暑い、暑い

2010年8月第4週

今週の野菜セット

左から

お盆を過ぎてもまだ暑い。

今年の太平洋高気圧はタフというか、しぶといですねえ。「参りました」と、みんなで南に向かって土下座でもすれば、秋風の通り道を開けてくれるんじゃないかしら。そんな馬鹿なこと、並みの暑さでは思いつきませんものね、それだけこの夏の暑さが尋常ではないということです。

暑さに弱いのは哺乳類だけではないようで、今年はスズメバチもアシナガバチもほとんど姿を見かけません。毎年、この時期になるとスズメバチの被害が話題になるのに、それも聞かれませんからね。夏のはじめ、イチジクの木にジョロウグモが巣を作っていたので、そろそろ巣もクモも大きくなったころだろう、とカメラを片手に表敬訪問したところ、痕跡もなく消えていたぐらい。大型の昆虫も、この暑さには耐えられなかったと見えます。

でも、かれらは死に絶えたわけではなく、地中や朽ち木の中で酷暑を避けながら、秋風が吹くのを待っているはず。気温がほどよくなったところで、遅れていた活動を開始するんじゃないでしょうか。そうでなければ、種を絶やすことになってしまいますからね。

虫の息の人類のみならず、本家本元・虫のためにも、そろそろ涼しくなってもらわなくっちゃ・・・。

熱中症で倒れる人も続出。体力のない老人ばかりか、台所で食事の支度をしていた主婦まで倒れる始末。でも、不思議とレストランの厨房で働いている人が倒れたというニュースはありません。あの人たちこそ、高温のオーブンを背に、ぐらぐら煮立つ鍋や炎を上げるフライパンに囲まれているのにですよ。プロとアマの差っていったいなんだろう、と素朴な疑問にかられる夏でもありました。

でも、厨房で働くコックさんたちは、休憩時間にはクーラーの効いたところに避難できます。もっと過酷なのは、道路工事なんかの交通整理をしている人たち。工事に携わっている人は薄手のTシャツ姿ですが、交通整理の人ってみんな厚ぼったい長袖、長ズボンに手袋までしているのです。暑さは炎天だけでなく、足元のアスファルトからも容赦なく立ち昇ります。

ホームセンターの駐車場にいた交通整理のおじさんが、やさしそうだったので、思い切って尋ねてみました。ねえ、暑くないんですか?おじさん、笑いながら「そりゃ暑いよ。でも、慣れてるから・・・」

なにか特別な下着を着けているのかというと、ふつうの木綿のアンダーシャツ。冷えピタとか張ってないの?あんなの金がかかりすぎるから張ってられないよ。熱中症になったことは?あれはね、贅沢病みたいなもん。気が張ってないから倒れんじゃないの?

気持ちの問題だけでなく、体力の問題もありそうですが、プロとアマの差ってそういうことだったのか、と思いましたね。そういや、農家も暑苦しい恰好で畑仕事をしています。長袖、長ズボンは直射日光から肌を守る役目を果たしていますから、逆に体力を消耗させないそうです。

制服を脱いだときは気持ちがいいでしょう、といったら、そりゃもう極楽。うちじゃクーラーなんか使ったことないからね。必要ないもん、という返事で、別れ際、深々と最敬礼しちゃいました。

農家のみなさんはどうしているかというと、好子さんは毎朝四時前から起き出して茄子の収穫。茄子は薄暗いうちに収穫するもので、日が高くなって採ったんじゃ、ボケナスになっちゃうんですって。果肉に締まりがないんだそうです。家庭菜園じゃ、みんなボケナスに甘んじてますけどね。

それから空芯菜のような葉もの、きゅうりや枝豆を収穫して、最後がピーマン。それを納品して、わたしとお喋りなどしているうちにお昼になって、昼休み。今年は昼休みが長いから、まるで夏休み。酷暑のおかげで、いつもの夏より身体が楽なんだそうです。やっぱ、プロはいうことがちがいます。

青山さんも薄暗いうちから起き出して、畑に出るところまではおなじですが、彼には田圃があります。そこの除草があるので、そうそうゆっくりはしていられない。無農薬米を作るのって、技術的にはそれほどむずかしくないそうですが、この除草がたいへんなんですね。水に入るわけだから、畑より涼しいと思われるかもしれませんが、水面が陽光を反射するので、逆に地面の輻射熱より暑くなるそうです。

でも、金曜日に野菜を納品し終えると、彼は毎週末別荘に出かけているんです。岩手県安比高原といったら有名なスキー場。そこにペンションを持っているのですが、この不景気で客足がないものですから、キノコ仲間の宿泊所になっているわけ。彼にいわせると、平べったいところにずっといると息が詰まりそうになる。だから山に入るそうです。

放っておいたら、山に入ったきり帰ってこないので、こちらは気が気ではありません。何度か、わたしが代わりにモロヘイアやゴーヤを収穫したことがあるぐらい。今年もそれをアテにしているようなので、わたしは痛くもない脚をひきずったり、腱鞘炎が悪化したふりをしてみたり・・・。八百屋稼業も楽ではありません。

福田さんにいたっては、高校野球の予選がはじまると仕事どころではなくなって、やっと終わったと思ったら、トマトの収穫も終了という体たらく。好子さんが三人いてくれたら、野菜セットの内容ももっと充実するんじゃないかと思うんですけどね。

今週の野菜とレシピ

ようやく好子さんの枝豆に実が入りました。先週のにわか雨が効いたようです。枝豆は収穫後、時間が経つにつれ甘みがなくなるので、なるべく早くお召しあがりください。

サヤの両端を鋏で落とし、水洗いしてからたっぷりの塩で揉むとサヤの表皮がなめらかになり、色もきれいに仕上がります。湯がいた後、流水にあてて表面を冷ますのも色落ちを防ぐコツ。最後にもう一度塩をふってください。

この暑さでピーマンは木が枯れてしまいましたが、オクラゴーヤは元気です。とくにゴーヤは元気があり余っているようで、その重みで支柱のほうが支えきれなくなっているそうです。そんなわけで今週いっぱい、支柱が踏ん張れるかどうか・・・。勢いがありすぎて、今週いっぱいで姿を消してしまうそうですから、あんまり元気なのも考えものかも。

今週は生姜ニンニクが入りますが、どちらも茄子の素揚げと相性がいいんです。適当な大きさに切った茄子を素揚げにして、生姜醤油かニンニク醤油で・・・。意外とニンニク醤油のほうが口あたりがあっさりしていて、たくさん食べられます。

空芯菜はニンニクといっしょに強火でさっと炒め、塩、胡椒、オイスターソース少々で調味。暑いときはやっぱりエスニック料理がいちばんです。ゴーヤといい、空芯菜といい、日本も亜熱帯になったんだなあ、と詠嘆しながら、郷に入れば郷に従えでせっせと作り、せっせと食べる野菜になったわけですが、こういうものを食べてないと、この暑さには耐えきれないのかもしれません。しっかり食べて残暑を乗り切りましょうね。