ヤマユリの里より愛をこめて
2010年7月第4週

左から
- モロヘイヤ
- ピーマン
- トマト
- トウモロコシ
- オクラ
- ナス
- キュウリ
ようやく梅雨が明けたと思ったら、いきなり暑さがピークに達してしまいました。この近所でも、草むしりをしていた人が亡くなっています。高齢者も要注意ですが、まだまだ体力に自信がある三十代の男性もハウスの中で昏倒したりしていますから、用心の上に用心を重ねたほうがよさそうです。
先週「逆避暑」などといって、熱さで暑さをやわらげる方法など書きましたが、ほどほどにしといたほうがよさそうですね。熱中症対策には水分補給がいちばん。さいわい、この国はどこに行っても自販機がありますから、クラッときたら缶ジュースをもったいないけど二本買って、脇の下に挟んでください。飲むのはそのあと・・・。
水分だけでなく、塩分の補給もお忘れなく。好子さんは畑に出るとき、ペットボトルに水と梅酢少々を入れ、冷たくしたものを持参するそうです。陶芸家がひと晩もふた晩もつきっきりで登り窯を焼くときも、大きな薬缶に梅酢と氷水を用意。それで水分と塩分を補給しながら薪をくべ続けます。大きな窯元では、そのためだけに梅干しを漬けることもあるそうで・・・。梅酢には塩分だけでなく、クエン酸が含まれるので疲労も緩和されるんですね。
水+塩分+クエン酸で、この殺人的な暑さを乗り切るとしましょうか。
今週は酷暑もすこしはやわらぐという話でしたが、どんなもんだか。暑さがやわらぐというより、身体が暑さに慣れていくらかしのぎやすくなる、といったほうがいいのかもね。
この暑さで、犬も散歩に行きたがらなくなりました。直射日光の当たらない山道、それもこの時期は沢沿いを選んで歩くので、アスファルトのような輻射熱もなく、水遊びをしながら、ときに沢ガニを追いかけ回すこともできるという贅沢なコースであるにもかかわらず、です。走り回るより、木陰を移動しながらぐうたらしているほうがいいみたい。まだ一歳にもならない若者がなにをいってるんでしょう。
ま、朝か夕、どちらかはいっしょに歩いてくれますけどね。飼い主が犬に頼みこんで散歩に出るというのもなんだかなあ。主客転倒ではないか、と思いつつ、ヤブ蚊に献血などしながら歩いているのですが・・・。
今、山の中では、あちらこちらでヤマユリが咲いています。ヤマユリは益子の町花になるぐらいポピュラーなものでしたが、近年、イノシシが増加するにつれ、希少なものになりつつあります。野生のヤマユリは絶滅寸前、ともいわれていますが、崖っぷちなど、足場のわるいところにはちゃんと残っていて、強い芳香を放っています。
この花を、鮎釣りをする人たちは嫌います。なぜかというと、これが一輪でも沢沿いに咲いていると鮎がケンカをしなくなるからで、友釣りができなくなるんです。友釣りというのは、囮の鮎を泳がせて、テリトリーを侵犯されたネイテイブの鮎が攻撃してきたところを釣りあげるという手法。それが余所者の侵入を気にする風もなく、いっしょになって流れに逆らいながら泳いでいたのでは話にならない。ヤマユリが咲いている間、釣りはおあづけになるというわけです。
うちの犬も、もしかしたら暑さではなく、このヤマユリのせいで散歩の楽しみが半減しているのかもしれません。野ウサギを見かけても、追いかける気になれない。沢ガニが岩陰からわらわら出てきても、なぜか、いつものように興奮できない。なんとなく面白くない。スリルもない。つまんない・・・。それが正解だったみたいです。
田舎の人が都会の人より穏やかなのも、日本人が西洋人よりおとなしいのも、もしかしたら山の中にひっそりと咲くこのユリのせいだったりして・・・。ヤマユリの花にそんな威力があるのだったら、世界中の紛争地域にこれを植えてまわったらどうだろう。ペンタゴンの中庭あたりにも植えてみたいもので、草の根運動ならぬ、百合根作戦。声高に反戦や平和を叫ぶより、はるかに効果的かもしれません。
そのためには、まずヤマユリを保護。数を増やす必要があるのですが、この根がまた美味ときていますから、イノシシに食べるなといっても無理な話で、人におなじことをいってもたぶん無理。何事も思いつくのは簡単ですが、いざそれを実現するとなるとむずかしい課題がいっぱいで、いつも腰砕けになってしまうんです。
でも、今回はちょっとちがいます。日本の山中からヤマユリの波動を世界中に発信する、そういう装置に自分自身がなれたらどんなにいいだろう。なりたいと思えばなれるんじゃないか。なってやろうじゃないか、と意欲的。真夏の夜の夢で終わらせるにはもったない名案ですものね。
今週の野菜とレシピ
トウモロコシの炊き込みご飯
今週は青山さんのトウモロコシが入ります。トウモロコシは湯がいてしまうと、一人分のおやつにしかなりません。家族全員で楽しむには、炊きこみご飯がおすすめ。トウモロコシ2本に対して、米は2合半から3合ぐらい。トウモロコシは包丁を使って実を削り落とします。水加減はふつうの白米とおなじ。豆ご飯同様、塩味で炊きあげます。
甘みがあって、香ばしくて、グリーンピースの豆ご飯より美味。食欲がなくても食べられそうですが、この暑さですから日持ちがしません。冷めたのをおにぎりにするとおいしいのですが、翌朝にはすこし粘りが感じられるほど傷みが早いので、酢をほんの少々、風味を損ねない程度に入れて炊くか、残りご飯の真ん中に梅干しをのせておくと、翌日のお昼ぐらいまで大丈夫、おいしく食べられます。
茄子、ピーマン、オクラは素揚げにして、そのまま天つゆに浸ける揚げびたしがおすすめ。残ったものは冷蔵庫に入れておくと、翌日、もっとおいしくなっています。
モロヘイアはさっと湯がいて、鰹節をのせ、おひたしでどうぞ。