焚き火の効用

2010年11月第4週

今週の野菜セット

左から

紅葉が舞いはじめました。かさこそと囁くような音を立てて枯れ葉が落ちてくると、まるで内緒話でも聞いているような気分になります。ところが朴葉のような大きいものが落ちてくると、がさっという音にびっくりして、おそるおそる振り返る。藪の中に侵入者、はたまたイノシシがいるんじゃないかと思うんですね。

風が吹けば大量に舞い落ちて、それが顔に当たると痛いほど・・・。山道を覆いつくした落ち葉も、右往左往しながら掃き寄せられ、吹き溜まりの小山がいくつもできます。山道で遭遇するのも、キノコ採りから落ち葉を集めに来る農家に変わり、ときに猟犬を連れた一群にも出くわすようになりました。

猟犬はみんな軽い躁状態みたいで、興奮気味。首に鈴をいくつもつけているのは、獲物を追っている間、飼い主に居場所を教えるためだそうです。それがいっせいに鳴りはじまると、うちの犬はびびって動けなくなってしまう。ライフルを持ったおじさんたちに笑われながら、犬にもプロとアマがあり、その差って大きいんだなあと思いました。

イノシシ用のワナもこの時期になると増えてくるので、要注意。去年はわたしがかかってしまいましたが、大事には至りませんでした。そのワナも年々改良されて、簡単には外せなくなっているそうです。もがけばもがくほど締めつけてくるという残忍なもの。人気のない山道でも、犬を好き勝手にさせられなくなりました。

この時期になると、あちこちで落ち葉焚きの煙が上がります。車で走っていても、あの独特の芳香が漂ってくるぐらい。中には田圃一面に広がったで稲藁を焼いていることもあり、風向きによっては視界が遮られることもあります。これは晩秋の風物詩。一見、のどかな光景ですが、これを自分でやるとなるとけっこうな重労働です。

落ち葉をかき集めたり、夏の間に刈り取った草をはこんだりしているうちに汗だくになり、着替えをしないと風邪をひくぐらい。そんなわけで、焚き火にあたることはまずありませんが、すこし離れたところで香りを楽しみます。そして白い煙が畑を這い、風に吹き上げられて樹木にからみつくのを目で追いながら、植物たちの無病息災を祈願する。焚き火の規制が年々厳しくなっているようですから、これもそのうちできなくなるかもしれません。

そうなったら、有機栽培はますますむずかしいものになりそうです。実際、この煙の効果というのは絶大で、いつか毛虫が大発生したときなど、コナラの下に立っただけで、毛虫が葉を食べる音がざわざわと聞こえてくるほどだったのが、たった一回の焚き火でしんとなってしまったのです。毛虫が大発生したのには理由があって、その当時は落ち葉焚きなどしていなかったんですね。山の中のように、落ち葉が自然と堆肥になってくれると思っていたからです。

でも、山の中と庭先や畑では環境がちがっていたんです。地面に積もった落ち葉は蛾の卵の温床になりますが、庭先にはそれを捕食する虫がいないか、いてもすくない。だから卵を孵化させないためには、落ち葉焚きか、人工的に堆肥にして温度を上げるしかないのです。そんなわけで、一部は堆肥。残りはひと山ずつ火をつけて、まんべんなく全体に煙が行き渡るようにするわけで、薪ストーブから出る煙も防虫にひと役買ってくれているようです。

この山から出る膨大な天然資源を、都会のようにゴミ袋に入れて出さなくちゃならないようになったら、日本の農業はおしまい。その弊害は、昨今話題になっている貿易自由化どころではないと思います。

話は変わりますが、山羊はこの焚き火が大好きだったのに、犬は苦手みたいですね。焚き火がはじまると家の中に入ってしまう。肉食動物が火を懼れるというのはほんとうで、炎の消えた焼けぼっくいでもイヤみたいです。

が、落ち葉が燃えつきるころになると、いそいそと出て来てこちらの顔を見るのです。焼き芋、もうそろそろいいんじゃないの?と、目が語っている。おまえ、肉食動物じゃなかったっけ、といいたいところですが、あちち、あちちと焼き芋を取り出して半分こ。

落ち葉で焼いたさつま芋は絶品。犬は土の上を転がしながら冷ますので、あまりおいしそうではないんですけどね。

今週の野菜とレシピ

白菜が入ります。今年は残暑のおかげで種蒔きが大幅に遅れたので、例年より小ぶりで、葉も締まってはいませんが、鍋物が恋しい季節です。まだ早いという好子さんに無理をいって、収穫してもらいました。

ほうれん草と牡蠣のグラタン

寒くなってきたので、ほうれん草は牡蠣といっしょにグラタンにしてみましょうか。ほうれん草はさっと湯がいてバターをからめ、軽く塩、胡椒しておきます。牡蠣はたっぷりの塩で揉んでから、水洗いして汚れを落としてください。耐熱皿にほうれん草を敷き、その上に生牡蠣を並べて、ほうれん草が隠れるぐらいまで生クリームを入れ、チーズをかけてオーブンに入れます。チーズにこんがり焼き色がついたら出来上がり。

ベシャメルソースを使うより簡単で、仕上がりもあっさりしています。食べ盛りの子供がいるご家庭では、ほうれん草の下に塩、胡椒で味つけしたパスタなどを敷いて増量してください。

小松菜のパスタソース

小松菜もほうれん草同様、さっと湯がいてからベーコンといっしょに炒め、生クリームを加えてパスタソースにするとおいしいですよ。味つけは塩、胡椒とオイスターソースを少々。ここのお昼によく作っています。


赤かぶは一夜漬けかサラダがおすすめ。サラダにするときは、スライスしたレモンも加えると美味。葉っぱのきれいなところとかぶをスライスして、塩をするところまでは一夜漬けとおなじ。それにレモンを食べやすい大きさにスライスして加え、オリーブ油をたらすだけでドレッシングは不要。ホタテの貝柱や白身魚の刺身を加えると豪華になります。

京菜椎茸白菜といっしょに鍋に入れてくださいね。今週はじゃが芋が入る予定でしたが、荷遅れのため来週に持ち越されました。申しわけありません。