ケータイ電話の功罪

2010年7月第1週

今週の野菜セット

左から

先週、この欄で文句をいったのが功を奏したのか、梅雨らしい雨が続いています。さみだれをあつめて早し最上川、じゃないけど小貝川や五行川も水量が増し、流れが早くなっています。滔々とした流れが秋の豊饒を約束してくれるかのよう・・・。

川の水というのは、ちょろちょろでは情けない。かといって過剰でも不都合で、濁流になると凶器に変貌。せっかくの水が田畑を台無しにしてしまいます。ほどほど、いい加減というのがいかにたいせつか。不足と過剰のはざまに追いつめられてはじめて、わたしたちも「ふつう」のありがたみを知ることになったのですが、その割には生活スタイルが変わらない。もっと便利に、もっと快適にって、その快適さが自然界を不快にしているというのにね。

便利なものも、災害時や非常時にはなんの役にも立ちません。携帯電話が普及して、電磁波が急増したおかげで渡り鳥の苦労が増えた。レースから脱落する伝書鳩も増えたそうです。そういう鳩を保護。協会に問い合わせても、脱落した鳩はレースには使えないので、勝手に処分してください、といわれるそうで、そんな鳩ばかり飼っている人もいるぐらいです。

そんなろくでもない携帯電話を、とうとうわたしも持たされました。わたしの住んでいるところは電波が届かないので、持っていても意味がなかったのですが、最近アンテナが新設されて、こんな山間部も世間並みになったという事情もあって、いやいや持つようになったのですが、持ってみるとたしかに便利。災害時にはなんの役にも立たないかもしれないけど、ふだん、とくにこの時期には重宝しています。

山の中、それも人目につかないところに停められている不審車が、この時期とくに増えるからで、山菜採りにはちょっと遅い、キノコ採りには早すぎるというのになにをしているかというとメジロ捕り。囮のメジロをカゴに入れ、それで異性を呼び寄せる方法で、あっちでもこっちでもそんなことをやっている。

これまでなら、記憶力が低下する一方の頭で車のナンバーを暗記。それをお呪いみたいに唱えつつ、急ぎ足で帰宅して交番に通報という面倒な手順があったのですが、ナンバーは写真機能を使えばばっちり。歩きながら通報できるので、場所も正確に伝えることができるというわけ。

メジロはつがいになると生涯連れ添うのがふつうです。囚われの身になった夫か妻のもとに、もう一方が寄り添い、カゴ越しに食べ物を与えるなどという涙ぐましい光景も見られるぐらいで、これは拉致問題ではないかというわけで、わたしは密告者に身を落としてもそれを阻止したい。一度ならず、二度・三度とおまわりさんに不審尋問されれば、趣味でやっているにせよ、小遣い稼ぎにせよ、連中も諦めるでしょうからね。

田舎のおまわりさんは、どんな通報にもイヤな顔をせず、すぐにパトカーを寄越してくれます。ヒマなのかもしれませんが、そんなことは思っていてもいっちゃあいけない。そのうちお茶菓子でも届けなくっちゃ、と思いつつ、あ、でも、それって賄賂になるかも。密告したうえに贈賄じゃヤバすぎる?でも、まあ、ほんの気持ちだからいいか。いいんじゃない?なんて、ひとりでぶつぶついってるしだい。

もうひとつ、携帯電話の便利なところは、山の中で見つけたキノコがすぐに写メールできるところで、梅雨時にはいたるところ、いろんなキノコが出ています。もちろんほとんどが食べられませんけどね。でも、かわいいのから毒々しいのまでいろいろあって、そういうの、図鑑を見てもなかなか素性がわからないものなんです。

で、キノコ採りの名人に写真を見せる。そうすると、いちばんかわいい姿形をしているのが猛毒だったりして、でも、これ、うちの山羊は好んで食べてたんだけど・・・なんてことになったりする。かと思うと、真っ赤なのがタマゴテングタケといって、食用だったりするんです。

山羊が毒キノコを食べていても、それが白色レグホンの卵みたいにかわいいもんだから、なんとなく安全だろうと放っておいて、イースターエッグのような赤いのに口を近づけると、慌てて制止したりしていたのです。まるで逆のことをやっていたわけ。でも、山羊のように胃が四つもあると、キノコの毒も難なく消化してしまうそうで・・・。そのくせ、ツツジ科の植物はほんのすこし口にしただけで、泡を吹いて倒れたりするんですけどね。

さっそくその毒キノコみたいなタマゴテングタケ、ズッキーニといっしょにスープにしてみたら、美味でした。ごちそうさまでした。

今週の野菜とレシピ

トマトが入りました。これが出てくると、箱の中が夏らしくなります。ただ、トマトだけは苗の時期に二回、消毒散布しています。これをしないと花をつける前に病気にかかりやすくなるからで、通常一回のところ、今年は春先の気候が安定しなかったため、二回になったそうです。それ以降は定期的に醸造酢を撒いて対処しています。

ピーマンの量が安定しないため、今週はオクラと抱き合わせになりました。オクラは湯がくより、熱湯をまわしかけるぐらいのほうが美味。小口切りにして鰹節をかけ、酢醤油でお召しあがりください。

ズッキーニ、もしかしたら先週のがまだ残っているかもしれません。これはカボチャの仲間なので保存が利きます。野菜ボックスに立てて入れたほうが、寝かせるよりも鮮度が保持できます。

ラタトゥイユ、スープで夏野菜

茄子、トマト、ズッキーニと揃ったらラタトウイユか夏野菜のスープに・・・。スープには玉葱、じゃが芋、ズッキーニ、トマトを使います。いずれも食べやすい大きさに切って、お好みでベーコンといっしょに水から煮ます。野菜がやわらかくなったところで塩と一味唐辛子、オイスターソース少々で調味。どういうわけか、胡椒より唐辛子のほうがトマト味のスープには合うようです。最後に小口切りにしたオクラを入れて完成。これはたくさん作って、毎日火を入れながら食べてください。


ネギは薬味用。冷たい麺類の出番が増えてきますが、小口切りにしたネギに擦り胡麻をたっぷりからめると香りがよく、栄養価も高くなります。胡麻を擦るのがめんどうなら、煎り胡麻を親指と人差し指でひとひねりしてから加えてください。