寒い秋

2010年9月第5週

今週の野菜セット

左から

ついこの間まで暑い、暑いといっていたのがウソのよう・・・。寒くなりましたねえ、が挨拶がわりになりました。秋はどこに行ってしまったんでしょう?

あれだけの酷暑で太陽にはいいかげんうんざりしているはずが、ちょっと雨が続いただけで、お日さまがありがたく感じられるのですから不思議なものです。あれだけ待ちわびていた雨も、続くといやがられたりして・・・。

今週はいくらか秋らしい陽気になってくれるでしょうか。ようやく発芽した冬野菜も、陽光のぬくもりがなくては生育できません。すこし動けば汗ばむぐらいの陽気が理想的。贅沢だ、って一喝されるかもしれませんけどね。

アラレちゃんの家で銀木犀が香りはじめたそうです。半月ほど前には、この暑さで銀木犀も金木犀も花芽がついてない。今年は香りのない、味も素っ気もない秋になりそうだ、といっていたのが、雨が降ったとたん、花芽が吹き出してきたそうです。

わが家の金木犀も、葉っぱしかなかったところに小さな花芽が出てきています。おかげで香り高い秋になりそう・・・。でも、味覚のほうはさっぱりみたいで、柿は春先の寒さで花芽が落ちたまま。栗も例年より実つきがわるいようです。ただでさえすくないところへもって来て、夜が明ける前にイノシシが食べてしまうのでしょう。なかなか人の口には入りません。

いちじくは暑さにめげず、たくさん実をつけていましたが、これはカラスにやられています。明日あたりが食べ頃、と目をつけておいた実が、翌朝にはなくなっていますからね。カラスも今年は食糧難みたいで、ふつうの年なら見向きもしない山栗が道路にいくつも並んでいます。車に轢かせて中身を啄む魂胆らしく、みんな苦労しているみたいです。

タヌキが心待ちにしている柿も、ふたつだけ実をつけていましたが、そのうちのひとつが風で落ちてしまったようで、それをうちの犬がうまい具合に種とヘタだけ残して、きれいに食べてしまいました。そういえばタヌキと犬は仲間だった。でも、おまえは食糧難とは無縁だろう。それぐらい仲間に残しておいてやれよ、と思いましたね。

稲刈りが終わった田圃では、カラスたちが落ち穂拾いをしています。これは今年にかぎった風景ではありませんが、いちばん絵になる秋の風物詩。稲藁で黄色く染まった地面をバックに、カラスの黒が点在しています。色彩のコントラストに加えて、そのカラスたちがとても健気で、品よく見えるスズメは稲穂に実が入ったとたん、田圃に群がりますが、カラスは刈り取りが終わるのを待っていたのです。体の大きさのちがいでそうなるのかもしれませんが、カラスの慎ましい一面がかいま見える、微笑ましい光景でもあります。

春先、田圃に水が張られるとカラスがやって来て、カエルや水生昆虫を啄むのですが、そんな光景もいいものです。越冬したサギの幼鳥も混じって、おたがいに距離を置いてているところがいいんですね。縄張り争いなどはしない。そして親サギたちが渡って来るころ、餌場を明け渡して山の中や人家のほうに移動するんです。そこで人にうるさがられたりするわけですが、ほんとうはいいヤツで、ちゃんと周りと折り合いをつけている。

山の中に捨てられた鶏など、たちまちカラスに取り囲まれてやられてしまうのですが、そんなときのカラスはまるでギャング団。もちろんカラスだけでなく、タヌキやキツネ、イノシシにも捕食されて一羽また一羽と消えてゆくのですが・・・。そういう人の手を経たものや、おなじ自然界でもトンビのような定住者にはいやがらせをするのに、サギに紳士的なのはなぜ?そういえばカモなんかにも遠慮がちなので、もしかしたら渡り鳥には一目置いているのかも。ちょっと尊敬しているのかもしれません。

話は変わりますが、先月、また山の中に今度は軍鶏とそのヒナ、雌鶏という妙な取り合わせが捨てられていて、うちの犬がちょっかいを出してしまった手前、うちで保護することになりました。最初にヒナを確保。翌日、鶏を抱きかかえて帰ってきたのですが、オトナの軍鶏は何者かにやられたらしく、ついに見つかりませんでした。

雌鶏はものすごい食欲で、たぶん山の中では満足に餌が得られなかったんでしょう。食べるだけ食べて、三日目ぐらいから毎日、律儀に卵を産むようになりました。チビ軍鶏のほうはオスだったと見え、明け方になるとコケコッコーならぬギャアギャアというしゃがれた声が寝床まで聞こえてきます。

薪小屋を鶏小屋に造り変えるにはどうしたらいいか、頭をひねっていましたが、問題はうちの犬で、自分の獲物を取り上げられた上、わたしが世話などしているものだから、それが面白くない。拗ねて、ろくにご飯も食べなくなってしまったのです。養子先を捜していましたが、先日、近所の大工さんのところに無事、もらわれて行きました。

やれやれ、とほっとしたのもつかの間、今度は捨て猫がいるではありませんか。もう猫は飽和状態。見て見ぬふりをしましたが、後味のわるいもので、次に通ったときにはいなくなっていて、ほっとしながらも、昨夜の雨で死んだんじゃないだろうか、などといつまでも気にかかる。だれかに拾われていればいいんですけど・・・。山の中にゴミを捨てる、生きものまで捨てに来る。人間がいちばん質のわるい生きものみたいです。

今週の野菜とレシピ

今週は高原大根というめずらしいものが入ります。生産者の大越さんはイチゴ農家で、夏期はイチゴの苗を作るため、日光の戦場ヶ原に畑を借りています。そこで大根なども作っているのですが、持って来てもらうには距離がありすぎ、送ってもらうには送料がかかりすぎるというわけで、これまで使いたくても使えなかったのでした。

でも、今年は非常事態。多少値は張っても、使わざるを得ない状況になりました。これまで野菜たっぷりセットに入っていた夏大根やニンジンも、大越さんの手になるものです。奥日光とはいえ、今年は暑かったので表皮が線虫にやられています。が、無農薬でここまでの大根ができるのは、真夏でも朝夕の気温の低い高原ならでは・・・。

ただし送料の関係で、もったいないとは思いましたが、葉は落としてあります。すこし小ぶりではありますが、煮ものや大根おろしにご利用ください。スダチも入りましたので、サンマの塩焼きに添えてはどうでしょう。

青山さんの牛蒡も入ります。掘りたての牛蒡はやわらかいので、サラダにできます。それよりもっと簡単なのは、牛蒡の即席漬け。薄く斜めにスライスした牛蒡に醤油をまわしかけるだけ。牛蒡がしんなりしたら食べられます。初物の香りを楽しんでください。

好子さんのセロリ。ほんとうはもっと大きくなるはずでしたが、セロリは湿地を好むため、旱魃には弱いみたいです。これは葉も茎もざくざく切って、炒めると美味。フライパンに油を熱し、ちりめんじゃこをかりっとするまで炒めたら、セロリも加えて炒め、しんなりしてきたら醤油と一味唐辛子少々で味をつけ、煎り胡麻をたっぷりまぶします。食欲の秋にぴったり、ご飯によく合います。

シソの実は水に浸けてアクを抜いてから、添付の唐辛子もいっしょに醤油に漬けると田舎のキャビア。ピリ辛が好きな方は唐辛子を細かく刻み、苦手な方は三等分ぐらいにして風味づけにお使いください。これもご飯かよく進みます。来週から小松菜、ルッコラといった青ものが出てきます。今回は最後の空芯菜でご辛抱ください。