが、きっぱりと断られてしまい、今朝もミドリちゃんは窓辺にしがみついていました。

こうなったら、カマキリは断食してどれだけ生きられるのか、そっちのほうを応援するしかありませんよね。

今週の野菜とレシピ

お待たせしていたじゃが芋が入ります。ことしはじゃが芋の収穫量も激減だったそうで、横畠さんは品質も今ひとつで申しわけない、といってましたが、なかなかどうして、茹でで塩だけで食べてみましたけど、甘くてほくほく。美味でした。

クッションのように丸く、平べったいのがター菜。中国原産というだけあって、炒めものに最適。肉類とも魚介類とも相性がよく、ター菜だけを生姜といっしょに炒めてもOK。最後に水溶き片栗粉でとろみをつけると、無駄なく食べられます。

からし菜は一夜漬けがおすすめ。そのまま漬けたのでは、特有の辛みが感じられないので、熱湯をまわしかけてから塩をしてください。漬け物は重しが命。わが家では少量の漬け物を作る際、空いている鍋に青菜を入れ、落とし蓋をした上に醤油のビンや、水を入れたペットボトルを何本ものせて重し代わりにしています。ざくざく切っておくと、漬かるのも早くなります。

牛蒡の揚げ煮。歯応えがよく、しかも食べやすく、お年寄りにも喜ばれるので、わが家ではきんぴら牛蒡の代わりによくこれを作ります。牛蒡を笹がきにするのはたいへんですが、これなら準備も簡単です。ていねいに水洗いした牛蒡を斜めにざくざく切って、アク抜きなどせずそのまま素揚げ。鍋に砂糖と醤油、酒を大匙1杯強ぐらいずつ、煮立ててとろみが出てきたところへ牛蒡を入れてからめます。お好みで鷹の爪の輪切りか唐辛子を加え、煎り胡麻をたっぷりまぶしてできあがり。日持ちがするので、おせち料理にも使えそうです。

大根も短冊に切ってきんぴらにすると、目先が変わっておいしいですよ。