非常事態宣言

2010年9月第2週

今週の野菜セット

左から

今週も太平洋高気圧はどっしり居座っているんでしょうか。なんかもう、腹立たしくなるぐらい、動く気配がないんですけど・・・。

腹を立てる元気があるのはいいほうで、お年寄りばかりか、牛や豚や鶏が大量に死にはじめています。安普請の畜舎、そのうえ密飼いというところでは、当然そうなるでしょうね。慈草卵を提供してくれている寺内さんのところでは、屋根の高い鶏舎で強制排気。鶏一羽分のスペースも通常より広いので、さすがに死者は出していませんが、それでも鶏の食欲が落ちているので、卵の質が落ちているそうです。卵殻が弱いため、使いものにならない卵も山のように廃棄されています。

需要に供給が追いつかない。今週もこの暑さが続くようなら、事態はさらに悪化すること必定で、今後、野菜ばかりか畜産物も高騰するんじゃないでしょうか。ロシアの旱魃で小麦の相場も高騰しそうだし、海水温が高くなれば漁獲量も減るでしょう。この暑さが終息したら、一変して厳寒のサバイバルがはじまるのかもしれません。

山の中でも木が枯れはじめています。紅葉を待たずに枯れる葉は、どれも没個性的なくすんだ色合い。かりかりに干からびて、枯れるというより炙られて落ちたという感じがします。

沢沿いを歩いても水がなく、ところどころに水たまりが残っている程度。先月あたりまで、か細い流れを維持していたところも、すっかり干上がってしまいました。水道の蛇口をひねると水が出てくる。そのあたりまえが不思議なぐらい、どこもかしこもからからに乾いています。

庭木も大木は持ちこたえていますが、根の浅い若い木々が枯れはじめています。焼け焦げたような無惨な姿と化した山椒、ユズリハ、スモークウッド、合歓の木を処分。葉先が変色しはじめた木の根元には、刈り取った草を積みあげてきましたが、それで持ちこたえてくれるといいんですが・・・。

これだけ降雨がないと畑はどうなるかというと、虫の天国と化すんですね。雨というのは虫の卵やサナギをかなりの量、処分してくれていたのがわかります。わが家の家庭菜園でも、ちょっと足を踏み入れると、小型の蜂のようなのがわっと舞い上がります。でも、これは蜂ではなく、青大豆に群がって葉っぱも実も食べてしまう草食昆虫。ようやく一人前の大きさになったカマキリやアシナガバチがせっせとそれを捕食しますが、とてもそれでは追いつかないほど。毎年、見かける虫ではありますが、これだけ大量に発生したのははじめてで、好子さんや青山さんの畑にもいるのかな、と思うと気が重くなってきます。

と、ここまで書いてきたところに青山さんから電話が入って、モロヘイアが全滅したとのこと。ここ二~三日でうちの畑にいるのとおなじような虫が大量発生。あっという間に食べつくされてしまったそうです。

虫が湧く好条件に加えて、長引く暑さに野菜たちもくたびれているはず。それをすこしでも改善するため、毎朝毎夕、用水路から水を運ぶ農家もくたくた。くたくたになりながらも、用水路にまだ水があることに驚きながら感謝する日々だとか。ちなみにこの用水路は江戸時代、二宮金次郎が櫻川の農家のために作ったものなんですよ。全長二十キロにも及ぶ立派なものです。

それが今もなみなみと水をたたえているんです。政治家の中で、これだけ長きにわたって人を助けるような事業をした人がいる?いないと思う。櫻川村はやがて二宮村となり、ついに二宮市というぐらい大きくなりましたが、独裁者以外で町の名前を変えてしまったのもこの人ぐらい。数年前の市町村合併で真岡市に統合され、二宮の名は消えてしまいましたが、それを惜しむ人も多いと聞きます。このあたりの農家は今も、ついこの間のことのように二宮金次郎のことを話題にするといいますからね。

しかし、いつまでも用水路に感激してもいられません。汲み上げられる水の量などたかが知れていて、畑全体が潤うわけではないのですから。

そこで好子さんがおそろしい提案をしてきました。雨乞いをしよう、というのです。どんな雨乞いかというと、畑の真ん中に火を焚いて、全員裸になって踊るんだって・・・。見たくない、といったら、あんたたちもいっしょに踊るんだからね。それじゃ、雨乞いというより猥褻物陳列罪じゃないですか。見てしまった人、ごめんなさいという感じです。

そんなおぞましいことをしないためにも、どうか雨が降りますように。パキスタンの農地に溢れかえって、いっこうに引く気配のない水を引き込むパイプラインでもあればいいんですけど。

今週の野菜とレシピ

今週は青山さんの枝豆が入ります。前回の枝豆がサヤに実が入ってなかったり、虫食いだったり、ご迷惑をおかけしたので、今回はサヤをはずしてひとつずつ確認しながらお送りします。両端をすこしずつ鋏で落とし、塩もみしてから湯がいてください。

芋茎(ずいき)というのは八頭の茎のこと。すこし前までは田舎でしか食べられていませんでしたが、夏の疲れを癒し、デトックス効果もあるというので最近は都会でも食べられるようになったそうです。でも、まだまだポピュラーではないらしく、売っているところはすくないようです。

食べかたは、ざくざく切って、そのまま味噌汁に入れるか、胡麻酢和え。胡麻酢和えのほうが量が食べられます。3センチぐらいに切りそろえて湯がいたものをザルに上げて荒熱を取り、たっぷりのすり胡麻と砂糖と醤油、酢少々で和えるだけ。しゃりしゃりした食感が売りなので、茹ですぎないようにしてください。冷蔵庫で2~3日なら保存もできます。

落花生2品

落花生。先週は塩茹でをおすすめしましたが、好き嫌いがあるので、今回はピーナッツ味噌の作りかた。落花生を殻から出すのがちょっと面倒かもしれませんが、それさえやれば皮をつけたまま多めの油でよく炒めるだけ。ほぼ同量の砂糖と味噌で味つけして保存食。益子にピーナッツ味噌の名人がいて、この人のには柚子の皮をきざんだものが入っていて、香りがとてもいいんです。冷凍庫に柚子の皮がありましたら、ぜひ加えてみてください。

いちばん手っ取り早いのは煎り落花生。これは天板に並べた落花生を120度のオーブンに30分ぐらい放りこんでおくだけ。自家製ピーナッツもたまにはどうぞ。


この暑い中、毎日毎日ご飯のおかずを考えなきゃならない主婦はたいへんです。わたしもそのひとり。それなりに工夫して、家族の食欲が落ちないよう努力してきたつもりですが、ついに先週、ぷっつり糸が切れてしまいました。そうなったらもうヤケクソ。その日の夕飯はすき焼きになりました。が、意外とそれが好評で、もっと意外だったのが空芯菜。すき焼きにぴったりマッチして、取り合いになったぐらいです。これは最後の最後に入れて、火を通しすぎないようにするのがおいしく食べるコツ。たまにはヤケクソになってみるのもいいもんですよ。