遅い春

2010年4月第1週

今週の野菜セット

左から

ようやく、どうにかこうにか、やっとのことで春らしい陽気になりそうです。が、油断は禁物。朝晩はけっこう冷えこみますからね。

桜もようやく三分咲きといったところでしょうか。このあたりでは今週末あたり、花見のにぎわいが見られそうです。それにしても桜の花って、どうしてこうも人の心を浮き足立たせるんでしょう。

花見客が多いときには、桜の花もおとなしく舞台装置と化していますが、人っ子ひとりいないところで満開の桜に出会うと、もういけません。きれいを通り越して、鬼気迫るものがあるからです。桜よりきれいな花はたくさんあるけれど、これほど人を酔わせ、震え上がらせ、狂喜させる花はないでしょう。

今年もソメイヨシノにはじまって、山桜の花吹雪まで、これから長い酩酊が続きそう・・・。一年中でいちばん仕合わせなときかもしれませんね。

ウグイスのホーホケキョも、ここへ来て完璧になってきました。ほぼ一ヶ月で、みんなマスターするんですね。ホーホケキョが聞こえてくるたびに、上手、上手と手を叩いていたのが、やがてあたりまえになり、夏になるころには朝から晩までホーホケキョ。そうなるとちょっとうるさくなってくるのが身勝手というか、気温の上がり具合とぴったり符合しています。

ちょっと寂しいのは、ここ数年、ホーホトトケキョと啼くウグイスがいなくなったこと。あれは益子訛り、なんて勝手な想像をしながら、それが聞こえてくると自分だけの春が巡ってきたような、気温とはべつのあたたかさを感じていたのですが、みんな標準語になって、その分どこかよそよそしくなってしまいました。

キジの啼き真似をするカラス、ピーヨとしか啼けないトンビ、そういう個体が混じっていると、人の手の届かない自然界にあるものが、手元に舞い降りて来たような錯覚と親近感があり、ほのぼのとした気分になる。向こうはどう思っているか知らないけど、こっちは友達になったつもり、みたいな感じですから、馴染みのウグイスがいなくなって、知らない顔ぶればかりになってしまった。そんな寂しい春でもあります。

小鳥の声がにぎやかになってくると、山の中にイヤなものが増えてきます。カスミ網や取り餅といった捕獲用のワナで、この時期のそれはツグミを狙ったもの。食べたことはありませんが、ツグミは肉の味がいいそうです。捕まえて料理屋に卸す輩がいるんですね。

五月に入ると、今度はメジロを狙った囮が見られるようになります。カゴの中にオスだかメスだか、メジロの片方を入れておき、カセットで鳴き声を流すという手のこんだもの。声につられてカゴの中に入ったものが捕獲されるという寸法です。これはペットショップに持ちこまれるようです。

メジロは声もきれいだし、体色もきれいなウグイス色。花札の梅にウグイスの図はメジロを描いたもので、ほんもののほうは茶色っぽいくすんだ色をしています。そんなわけでファンも多く、農家の軒先でもよく見られます。捕らわれのメジロのカゴのまわりを、元のつがいが飛びまわり、餌を運んできたりすることもあったりして・・・。メジロは一度つがいになると一生連れ添うといいますから、これは悲恋物語どころか残酷物語。カゴの鳥ほどあわれなものはありません。

そんなわけで山の中を歩くときには、大きな袋が必要になってきます。カスミ網や取り餅はゴミといっしょにそこへ収納。でも、メジロ捕りの場合には、当の本人が近くに車を止めて寝ていたりしますから、ナンバーを控え、110番しなくてはなりません。もの覚えがわるいので、筆記用具も必要になってきます。犬の散歩に携帯するものが増える時期でもあるんですね。

でも、山の中の春なんてそんなもの。悠長に花見だけを楽しむわけにはゆきませんが、自然界が動きだせば忙しくなってくるのが人の世の常。季節の歯車のひとつとなって動きまわっているからこそ、たまに風邪をひく程度。この年になっても無病息災でいられるのかもしれません。

今週の野菜とレシピ

今週のメインはひさびさのキャベツですが、四国のほうでも雨と低温の影響で春キャベツの出荷が遅れているそうです。そんなわけで申しわけありませんが、今週は冬キャベツを使わせていただきました。

冬キャベツ

冬キャベツは冬の寒さに耐えるため、結球がしっかりしています。春キャベツのようにふんわりとは巻いていないので、葉もかたくなっています。したがって生食よりもロールキャベツ、ポトフといった煮こみ料理に向いています。簡単なのはベーコンといっしょに煮こむ方法。ベーコンは200~300グラムのかたまりを買って来て、1センチぐらいの厚さに切っておきます。キャベツは芯もいっしょに6~8等分して鍋に入れ、ひたひたよりすこし多めの水とベーコンを入れ、火にかけます。沸騰したら弱火にして、塩とオイスターソース少々で20~30分煮こむだけ。このときに入れる塩は、ベーコンの塩分も考えてひかえめに・・・。最後に塩加減を調整し、胡椒もたっぷり入れてください。


エシャロットは薄皮を一枚剥いて生食します。味噌をつけるのが一般的ですが、味噌とマヨネーズを半々に混ぜ合わせたほうが評判がいいみたい。生食はどうも、という向きはてんぷらで・・・。加熱すると、あの辛みが信じられないほど甘くなります。

ルッコラもベーコンと組み合わせると意外なおいしさです。こちらのほうは薄切りのベーコンを多めに用意。食べやすい大きさにして、オリーブオイルでじっくり炒めるのですが、その間にパスタを茹でておきます。ベーコンがカリカリになったところへ茹であがったパスタを入れ、きざんたルッコラも入れてひと混ぜしたら火から下ろします。塩、胡椒で軽く調味して完成。マヨネーズをすこし入れると子供受けもよくなりますから、春休みのお昼ご飯にどうぞ。