砂漠の野菜たち

2010年9月第1週

今週の野菜セット

左から

今週も残暑が続きそうですが、こうなったらしかたがない、暑いのは我慢しましょう。でも、雨が一滴もないのには、もうお手上げです。

二週間前に三十分程度の夕立があったきり。田圃はそろそろ水を切る時期なのですが、問題は砂漠と化しつつある畑です。秋・冬野菜の種が蒔けない。苗も定植できない。好子さんのところではブロッコリーとカリフラワーの苗を仕立てていましたが、地植えが間に合わず、みんな枯れてしまったそうです。青山さんのニンジンも種を蒔いて一ヶ月ちかくなるのに、発芽できない。雨を待って蒔き直すにも、雨がないんじゃどうしようもないという有様。

冬野菜は種蒔きが遅れると、小さいうちに寒さに直面することになるので、最悪の場合には枯れてしまいます。今週あたり、大根や白菜の種を蒔いておかないと困るのですが、この調子ではそれも危うい。天気予報では毎日のように傘マークがついていますが、雨が降るのは県北の山間ばかり。このあたりは雷鳴が轟くことがあっても、水しぶきすら飛んで来ないんですよ。

半月前に満たされた水瓶もバケツも、今はからっぽ。もったいないと思いながら、水道水をハスや睡蓮、クワイの鉢に運んでいます。こうして水を運んでいると、植物が毎日吸い上げて蒸散させる水の量に驚かされます。せめてその分だけでも、雨にして返してくれるといいんですけどね。

この夏の猛暑で、柑橘類の花が落ちているそうです。愛媛の野口さんに状況をたずねたら、この冬から来春にかけて、柑橘類の収穫量は例年の三割程度に落ちこむだろう、とのことでした。この冬、みかんは高騰することまちがいなし。みかんのないお正月を迎えることにもなりかねません。

のみならず、水不足でみかんの木が枯れはじめているとか。百本中、十二~三本がダメになっているそうです。水の都と呼ばれている西条でそれですからね、このあたりがひどいのもしかたないかもしれません。そう思って庭木を見回すと、どれもてっぺんあたりで葉っぱがうなだれかかっている・・・。今週も雨が一滴もないようなら、枯れる木も出てきそうです。

夏の旱魃はめずらしいものではなくなって、ここ十年ぐらい、梅雨の後には乾季になるという熱帯性の気候が定着した感があります。が、庭木が枯れるほどひどくなったことはありません。日中の気温が三十五度を超えると、かならずといっていいぐらい夕立があったもので、逆に夜は涼しくなったものですが、この夏はすべてが番狂わせ。夕立があろうとなかろうと、夕刻になると冷たい風が流れていたのに、今年はそれも沈黙しています。今はまだ、暑い暑いとぼやきながらも、収穫された夏野菜を箱詰めできるのですが、秋から冬にかけて、果たしてみなさんにお届けできる野菜があるんだろうか。だんだん不安になってくる今日このごろです。

この暑さで犬も夏バテ。どこの犬も食欲が落ちているようで、うちの犬にいたっては散歩にも出たがらなくなりました。熱中症に罹る犬も続出しているとか・・・。それにくらべたら猫は暑さに強いですね。元々が熱帯地方出身だからか、昼間はぐったりしているように見えても、夜にはしっかりご飯を食べるし、いくら暑くてもクーラーの効いたところには入りたがらない。身体が小さいのも、表面積が大きくなる分、夏には好都合なのかもしれません。

そんなわけで、このところ散歩に出るのは日がとっぷりと暮れてから・・・。暗くなると山の中ではイノシシが動きはじめます。危険を避けて、農道を散歩道にしているのですが、昨日、犬について草むらに入ったとたん、ふくらはぎをなにものかにチクリとやられました。アブかと思いましたが、アブにしては針が鋭い。ズキンズキンと傷んできます。目をこらしてあたりを見たら、アシナガバチの巣があったのでした。

先週、この夏のこの暑さで、スズメバチもアシナガバチも姿を見せない、と書きましたが、大型のスズメバチはともかく、アシナガのほうはちゃんと活動していたんです。ただ、例年とは営巣のしかたがちがうだけ。いつも軒下に巣を作っていたのが、今年は地表ちかくに変更していたのです。まるでこの夏、雨がないのを知っていたみたい。というか、ちゃんと知っていたんでしょう。

草むらなんかに営巣すると、人に刈られてしまう危険性があるかわり、姫スズメバチには見つかりにくい。卵や幼虫を食べつくされるということはないわけです。ただ、草刈りをする人間側は用心しなくちゃね。痛い思いをするのもイヤだけど、ひと夏で大きくした巣を全滅させたんじゃ、ゴメンではすみませんものね。

アシナガバチがあんなところにいるんじゃ、今週も雨は期待できそうにないみたい。軒下には、アリ地獄の小さな穴がいっぱいできていて、あんたたち雨が降ったらどうするの、と思っていましたが、それも心配なかったわけです。

アリ地獄が繁盛する夏は人が泣く。農家が苦労する。消費者だって、そのうち野菜の高値に泣くことになる・・・。

アシナガもアリ地獄も、農家の天敵を始末してくれるありがたい虫なのですが、かれらが繁栄しすぎても農業が立ち行かなくなる。このあたりの匙加減ができなくなっているところなど、天候が人を模しているかのようですね。

今週の野菜とレシピ

息も絶え絶えの野菜セット。先週の枝豆も水不足のせいで、実の入りがわるかったようです。申しわけありませんでした。

空芯菜の葉先が傷んでいたというクレームもありましたが、これは野菜のせいではなく、運送会社の問題だったみたいです。クール便は冷蔵庫に入れなければならないのですが、夏場はクール便が増えるため、冷蔵庫に入りきらないことがあり、そんなときどうするかというと、ドライアイスを上に載せるようなのです。そういうものを載せられると、空芯菜やモロヘイアといった葉ものは凍りついてしまいますから、解凍したときにとろけてしまう。それを避けるためには、葉ものをいちばん下に入れるといいのですが、そうすると今度はほかの野菜の重みで潰されかねません。むずかしいところですが、今週は葉ものの上にエアキャップを載せてみますので、それでも問題がありましたらお知らせください。

今週は生落花生が入りました。これは殻をつけたまま、塩茹でしてお召しあがりください。海水ぐらい濃いめの塩水で湯がき、そのまま冷まし、冷蔵庫に入れておくと1週間ぐらい保存できます。ビールのつまみや箸休めに、毎日少しずつどうぞ。

ゴーヤはついに支柱を倒してしまいましたが、それでも実がなり続けているそうです。そんなわけで、もう1週おつきあいください。

茄子といい、ゴーヤといい、これだけ乾燥しきった畑で次から次と実をつける。その生命力には超能力に近いものが感じられます。長葱も青いところは日に灼けてそばかすだらけになっていますが、白いところはみずみずしさを保っています。モロヘイアや空芯菜にいたっては、雑草より強いんじゃないかと思うほど。かれらの力にあやかりたいものです。