カラスの繁殖期

2010年3月第4週

今週の野菜セット

左から

ウグイスのケキョケキョケキョという、舌を噛みそうな拙い声が聞こえるようになったと思ったら、ホーホケ、ホーケキョケキョとだんだん上手になってきました。がんばれ、もうすこし・・・と、聞いているほうにも力が入ります。それを待っていたかのように、山の中がにわかに活気づきました。

朝早くからキジが鳴く。負けじとコジュケイもチョットコイ、チョットコイ。上空からはカラスに混じってトンビの声で、これもにぎやかになってきました。出足の遅いのがスズメで、わたしが散歩に出るころはまだ就寝中。犬が藪の中に飛びこむと、ものすごい数のスズメが飛び立ちますが、わたしたちが通り過ぎるとまた寝床にもどっているみたい。意外に思われるかもしれませんが、鳥の中ではいちばん寝坊かもしれません。

ともあれ繁殖期を迎えると、冬枯れの木立も藪も浮き足立ってきますから、植物もおちおち眠ってられないのではないでしょうか。ふくらみはじめた雑木の新芽が、可憐な花のように枯れ木を彩るようになりました。

繁殖期といえば、アラレちゃんの家の外箒、立てかけても立てかけても倒れているそうです。はじめは猫どもの仕業と思っていたのですが、どうもそうではないみたい。それが証拠に、箒の先が日に日に減ってゆくのですから・・・。猫は箒の小枝など、抜き取ったりしませんからね。

犯人はカラス。箒草みたいなものはどこにでも落ちていますが、長さがきれいに揃ったものとなると人工物にかないません。巣が設計図通りにきちんとできないとイヤいう、几帳面なカラスなのかもしれません。

アラレちゃんのところでは一時期、針金のハンガーがよく盗まれたので、この時期になると出しておいてやるそうですが、ここ数年、それは売れない。どうもカラスの巣作りにも流行があるらしく、年によって選ばれる巣材がちがうようです。今年は植物性の自然素材が売れる年みたいだから、業界はこれでひと儲けできそうです。

ま、金払いのわるい客ではありますけどね。その昔、動物性の素材が大流行したこともあります。その当時、うちには山羊がいたので、わたしはこれにずいぶん悩まされました。オス山羊には首から背中にかけて、かなり長い鬣(たてがみ)が生えています。これは装飾というより実戦用で、鬣を立てることによって身体を巨大化。相手を威嚇するという効果があります。だからオスにとっては角の次に大事なところです。

それが毎日、十センチぐらいずつ消えてゆくのです。皮膚病かと思いましたが、鬣だけが抜けるというのも妙な話。どこかにひっかけたのかとも思いましたが、どこにもそんなものは落ちていないし、当の本人も自慢の鬣が消えてゆくのがさほど気にならないみたいです。ひとり、わたしだけが見栄えがわるくなるのを気に病んでいたところ、ついに見てしまったのです。

山羊はカラスを背にとまらせてリラックスしているようでした。痒いところ掻いてやるから、その鬣もらっていいかな?ああ、いいよ。どうせまた生えてくるから・・・。そんな会話でも交わされているような光景でした。

そのころ、犬の円形脱毛症も流行っていました。獣医師からそれを聞いたとき、それってもしかしたら長毛種の犬じゃない?そうそう、なんでわかるの?わけを話すと、獣医師は大笑い。彼女も理由がわからなくて困っていたそうで、さっそく獣医師会に報告しなくっちゃ、ということになったのでした。

面白いのは、そういう流行が局所的ではないことで、上野周辺のカラスの巣にはシマウマやヤク、ラクダの毛などが使われていたそうです。多摩動物園の周囲ではライオンの鬣も巣材にされたんでしょうね。ただ、関東地方のデータしかなかったので、それが全国的な規模だったのかどうかはわかりません。が、かなり広い範囲で同時発生することは確かです。

アラレちゃんの話を聞いて、うちの箒を見てみたら竹箒のほうは無事でしたが、やわらかい草箒のほうは案の定スカスカになってました。そんなわけで、今年はあちこちで箒が坊主にされそうですが、関東以外はどうなのか。気になるところなので、遠くにお住まいで箒がダメになったという方がありましたら、かならずご一報くださいね。

今週の野菜とレシピ

今週はやわらかい春ニラが入ります。冬ニラは寒さにやられて病気が出てしまったので、新ニラが待たれていました。

ニラのおひたしナムル風

ニラは3~4センチに切って湯がき、鰹節と醤油、胡麻油少々をからめます。シンプルですが、ニラの甘さがいちばん引き立つ調理法。豆腐とニラの味噌汁もおすすめです。

京菜としめじの炒めもの

しめじは石づきを取り、ほぐしてたっぷりの油で炒め、塩、胡椒、オイスターソースをからめておきます。そこへ食べやすい大きさに包丁を入れた京菜を加え、塩分の足りないところを醤油で補ってできあがり。これ、ご飯がよく進みます。


春菊は酢と相性がいいので、さっと湯がいて、酢:1、砂糖:1、醤油:2の割合で和え、すり胡麻をたっぷり加えて・・・。胡麻とも相性がいいみたいです。

ラデイッシュはそのまま、塩またはマヨネーズでどうぞ。

青山さんのキャベツとブロッコリー。どちらも寒さでやられ、ニラとおなじ病気(ベト病)に罹ってしまったので、来週は愛媛の野口さんのグループから春キャベツが入ることになりました。

また、ブロッコリーの本体はダメになってしまいましたが、わき芽が出ていますので、野菜たっぷりセットの方にはそれが入ります。