暮れの山

2010年12月第3週

今週の野菜セット

左から

ようやく冬らしい、まっとうな寒さになってきましたが、それでも例年にくらべたらあたたかい日が続きました。来週から寒くなる、雨が上がったら一気に寒くなる、明日は真冬日、なんていっているわりには寒くならず、なったところで長続きはしないようです。

農家は野菜を納品するたびに、暑い、暑いを連発。ちょっと動くと汗をかくので、しょっちゅう下着を替えていないと風邪をひくと不満たらたらです。たしかに落ち葉攫えなどしていると汗だくになりますから、こんなときは風邪をひきやすいもの。が、見方を変えれば過ごしやすいわけですから、今のうちに大掃除を済ませておくという手もあります。この週末はガラス拭きを予定しているんですが、どうなりますか。

先週、うちの犬がうり坊を追いかけた話をしましたが、今度は成獣。オトナの、それもどうやらオスのイノシシを追い立ててしまったようです。

山道から突然藪の中に飛び込んだと思ったら、ものすごい地響きがして藪が揺れ、メリメリと木の枝が折れる音が谷底のほうまで続きます。奥まったところでイノシシを追いつめたらしく、犬が激しく吠え立てています。反撃されたらどうするんだ、とこっちは気が気でないのに、しつこく吠え立てる。すると突然、ブホーッという雄叫びが谷中に響き渡りました。威嚇です。これ以上つきまとったら殺すぞ、といわんばかり・・・。

それに気圧されたのか、犬の声は止みましたが、それからの沈黙が不気味でした。待つこと数十分。待っている時間というのは長く感じられるものですから、実際には数分だったのかもしれませんが、ハアハア息を切らしながら犬がもどって来たときには心底ほっとして、腰が抜けそうになりました。

ブヒブヒというイノシシの囁き声は何度か聞いたことがありますが、大迫力の雄叫びはこれがはじめて。樹木の揺れ具合から察するに、かなりの大物だったみたいです。うちの犬は柴犬ぐらいの大きさで、おまけにふだんはとても臆病。小型犬に吠えられてもびびるぐらいなのに、よくそんな大物に立ち向かえたものです。

帰ってきた犬を見ると、首から背中にかけての毛が立っていて、鬣(たてがみ)みたいになっていました。散歩中、出会った人から「甲斐犬ですか」と聞かれることがあるのですが、甲斐犬といったら体は小さいけれど、クマやイノシシを狩る勇猛果敢な猟犬です。もしかしたらそんな血がいくらかは流れていて、ふだんは小心者でも、いざとなると騒ぎ出すのかもしれません。

でも、飼い主のほうは丸腰ですからね。できれば「獲物」などには出会いたくない。狩りは紅葉狩りぐらいにしておいて、のんびり散策を楽しみたいものです。

その紅葉もすっかり散って、山の中は草木染めのカーペットを敷きつめたよう。ところによってはそれが布団のように分厚くなっていて、雨が降ると滑ります。尻餅をついたところで、落ち葉がクッションになってくれるので、それほど痛くはない。でも、急な斜面でも平気で上り下りできる犬を見ていると、四輪駆動というのは強いなあと思います。

わたしたちは二足歩行になったおかげで、両手を自由に使うことができますが、自然の中ではやっぱり弱い。失ったものも大きく、とくに女性にとっては出産がとてつもなく困難になるという弊害も生まれました。そして頭部が大地から遠ざかるにつれ、臭覚が鈍くなり、それと同時に悪臭という観念を作ってしまった。地に落とされたものは臭いものとなり、おぞましいものにされてしまったんですね。

なにがいいたいかというと、じつは落ち葉に隠れていたウンコを踏んでしまい、それが動物のものならよかったのですが、テイッシュもいっしょに落ちていたから気が滅入ってしまったのです。腹立たしさと泣きたい気分半々になりながら、なぜウンコごときでこんなイヤな気分になるのか、われながら不思議でもあったんですね。

これは文明病かもしれない。そう思うと、捨てる気でいたボロ靴も捨てられなくなり、涙を呑んで洗うことになったのでした。これがほかの動物だったら、この臭いからいろんな情報を得て、ウンコの主もわかってしまうんだろうな、などと思いながら・・・。その後、アルコールでそこら中を消毒しながら、この文明病というやつの底の深さを実感したしだいです。

今週の野菜とレシピ

ニンジンとブロッコリーが入る予定でしたが、生育が遅れているようなので来週に持ち越されました。申しわけありません。

先週に続いて自然薯が入りますが、これは保存が利くので、お正月用にとっておくこともできます。寒さに弱いので、新聞紙にくるんだまま、室内に置いてください。食べるときはヒゲ根をガスコンロの火で焼いてから、水洗い。皮をつけたまま摺りおろしてくださいね。

おろした自然薯をひと口ぐらいずつ焼き海苔でくるみ、それをポン酢で食べるのがわが家の正月料理のひとつです。ただし、これは作ったらすぐに食べないとまずくなるのが難点。海苔でくるんでから揚げておくと、時間が経ってもおいしく食べられます。

白菜は前回よりも大きくなっています。甘みも増しておいしくなっているはず。鍋ものには欠かせない白菜ですが、意外と食べきれないものです。せいぜい半分か四分の一もあれば十分。そこで残った白菜の利用法です。

白菜のスープ

白菜

白菜が大きくなりました

ハンバーグを作った翌日が理想的。ハンバーグの残りがなければ豚肉を100グラム前後。生姜ひとかけ、干し椎茸、春雨少々も用意してください。春雨と干し椎茸はお湯でもどし、白菜はざくざく切っておきます。

細切りにした生姜を炒め、香りが立ってきたら白菜を加えて炒めます。白菜がしんなりしてきたら、ひたひたよりすこし多めに水を入れ、椎茸のもどし汁も入れて加熱。残りもののハンバーグをひと口大にして加え、干し椎茸も小さく切って入れます。豚肉を使う場合には、生姜を炒めるとき、いっしょに炒めておいてください。

煮たってきたらアクを取り、塩、胡椒、オイスターソースで調味。食べやすいように包丁を入れた春雨を加え、水溶き片栗粉でとろみをつけ、最後に胡麻油を少量たらして香りをつけます。

白菜の煮びたし

大量消費の極めつけは煮びたしです。昆布と鰹節で濃いめの出しを用意。白菜を大きめに切って鍋底にぎゅうぎゅう詰めにして、出しを入れ、落とし蓋をして煮ます。味つけは酒と塩だけ。白菜のおいしさがいちばんよくわかる調理法がこれ。一度は作ってみてください。


隔週でお送りしている方には、今年最後の野菜セットになります。

この一年もありがとうございました。

新年は1月3日の週から発送を開始します。

来年もどうかよろしくお願いします。