夏の鳥・夏の虫
2010年6月第2週

左から
- 小松菜
- 春菊
- オカヒジキ
- 新タマネギ
- スナップエンドウ
- カリフラワー
ようやく日射しがもどって来て、初夏らしい気候になったと思ったら、もうホトトギスの声。ウグイスとならぶ夏鳥の代表です。これからは散歩中も畑でも、この両者の競演が響き渡り、それに混じって名前はわかりませんが、ピーチピーチピーチと甲高い声を出すものや、畑でなにかをしているときにかぎってミステーク、ミステークと騒ぎたてる声。にぎやかな夏のはじまりです。
気候もこのまま順調に夏に向かってくれるといいんですけどね。
山を下りると、あちらこちらに黄金色の麦畑が広がっています。麦秋を迎えた畑の上を飛びまわるのは「麦蒔き」という小さな鳥で、尾を振りながらピッピッピッピッピとリズミカルな啼きかたをします。
農道の途中に車を止めて、この声に聞き入りながらうたた寝をするのがささやかな贅沢で、急に気温が高くなったときなど眠気に襲われることがあるでしょう。そんなとき、交通量のすくないところへ入りこんでシートをバタンと倒すと、もう夢見心地。ピッピッピを聞きながら眠りに落ちて、しだいに大きくなってくるピッピッピで目をさますというわけです。ちょっと電子音の目覚まし時計に似ていますが、目覚めの爽快さがちがう。目覚まし時計なら投げつけたくなるんでしょうが、こっちはつい口もとがゆるんでしまうんですね。
軒下のツバメたちも饒舌で、家の中まで賑やかになってきました。親たちのお喋りに加えて、ヒナが孵り、親が帰ってくるたびにかれらがいっせいに啼くからです。顔中が口みたいな大口開けて、ジャジャジャジャジャというような啼きかたをする。親も子も美声とはほど遠いのですが、こっちも口もとがゆるんできます。
鳥たちは順調というか、いつもの夏と変わらない動きを見せているのですが、気になるのが虫の世界。この事務局には毎年いやというほどアシナガバチが営巣するのに、今年はそれがひとつも見あたらないのです。
去年、夏の終わりにスズメバチが到来。巣の中にあった卵や幼虫が食い尽くされるという事件がありました。その影響でしょうが、次世代が育たなかったのか、それとも女王蜂だけは生き残ったけれど、ここは危険ということで敬遠されてしまったか。どちらかというと後者が好ましいのですが、これまで夏になるとアシナガといっしょに仕事をしてきたものだから、なんか物足りないというか寂しいのです。
「スズメバチが来たのはわたしたちのせいじゃないのにねえ」
「でも、守ってやれなかったわけだから・・・」
スズメバチが来ると、箒を手に飛び出して行きましたが、敵はなかなか諦めない。わたしたちも仕事があるので、一日中見張っているわけにはゆきませんから、ひとつ、またひとつとアシナガの巣は陥落していったのでした。
ハエや蚊は例年通り、ぼちぼち姿を見せはじめているんですけどね。おまえらは来なくてもいいんだよ、といっても来る。スズメバチもこういう連中をやっつけてくれればいいのですが・・・。
もっとも山の中では大スズメバチがアブの幼虫を捕食してくれています。その女王が今、巣作りをしています。大スズメバチの女王というと体長が七~八センチありますからね。迫力があります。山の中で会うと、胸に手をあてながらユア・マジョリテイーと最敬礼。それぐらい威厳があって、蜘蛛の巣など平気で破って飛んでゆきます。
わたしなんか平民だから、蜘蛛の巣はなるべく破らないように気をつけているんですけど、それでも逆光で見えなかったりすると破ってしまう。申しわけないと思いますが、女王陛下はクモなんか虫けらぐらいにしか思ってないのでしょう。ま、女王なんだからしかたかないか。
それよりも黄色スズメバチが減っているのが気にかかります。黄色スズメバチもアシナガも野菜や果樹につく虫を捕食してくれる戦士なので、数が減っては困るわけです。賑やかな夏鳥の声が聞こえてきたら、蜂の羽音も聞こえてこないと夏にはならない。気温がいくら上がっても、それは病んだ夏でしかないのです。
アシナガの巣を狙うヒメスズメバチなら、いなくなってもいいと思うのですが、しかし待てよ。ヒメスズメバチがいなくなったらなったで、自然界のバランスがまたひとつ壊れることになる。そうなると、またどこか別のところでツケを払わねばならないんでしょうね。
今週の野菜とレシピ
気温が上がると野菜の生育も急によくなるかというと、残念ながらそうではなく、低温障害をひきずりながら、なんとか体勢を持ち直そうと努力しているため、なかなかむずかしいようです。
そんなわけでブロッコリーが入りますが、カリフラワー、きゅうりと抱き合わせで、どれかが入る形になります。
そらまめも全員にお分けしたいのですが、スナップエンドウで代用させていただくことがあります。申しわけありませんが、気候が気候なのでご了承ください。
オカヒジキはさっと湯がいて、醤油とマヨネーズで食べるか、芥子醤油和え。しゃりしゃりした食感が売りですが、それだけでなくビタミンA、カリウムが豊富。カルシウムもほうれん草の倍含まれているそうです。ほんとうはもっとたくさん入れたいところですが、こちらも生育が遅れているそうです。

オカヒジキ
小松菜、春菊はおひたしか胡麻和えで・・・。このまま気候が安定してくれれば、野菜の種類も量も増えてくると思います。今しばらくご辛抱ください。