新米

2010年10月第2週

今週の野菜セット

左から

ようやく稲刈りが終わりました。秋雨前線のおかげで例年より十日も遅くなりましたが、今週は新米がお届けできます。

真夏の酷暑で収穫量が大幅に減りましたが、さいわい台風の影響を受けなかったので、稲が倒れずに済みました。これが倒れてしまうと秋の長雨で稲が発芽して、米がスカスカになってしまうのです。波乱の多い米作りではありましたが、結果はまずまずといったところではないでしょうか。先週の照る照る坊主が効いたと見え、稲刈りも無事に終わりましたしね。

終わりよければすべてよし。なんだかんだと障害はあっても、野菜も米もできるときにはちゃんとできているのですから、ありがたいことです。天の采配というか、見えない手に守られているんだな、と思うとじーんと来ます。雨と風と太陽に感謝。照る照る坊主にも感謝しなくちゃね。

湯河原にお住まいのSさんからいただいた本。奇跡のリンゴで一躍有名になられた木村秋則さんの「リンゴが教えてくれたこと」という本の中に、米のよしあしの見分けかたというのがありました。簡単なテストなので、紹介しておきます。

白米でも玄米でもけっこうですから、炊いた米を大匙に山盛り一杯、仏壇にお供えするぐらいの量ですね。それを紙コップかガラスの容器に入れ、ひたひたよりすこし多めの水を加え、透明なラップをかぶせて日向に放置しておきます。晴天が続きそうなときを選んでやってみてください。

よい米は二・三日すると発酵がはじまって、お酒の香りがしてきます。わるい米はどうなるかというと、発酵の前に腐敗がはじまり、黒っぽいカビが生えてくるそうです。これがあなたの体内で起こっていることです、と書かれていました。

さっそく青山さんの米でやってみましたが、暑い時期だったので二日目には日本酒のような香りになり、念のためそのまま放置しておいたら、一週間後、黒カビのほかに赤やら緑のカビも加わって、カラフルに変身しました。ご飯が体内を通過するのに一週間はかかりませんから、そこまでやる必要はないのですが、抗酸化性の度合いも調べてみたかったので・・・。

予想以上の好成績にうれしくなって、青山さんに冷たいものを差し入れに行きました。毎日のように、田圃の除草で汗だくになっていましたからね。青山さん、差し入れをごくごく飲みながら、そんなテストの結果など「あたりまえだっぺよ」といいながら、顔をほころばせていたものです。

この本には書かれていませんが、リンゴの抗酸化性も簡単にテストできます。ナイフで二等分して放置するだけ。半日ぐらい経ってから切り口を合わせてください。ぴったり元通りになればOK。酸化しやすいリンゴは切り口が黄ばんでくる上、果肉がやせて、元通りに合わせようとしても隙間ができてしまうのです。これはリンゴにかぎらず、カボチャでも茄子でもきゅうりでもおなじです。

もっともリンゴにかぎっていえば、そんなことをしなくても、皮を剥いたらすぐに塩水に浸けなければならないようなのは、酸化しやすい。いいかたを変えれば腐りやすいリンゴです。リンゴがわるいわけではないんですけどね。生産者に恵まれなかった不運なリンゴ。かわいそうなリンゴです。

木村さんのリンゴは扱ってもらえないのですか、という声があるのですが、木村さんが有名になってからは入手が困難になっていて、とてもフルーツセットを賄うだけの量は確保できません。それに加えて、わたしたちはまだ佐相富士雄さんのリンゴよりおいしいと思えるものに出会ったことがないのです。

木村さんが有名になるすこし前、奇跡のリンゴを取り寄せたことがあります。当時、益子GEFでは福島からリンゴを取り寄せていましたが、そのリンゴの質が落ちていました。抗酸化性が落ちると味もわるくなるのです。生産者が大地主で、周囲が市街化するにつれ、農業収入より不動産収入のほうが多くなってきたのが原因でした。

これはまずい、というわけであらゆる伝手を使って、質のいいリンゴを捜していたとき、木村さんのリンゴに出会ったわけです。もちろん、おいしいリンゴでした。が、苦労を重ねていたころのストレスがリンゴに残っていたのでしょうか。佐相さんのリンゴのほうがおおらかで、やさしい味がしたのです。無農薬・無肥料のリンゴを選ぶか、少量の農薬を使っているとはいえ、ストレスのないリンゴを選ぶか。ポリシーを優先すれば前者になるのが当然ですが、わたしたちは敢えて後者を選んだのでした。

木村さんの本が出る、という噂があったのも一因で、農家が有名になると自然と講演に招かれる機会が多くなる。その間、畑はお留守になるわけで、あちこちで「先生」などと呼ばれるようになると、それも弊害になる。農家が作物の品質を維持しようと思ったら、無名であり続けなくてはいけなかったのです。

「リンゴが教えてくれたこと」という本には、教えられることがたくさんあります。自然を前にしたときの謙虚な姿勢が感動的で、外連味のない人柄がかいま見えます。「先生」にしてしまうには惜しい人だ、としみじみ思いました。

今週の野菜とレシピ

稲刈りの疲れが出たようなので、今週いっぱい青山さんは休みます。ほんとはネギもほしかったのですが、たまにはゆっくり森林浴でもしてもらいましょう。ときどき深山に隠らないと息が詰まりそうになる人なんです。

今週は原木栽培の舞茸が入ります。香りを楽しむのでしたら、てんぷらがおすすめ。舞茸ご飯なら1パックあたり、ご飯は2合弱。どうしても3合ほしいというときには、油揚げで増量してください。舞茸は石づきの汚れた部分を落とすと、あとは捨てるところがありません。軽く刷毛で汚れを払って、細かく裂いてから油で炒め、醤油で調味。煎り胡麻といっしょに炊きたてご飯に混ぜてください。

間引き大根はおひたしの要領でさっと湯がいて、胡麻和えにしてみてください。湯がいたものを細かく切って、塩をしてからよく絞り、ちりめんじゃこ、煎り胡麻といっしょにご飯に混ぜてもおいしいですよ。

間引き白菜は煮浸しがおすすめですが、今回は量がすくないので味噌汁かスープで・・・。さっと湯がいて、鰹節と醤油で食べても美味。間引きでもちゃんと白菜の甘みがのっています。

この大根と白菜が大きくなるには、あと3週間ぐらいかかりそうです。待ち遠しいけど、ぐっと我慢。少し前に高原大根が入りましたけど、やっぱり好子さんの大根にはかないませんものね。

京菜ルッコラ、どちらか一方が入りますが、どちらもサラダ向き。リンゴを細かく切って、京菜といっしょにフレンチドレッシング+醤油で食べてみたら美味でした。

先週、この欄で焼き茄子に塩という取り合わせを紹介したところ、大好評でした。あつあつの焼き茄子にオリーブ油をかけて、ぱらぱらと塩をふるだけ。ご飯のおかずにはなりませんが、白ワインなどがあると最高です。