人も虫も冬支度

2010年11月第3週

今週の野菜セット

左から

小春日和が続いていますが、朝夕の空気は凛として、冬の気配が濃厚になってきました。

夏の間、夜遊びに忙しく、なかなか帰って来なかった犬も猫も早々に引き上げて、ソフアに長く伸びています。体毛にからみついた草の実を取っているうちに夜が更けて、秋の夜長を実感するところまでは行きませんが、日没は加速度的に早まっているようです。ほんとうに釣瓶落とし。

夕刻の散歩には懐中電灯が不可欠になり、朝の散歩には長靴が必要になりました。夜露で草がぐっしょり濡れているからです。もうすこしすると草が枯れ、それが凍ってぱりぱりと音を立てるようになる。山の中には落ち葉のカーペットが敷きつめられ、蜘蛛の巣に気を使うこともなくなって、散策には最高の季節になります。それと同時に狩猟が解禁。イノシシ用のワナも増えてくるんですけどね。

家の中に無数にできた蜘蛛の巣も、空き屋になったころを見計らって取り除きます。同時にに天井の埃も落とすので、わが家では年に一度の煤払いが今ごろになるわけです。

ついでに虫供養。しかし、中には越冬組もいて、蓑虫はせっせと小枝を集め、テントウムシやカメムシは人家に潜り込み、梁の上やら家具の隙間に身を隠します。薪小屋の中には、タバコのフイルター大のかわいい壺がいくつも、まるで薬莢のように並んだものができています。中身はカメムシの卵で、これが壺の中で幼虫になり、サナギと化して、春になると出てくるわけです。害虫なのですが、あまりにも壺が精巧にできているので、気の毒で壊せない。芸は身を助けるといいますが、カメムシの場合、陶芸家も顔負けの技術が子孫を守っているようです。

虫とは無縁になるはずが、ストーブに火が入るようになると、家の中は逆に夏よりにぎやかになるんですよ。暖かいものだから、春が来たと勘違いしたカメムシが、ソフアの隙間などから出てきて飛びまわる。ストーブ用の薪の中からはカミキリが羽化して、いっしょになって飛びまわります。

悲しいかな、カミキリは犬か猫に食べられてしまうんですけどね。カメムシは臭いがあるので食べられないけど、家人に見つかると外に放り出されてしまいます。夜中のうちにそれを捕って、隅のほうに隠しておくのも冬の仕事。カメムシに大豆をダメにされたときはクソーッと思うのですが、一匹一匹手にしてみると、一匹一匹が個性的でかわいらしい。家人が来ると警戒信号の悪臭を発するカメムシも、無害だと思っているのか、わたしのときは直接手で触れても臭わない。ちゃんと見分けているんです。そうなったらますます、寒空の下に放り出すなんて酷なこと、できなくなりますよね。

今年は紅葉が今ひとつ、といわれ、たしかに山全体がくすんだ色合いなのですが、どういうわけか隣家の楓がいつになく見事に紅葉しています。煉瓦色にちかいような赤でパッとしなかったのが、なぜか今年にかぎって燃え立つような深紅なのです。

こぼれ種があちこちから発芽して、庭といわず畑といわず、いろんなところから楓が出てくる。紅葉がぱっとしないので、抜いたり切ったりしていたのですが、こんなことならどれか一本ぐらい残しとくんだった、と後悔するぐらいです。過酷な条件下におかれると、花はきれいになるものですが、紅葉がきれいになったという話はあまり聞きません。

樹齢はおよそ三十年。ようやくオトナになったのか、それともとっておきの紅葉を披露してから衰退するのか、真相はわかりませんが、奥日光の紅葉も青くなるような番狂わせのうつくしさ。好子さんの家の柿が、ふだんはあまり実をつけないのに、まわりが壊滅状態のときにかぎってたわわに実をつけている。それと似たようなもんでしょうか。

樹木にも人とおなじように、天の邪鬼、へそ曲がりみたいなのがいるのかもしれませんね。

今週の野菜とレシピ

北海道から玉葱が届きました。が、今年は猛暑と旱魃、それに加えて秋以降の大雨で根腐れして、収穫量は例年の三分の一だったとかで、品質も例年より落ちているのに、値段は高騰してしています。そんなわけで、この冬は玉葱が貴重品。毎回800グラム前後でお届けすることになりますが、事情を酌んでお許しください。

大根はようやく立派になってきたようです。おでん、ふろふき大根ができるサイズになってきました。ブリのアラが手に入ったらブリ大根。これをおいしく作るコツは別々に下ごしらえをしておくことで、ブリのほうはたっぷりの熱湯で生臭みを取ってから、砂糖と醤油、酒で煮魚の要領で煮ておきます。大根は米のとぎ汁で茹でてから、ブリを煮た鍋に入れ、水を加えて味を含ませます。大根の上にブリを並べて、落とし蓋をして20~30分。仕上がりに柚子の皮を散らせば、プロも顔負けのブリ大根。冬の間に一度は作ってみてください。

里芋は皮を剥くのが面倒ですが、そのまま茹でで衣かつぎにすれば手間いらず。これをなにで食べるか、塩派と醤油派に別れていて、どちらも譲りませんが、わたしは醤油派。口あたりがマイルドなのと、里芋のつるりとした食感が損なわれないからです。ま、どちらでも、お好きなほうで・・・。

ほうれん草はおひたし、胡麻和え。小松菜京菜は使い道に困ったら、椎茸といっしょにスープにしてどうぞ。