季節外れの台風

2010年11月第1週

今週の野菜セット

左から

急に寒くなりました。ようやく扇風機をかたづけたところなのに、あたふたとストーブの準備、布団の入れ替え、猫用の電気あんかを引っ張り出して・・・と、てんてこ舞いの一週間になりました。

かと思えば台風情報。台風十四号は十月三十日午前九時現在、紀伊半島沖を北上中。夕方には関東地方に上陸するおそれもあるそうです。今ごろ台風だなんて、どうなっているんでしょう?

こちらではようやく紅葉がはじまったばかり。例年より色づきがわるいといわれていますが、なかなかどうして見事なもんです。朝起きて、南側の障子を開けると、眼下には燃えるようなオレンジ色の夏椿。東のほうに目をやると、こちらは黄色くなりかかった辛夷の巨木。畑のむこうでは、深紅のブルーベリーが道路と庭を隔てています。

真夏の暴力的な百花繚乱より、人生も半ばを過ぎたわたしなどには秋の錦絵のほうがしっくり来るのですが、これも強風で飛ばされてしまうのでしょうか。いずれ木枯らしによって一掃される運命にあるとはいえ、まさかこの時期に台風と遭遇するとはねえ、樹木たちもびっくりしているにちがいありません。

気の毒なのは果樹農家です。ただでさえ、例年より収穫量が激減しそうなのに、わずかに残った果実が今度は風雨にさらされるのですから、気が気ではない。収穫できるものは今のうちに・・・と、全員が畑に出てしまうので、台風対策などしている余裕もないそうです。果実だけでなく、農家のみなさんも無事に台風をやり過ごすことができますように・・・。

雨の中、強くなりかけてきた風の中を、カラスが流れるように飛んで行きます。トンビは営業を諦めて、どこかで羽を休めているみたい。不規則な風の中では、上空を旋回することもできませんからね。

こんな天気でも、いつも通り出勤しているのがサギの幼鳥。身体が大きい分、影響を受けにくいんでしょう。刈り取られた稲の根元から新しい葉が萌え出して、このところの雨でけっこう育ち、一見麦畑のようになっている。そんなところでなにを捕っているのか、せっせと地面を突いています。カエルも今ごろは、それほど深く潜っていないのかもしれません。

秋の虫がみんないなくなって、後に残された捕食者・カマキリも産卵を終えたようです。あとは死を待つのみの彼女たちも、死ぬときは畳の上と決めているのか、ぞろぞろと薪小屋に集まって来ます。畳こそありませんが、雨風はしのぐことができますからね。薪の山のあちこちに居場所を定めたら、後はじっと動かなくなって、まるで置物のようになります。これがうちのささやかな菜園を守ってくれた、誇り高い女戦士たちの墓地というわけ。

そんな中にオスが混じっていることがあります。オスはメスの半分ぐらいの大きさなので、すぐに見分けがつくのですが、メスたちに囲まれて、はたして彼が穏やかな死を迎えることができるのか。せっかく交尾後、生き延びることができたのに、ここで最後の晩餐になったのではかわいそうなんだけど、そんなところを選ぶぐらいですから、覚悟はできているのかもしれません。最後にモテまくって死ぬというのも、カッコいいかも。ダンデイーなカマキリ野郎なのかもしれません。

嵐の前の静けさに、みんな息を潜めているかのよう・・・。わたしも早々に帰宅して、家のまわりをかたづけたいと思います。

と、ここまでが先週末に書いた分。明けて十一月一日月曜日、強い勢力を維持しつつ関東地方に接近していた台風の事後報告です。

家のまわりの飛びそうなもの、バケツや如雨露といった小物から、役目を終えた葦簀といった大物までえっさ、えっさとかたづけて、転倒しそうな植木鉢も避難させ、さあ、矢でも鉄砲でも持って来い、と構えていたところ、いつまで経っても静かに雨が降るばかり。強まりかけていた風もすぐに止んで、夜更けには雨も止んでしまったようです。

農家も気合いが入っていただけに、肩すかしを食らってがっかりした模様。人騒がせな台風情報でしたが、がっかりしようが腹が立とうが、こういうことは外れてくれたほうが助かります。凡庸でも退屈でも、平穏無事がいちばんですものね。

そんなわけで、畑の被害はゼロ。ただ、台風の通過後も雨が続いているので、野菜が泥まみれになっているかもしれません。濡れた野菜は傷みやすいので、お手元に届いたら新聞紙の上に広げ、水気を取り除いて保管してください。乾くとしんなりして、勢いがなくなったように見えますが、使う直前、水に浸けると生き返ったようにパリッとなります。

今週の野菜とレシピ

ついに青首大根が登場しました。パンパカパーンとファンファーレが鳴り響きそう・・・。先月、日光は戦場ヶ原の青首大根を使わせてもらいましたが、好子さんの大根を調理してみると、切断面のみずみずしさ、透明度がまるでちがいます。来年は、どんなに遅れても好子さんの大根を待つことにします。

大根のレシピなど不要でしょうから、ここではおいしい大根の見分けかたを講釈するとしましょうか。大根おろしにしたとき、水分が流れて目減りするのがふつうの大根。パワーのある大根は摺りおろしても、水分をしっかり握って放さないので、ぼってりした感じに仕上がります。色合いも白ではなく、半透明。こういう大根は生食はもちろん、煮ても炒めても美味。火の通りも格段に早くなります。

青菜の種類もほうれん草小松菜春菊と冬バージョンになってきました。

ほうれん草はさっと湯がいて、おひたしか胡麻和えで・・・。春菊はサラダにしてみてください。スライスしたりんごと春菊に、酢:1、油:6、塩、胡椒、醤油少々をとろりとするぐらい攪拌したドレッシングをかけます。春菊のさわやかな香りと、ほのかな甘みが売りのサラダ。ほうれん草も同様に生食してもおいしいですよ。

かぶは一夜漬けか味噌汁で・・・。虫食いのない、きれいな葉っぱもいっしょに使ってくださいね。

小松菜と椎茸のスープ

小松菜はスライスした椎茸といっしょにスープがおすすめ。昆布と鰹節で取った出しが理想的ですが、椎茸がいい味を出してくれるので、水から煮てもけっこうおいしくなるみたい。味つけは塩とオイスターソース少々で・・・。わが家では味噌汁よりこちらのほうが評判がいいみたいです。